大阪大学総合学術博物館叢書20
徴しの上を鳥が飛ぶ
価格:2,530円 (消費税:230円)
ISBN978-4-87259-530-7 C1370
奥付の初版発行年月:2023年03月 / 発売日:2023年04月上旬
大阪大学大学院文学研究科が主催し、大阪大学総合学術博物館との共催により、2019年度から2021年度の3年にわたって実施された「徴しの上を鳥が飛ぶ−文学研究科におけるアート・プラクシス人材育成プログラム」についての論考と報告を集めた書籍。レクチャーの記録、アートやアーティストとの交流による「インターウィーヴ」的学習の成果を報告するほか、研修成果をもとに受講生が実際に企画立案から運営までを担って実施されたアートイベントを紹介する。
〈「徴しの上を鳥が飛ぶ」概要〉
演劇、音楽、美術など多岐にわたる芸術の事前・事後双方の扱いを学ぶ「インターウィーヴ」的学習を通して、今日のアート・マネジメント人材に求められる、地域社会や共同体の課題に応じて臨機応変に対応する実践的な「アート・プラクシス」能力を人文学的観点に基づいて養う。
永田 靖(ナガタ ヤスシ)
大阪大学大学院人文学研究科教授、総合学術博物館長。専門は演劇学、近現代演劇史。文化庁「大学における文化芸術推進事業」にて社会人アート人材育成事業を推進中。『漂流の演劇―維新派のパースペクティブ』(編著、大阪大学出版会、2020)、『記憶の劇場―大阪大学総合学術博物館の試み』(共編著、大阪大学出版会、2020)、『歌舞伎と革命ロシア』(共編著、森話社)、『ポストモダン文化のパフォーマンス』(共訳、国文社、1989)、『セルゲイ・パラジャーノフ』(共訳、国文社、1998)他多数。
山﨑 達哉(ヤマザキ タツヤ)
大阪大学大学院人文学研究科特任助教。専門は芸能史。対象は神楽や箱まわし、ちんどん屋など。論文「佐陀神能の変化とその要因に関する研究:神事と芸能の二面性」(『待兼山論叢 文化動態論篇』、2016)、共著『待兼山少年―大学と地域をアートでつなぐ《記憶》の実験室』(大阪大学出版会、2016)、編著『記憶の劇場―大阪大学総合学術博物館の試み』(共編著、大阪大学出版会、2020)など。
岡田 裕成(オカダ ヒロシゲ)
大阪大学大学院人文学研究科教授。専門は美術史学。初期近代スペインとその帝国の交通圏の美術を研究。著書に、『ラテンアメリカ 越境する美術』(筑摩書房、2014)、『帝国スペイン 交通する美術』(編著、三元社、2022)、Painting in Latin America 1550–1820: From Conquest to Independence(共
著、Yale University Press、2015)など。論文「《レパント戦闘図屏風》:主題同定と制作環境の再検討」(香雪美術館研究紀要)により國華賞。
高安 啓介(タカヤス ケイスケ)
1971年生まれ。大阪大学大学院人文学研究科教授。大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。愛媛大学法文学部准教授を経て現職。近代デザインの歴史、現代デザインの思想、視覚伝達理論など。著書『近代デザインの美学』(みすず書房、2015)。
伊東 信宏(イトウ ノブヒロ)
1960年京都市生まれ。大阪大学文学部、同大学院を経て、
ハンガリー、リスト音楽大学などに留学。大阪教育大学助教授などを経て、現在大阪大学大学院人文学研究科教授(音楽学)、中之島芸術センター長。著書に『バルトーク』(中公新書、1997)、『中東欧音楽の回路:ロマ・クレズマー・20世紀の前衛』(岩波書店、2009、サントリー学芸賞)、『東欧音楽夜話』(音楽之友社、2021)など。訳書『月下の犯罪』(講談社選書メチエ、2019)など。東欧演歌研究会主宰。
