中世大越国家の成立と変容
価格:10,450円 (消費税:950円)
ISBN978-4-87259-381-5 C3022
奥付の初版発行年月:2011年02月 / 発売日:2011年02月下旬
「北部ベトナム」と呼ばれる地域が10世紀に中華帝国の
支配から「独立」した.本書は,ベトナム史で「李陳時
代」と呼ばれ,李と陳の二王朝が継起した11−14世紀
の社会経済的・政治的変化を研究対象とする.[主要目
次]一・ 李陳時代の農業社会と土地制度 二・ 金石文
に見る14世紀の農村社会 三・ 10−15世紀の南海交
易と安南国家 四・ 10−15世紀の対外関係と帝国意識
五・ 一家の事業としての李朝 六・ 李朝の地方支配
七・ 一族の事業としての陳朝 八・ 陳朝の地方支配
目次
序 章 対象と問題設定1
第一節 地域と時代
1 北部ベトナム地域
2 出発点:10 世紀の「独立」
3 到達点:15 世紀の「黄金時代」
第二節 史料
1 漢喃文献
(1 )収集・所蔵機関と目録学・文献学 ( 2 )編年体史書 ( 3 )地誌
(4 )詩文 ( 5 )神話伝説 ( 6 )仏教文献 ( 7 )その他の近世文献
2 金石・考古史料
3 外国史料
第三節 研究史
1 ベトナム
(1 )近代的歴史学と出版
(2 )李陳時代に関する研究史
①通史と李陳時代史 ②歴史地理・地方史と人物研究 ③経済と社会
④国家と統治体制 ⑤戦争と外交 ⑥宗教・思想と国家= 民族意識 ⑦文化・芸術
2 フランス東洋学
3 東アジア漢字圏とロシア(旧ソ連)の研究
4 英語圏の学界と東南アジア地域研究
5 日本の学界
第四節 本書の問題設定と方法
【第一部 経済構造と国際環境】
第一部の課題
第一章 李陳時代の農業社会と土地制度に関する論点整理
第一節 土地分類と田租
1 公田と私田、官田と民田
2 田租の復元
第二節 土地の分布・規模と収取形態
1 寄進と経営の規模
2 国家直営田の分布と税役
第三節 人口と人民編成
1 開発と人口の変遷
2 人民編成
まとめ
第二章 金石文に見る14 世紀の農村社会
序 言
第一節 陳朝金石文が伝える寄進情報—内容と記載法—
第二節 寄進主体と規模
1 王侯による大規模な寄進
2 在地有力者層による中小規模の寄進
3 女性による寄進
第三節 金石文から読み取れるもの
1 国家による人民・土地の把握状況
2 中小規模の寄進と寄進者の地位
3 女性の寄進戦略?
まとめ
第三章 10?15 世紀の南海交易と大越= 安南国家
第一節 独立初期の国際交易
第二節 初期大越= 安南国家の交易支配
第三節 交易上の地位低下と内向化?
第四節 黎朝前期の大越= 安南が琉球のライバルだった可能性
1 領土拡大と新しい輸出品
2 対明朝貢貿易の評価
まとめと展望
第四章 10?15 世紀の対外関係と国家意識
序 言
第一節 「北」との関係と「南国」の「歴史」「領域」
1 広がる歴史と神話
2 現実の国土の認識
第二節 「南国」の「南」
1 初期大越= 安南国家の「南進」
2 チャンパー攻撃の意味
第三節 「西」—雲南からラオスへ—
第四節 「ベトナム型華夷秩序」の形成
【 第二部 中央政権と地方支配】
第二部の課題
第五章 一家の事業としての李朝 1
序 言
第一節 系譜の復元
第二節 父系王朝の成立と異姓勢力
第三節 皇帝の家族・親族の役割
1 男性皇族
2 女性皇族
3 皇帝の妻と母
まとめ
第六章 李朝の地方支配
序 言
第一節 軍事行動と地方支配
1 軍事行動の対象地域と政治統合の地域的枠組
2 軍事行動の主体と機能
第二節 地方統治単位の呼称と機能
1 路制に関する諸学説
2 対立を止揚するための仮説
3 上級単位と基礎単位
4 統治拠点としての行宮
第三節 地方統治者の称号と機能
1 州の統治者
2 府の統治者
まとめ 269
第七章 一族の事業としての陳朝
序 言
第一節 帝位継承と婚姻
1 帝位継承
2 婚姻
第二節 宗室男性の役割
1 上皇・皇帝・皇太子
( 1 )上皇制 ( 2 )聖慈宮 ( 3 )皇太子
2 高位高官の独占
( 1 )宗室宰相制 ( 2 )宰相となった人々 ( 3 )制度上の特徴
3 仏教と軍事行動
第三節 宗室女性と皇帝の妻たちの役割
1 皇太后と国母
(1 )称号 ( 2 )活動
2 皇帝の妻 310
3 公主など宗室の女性たち
(1 )称号 ( 2 )「私通」する公主たち
第四節 父系同族集団の確立と異姓官僚の進出
1 父系同族集団 315
2 宗室の衰退と異姓官僚の進出
(1 )宮廷内抗争と宗室の衰退 ( 2 )陳朝の異姓勢力
(3 )官僚層の進出と行遣官 ( 4 )体制変革の動き
第八章 陳朝の地方支配
序 言
第一節 地方統治単位の検討
1 路制の定着
(1 )陳初の記録 ( 2 )『安南志略』
2 陳朝後期の再編
(1 )路の増設と鎮の設置 ( 2 )陳末の改革
3 最高統治単位の位置づけ
(1 )路と府州 ( 2 )路官の意味
4 下級単位の継続と変化
(1 )県と郷 ( 2 )社制
第二節 地方支配と宗室
1 皇帝・上皇の行幸
2 宗室による地方支配
( 1 )「郷第」と田庄 ( 2 )路などの支配
3 重点地域 354
(1 )紅河・ダイ河下流域 ( 2 )紅河デルタ東縁 ( 3 )南方地域
4 文人官僚の進出と宗室の後退
(1 )文人官僚と地方官 ( 2 )異姓勢力の出身地
まとめ
終章 結論と展望
第一節 本書の内容から見た李朝と陳朝
第二節 14 世紀の社会変動と胡季?改革
1 陳朝後期の変動と胡季??改革の評価
2 時代区分の基準をどこに置くか
3 14 世紀の危機
4 小農経済の成長と明のインパクト
第三節 本書の方法と次世代の研究
参考文献
あとがき
索 引
英文要旨