〈しんどい学校〉の教員文化 社会的マイノリティの子どもと向き合う教員の仕事・アイデンティティ・キャリア
価格:4,840円 (消費税:440円)
ISBN978-4-87259-691-5 C3037
奥付の初版発行年月:2019年09月 / 発売日:2019年10月下旬
社会的マイノリティが在籍する学校の教員たちがどのように子どもや保護者、また教職という職務と向き合っているのかを社会学的なデータ分析から明らかにする。教員が勤務校で経験する特徴的な職業的困難や職業的アイデンティティ、自身の成長、キャリア形成の過程を描くことで、「子どもの社会的包摂」にむけた教員の専門性の内実を示しつつ、厳しい労働環境における教員たちへの支援の方策を提示する。
中村 瑛仁(ナカムラ アキヒト)
1985 年、福井県生まれ
大阪大学大学院人間科学研究科講師
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学、博士
(人間科学)
専攻は教育社会学、主な業績として「教員集団内における教職アイ
デンティティの確保戦略」(教育社会学研究第96 集、第7 回日本教
育社会学会奨励賞・論文の部受賞)、「学校環境の違いによって教師
役割はいかに異なるのか?」(教師学研究第22 巻1 号)など
目次
序章 〈しんどい学校〉の教員たち
1.はじめに―〈しんどい学校〉とは何か
2.何が問題か―〈しんどい学校〉と「水平キャリア」「適応キャリア」
3.なぜ問題か― 〈しんどい学校〉の教員に着目する意義
4.本書の構成
第1部 本書の分析射程―先行研究の検討と調査概要
第1章 先行研究の検討と分析課題の設定
1.学校環境―教員の仕事に関する研究
2.教員文化
3.教員の社会化
4.教員のキャリア問題
5.本書の研究課題
第2章 調査とデータの概要
1.調査の概要と調査対象
2.調査の経緯と対象教員の選定
3.調査と分析の方法―インタビュー調査
第2部 〈しんどい学校〉の教員の適応キャリア
第3章 〈しんどい学校〉の学校環境
1.はじめに
2.データの概要
3.学級規律の問題―学校の荒れを統制する役割
4.学習指導の問題―学習意欲の喚起とケアの役割
5.保護者との関係課題―保護者との関係を構築する役割
6.まとめ
第4章 〈しんどい学校〉の教員たちの教職アイデンティティ
1.はじめに
2.データの概要
3.働きがい―子どもや保護者との関係・変化の実感・同僚性
4.パースペクティブ―家庭背景を把握する・包摂・つながり
5.同僚性―対向的協働文化・相互サポート・連携
6.まとめ
第5章 〈しんどい学校〉の教員への社会化過程
1.はじめに―対象校での水平キャリア問題
2.データの概要
3.教員のキャリア類型
4.〈しんどい学校〉への適応過程
5.異動を選択する教員たち
6.まとめ
第3部 教員世界の変化と教員のキャリア問題
第6章 教員集団の変容と教員のキャリア問題―A中の事例から
1.はじめに
2.分析の視点
3.データの概要
4.A中の歴史と〈つながる教員〉
5.A中の変化と〈しつける教員〉
6.教員集団の成り立ちと集団内の葛藤
7.アイデンティティ・ワーク
8.まとめ
第7章 教育改革と教員のキャリア問題―大阪市の新自由主義的教育改革の事例から
1.はじめに
2.データの概要
3.大阪市の教員を取り巻く状況―施策の特徴と〈競う教員〉
4.改革の中の教員―その困難の内実
5.アイデンティティ・ワーク
6.まとめ
終章 〈しんどい学校〉の教員文化から見えてきたこと
1.見出された知見
2.考察―〈しんどい学校〉の教員の適応キャリアとキャリア問題
3.教員研究への示唆―学術的インプリケーション
4.〈しんどい学校〉をエンパワーするために―実践的インプリケーション
引用文献
初出一覧
あとがき
索引