橋爪 節也(ハシヅメ セツヤ)
東京藝術大学美術学部助手から大阪市立近代美術館建設準備室主任学芸員を経て大阪大学総合学術博物館・大学院人文学研究科教授(兼任)。前総合学術博物館長、現共創機構社学共創本部教授。専門は日本・東洋美術史。著書に『橋爪節也の大阪百景』(創元社、2020)、監修に『木村蒹葭堂全集』(藝華書院)、『はたらく浮世絵 大日本物産図会』(青幻舎、2019)など。
伊藤 謙(イトウ ケン)
大阪大学総合学術博物館(略称:MOU)講師。京都大学薬学部卒・同研究科単位取得退学。京都大学博士(薬学)。MOU研究支援推進員、京都薬科大学生薬学分野助教、MOU特任講師(常勤)を経て2021年から現職。マチカネワニ化石をはじめとする様々な歴史的学術資料研究を手がける。専門は生薬学、本草博物学。2016年から大学における文化芸術推進事業に参加し、分野横断・文理融合領域への探求を進めてきた。
古後 奈緒子(コゴ ナオコ)
大阪大学大学院人文学研究科芸術学専攻アート・メディア論コース准教授。舞踊史、舞踊理論研究。舞踊史と現代の舞台をめぐる諸問題の間を行き来している。論文「エレクトラとダイナモの結婚―ウィーン国際電気博覧会における電気劇場のバレエ」(『近現代演劇研究』10号2021年)。本稿関連評として「環境と身体をつなぐ孔『 ブラックホールズ』」(なら歴史芸術文化村ウェブサイト、2023)を執筆。
鈴木 聖子(スズキ セイコ)
大阪大学大学院人文学研究科アート・メディア論コース助教。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学、パリ大学東アジア言語文化学部・助教、大阪大学大学院文学研究科音楽学研究室・助教を経て、現職。博士(文学)。専門は近現代日本音楽史・文化資源学。著書に『〈雅楽〉の誕生』(春秋社、2019)。関連論文に「放浪のサウンド・アーティスト 芸能者としての鈴木昭男」『Arts & Media』(2022)、「「古代」の音」(細川周平編著)『音と耳から考える』(アルテスパブリッシング、2021)など。
渡辺 浩司(ワタナベ コウジ)
大阪大学大学院人文学研究科教授。専門は文芸学、西洋古典学。共著『世界の名前』(岩波新書、2016)、『若者の未来を開く―教養と教育』(角川学芸出版、2011)、『近代精神と古典解釈―伝統の崩壊と再構築』(財団法人国際高等研究所、2012)、共訳『ディオニュシオス/デメトリオス 修辞学論集』(京都大学学術出版会、2004)など。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに(永田靖)
1 アートとの対話と共有
シンポジウム「アート、記憶、政治─あいちトリエンナーレから1年に考える」(岡田裕成)
工芸の魅力を伝える(高安啓介)
演奏会のバックステージから(伊東信宏)
2 アート&エコロジー
“なにわ舟遊ODYSSEY”で目指したもの─エコ・ミュージアムを探るアートの旅(橋爪節也)
公衆電話と独り言の演劇(永田靖)
神山町のアートとフード(山﨑達哉)
アート・リング─アートのエコシステムへのいざない(伊藤謙)
3 場所と移動
ジオ・パソロジーを超えて(永田靖)
場所/空間と居場所の多様性(古後奈緒子)
「陶塤」(弥生時代の土笛)の制作・演奏・パフォーマンス(鈴木聖子)
日常に現れる芸ちんどん屋と神楽(山﨑達哉)
4 アート・マネジメントの未来
「アート・マネジメント基礎講座」について(渡辺浩司)
アーツ・プラクシスとしての受講生企画の実践(山﨑達哉)
能勢人形浄瑠璃鹿角座「まちかね ta 公演at 大阪大学」(山﨑達哉)
5 記録
付録「徴しの上を鳥が飛ぶ」3年間の記録
あとがき(山﨑達哉)