阪大リーブル16
医療技術と器具の社会史 聴診器と顕微鏡をめぐる文化
価格:2,420円 (消費税:220円)
ISBN978-4-87259-301-3 C1336
奥付の初版発行年月:2009年08月 / 発売日:2009年08月中旬
急速に技術革新が進む医療の分野で,19世紀から使用され続けている聴診器と顕微鏡から,器具が生まれた社会文化的な背景,器具が生み出した文化や人々の関係を考える.聴診器はなぜ臨床医のシンボリックな存在となったのか.聴診器によって医療者と患者の関係はどのように変化したのか.顕微鏡がもたらす実験医学のイメージは新しい医学の文化的社会的性質にどのように影響したのか.エピソードと史実から両者の深い関係を探る.
目次
1 プロローグ ― 器具から見る社会
スマート・トイレット/「鉄の肺」と人工呼吸器/「中途半端な技術」と医療経済/意思の職業と技術
2 「不可解な過去」― 技術と社会の奇妙な関係
モノのマイナーな研究/テクノロジーの社会的影響/情報技術と社会の奇妙な関係
3 聴診器が使えない?― 現代医療の落とし穴
医師たちの懸念/ベットサイド診断/衰退の原因/「医師はまだ患者を診察しなければならないだろうか」
4 マホガニーに神託 ― 聴診器と19世紀医学
医療の革命/患者にふれたい・患者からはなれたい/聴診器以前/身分的プロフェッションと医師のディレンマ/新しい医学/ラエネク・パリ学派・病院/間接聴診法と医師たち
5 電気松葉杖なんかいらない ― 聴診器と医療シンボル
聴診器の形/モノーラルVSバイノーラル/電気式・電子式聴診器の行方/ヘルメスの杖と聴診器
6 怪物スープ ― 顕微鏡の社会的イメージ
もうひとつのシンボル/顕微鏡と望遠鏡/王位協会と『ミクログラフィア』/マイクロスコピストたち/怪物のスープ
7 顕微鏡のように見なさい ― 実験室の医学
ドイツと米国/顕微鏡とドイツの大学/「すべては一個の細胞だ」/「顕微鏡と眼」/生体病原説/ロベルト・コッホと顕微鏡写真術/顕微鏡の開発と市場/顕微鏡と臨床
8 エピローグ ― 器具のパラダイス・器具のパラダイム
インストルメンテーション/「客観」データ/器具のパラダイム