岸田理生の劇世界 アングラから国境を越える演劇へ
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-87259-725-7 C3074
奥付の初版発行年月:2021年01月 / 発売日:2021年01月上旬
演劇実験室天井桟敷を駆け抜け、“国境を越える演劇シリーズ”へと羽ばたいた、劇作家・岸田理生の軌跡を追う。直筆ノート、日記、手書き台本など貴重な一次資料にあたりながら、その劇世界の変遷を分析した本邦初の本格的研究書!
現代日本演劇において最も重要な劇作家の一人であるにもかかわらず、これまでまとまった研究書の存在しなかった岸田理生(1946~2003)の劇世界に迫った書。戯曲以外にも、詩や小説、翻訳、映画、舞台芸術などで多彩な才能を発揮した彼女の姿を追いながら、先行研究で取り上げられていない70年代や90年代、2000年代の作品にも光を当て、検討を行った。未刊行の初期戯曲『洪水伝説』を収録。
岡田蕗子(オカダフキコ)
1986年、奈良生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。同大学大学院文学研究科演劇学研究室助教を経て現在同大学招へい研究員。京都芸術大学、兵庫県立宝塚北高等学校演劇科非常勤講師。専門は演劇学、近現代日本演劇史。主に劇作家岸田理生の作品研究を行っている。表現に作家が込めた問題意識を再考し、個々の劇作家が見つめた歴史の切片を現代に積み直してみることを大切な営みと考えている。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 劇作家「岸田理生」を知るために
第一節 先行研究紹介
第二節 岸田理生の歩みと、本書の分析対象に関して
第三節 七〇年代のカウンター・カルチャーとの関係
第一章 未刊行初期作品について─寺山理論の応用と独自の劇世界構築の試み
第一節 劇構造の応用─『夢に見られた男』(一九七七)と『洪水伝説』(一九七七)を中心に
第二節 身体論への関心─『解体新書』(一九七八)と学習ノート「言語」を中心に
第三節 文体の模索─ワークショップ戯曲『凧』(一九七九)と学習ノート「鏡花」を中心に
第二章 近代日本へのまなざし
第一節 「個」であることの肯定─二・二六事件を描く三作品、戯曲『臘月記』(一九七九)、映画脚本『悪徳の栄え』(一九八八)、テレビドラマ脚本『密愛─2・26に散った恋─』(一九九一)を巡って
第二節 『糸地獄』のクロノトポス─初演・オーストラリア公演を中心に
第三章 異なる「言葉」を求めて
第一節 俳優の身体性へのまなざし─『四重奏─カルテット』(一九九三)の演出に関して
第二節 『リア』(一九九七)における「母」を巡って
第三節『ディスディモーナ』(二〇〇〇)の諸問題─戯曲と演出の対照研究を通じて
第四節 「分有」の概念─『ソラ ハヌル ランギット』(二〇〇一)の演出に関して
第五節 手話という視点─車座の実践と岸田理生の戯曲を通して
おわりに
註
主要参考文献・資料一覧
未刊行戯曲『洪水伝説』
岸田理生年譜
岸田理生が関わった演劇作品リスト
謝辞
初出一覧
索引