写真家 星野道夫が問い続けた「人間と自然の関わり」
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-87259-728-8 C3070
奥付の初版発行年月:2021年03月 / 発売日:2021年04月上旬
「撮られたその一枚の裏側には、必ずやそれを撮った者がシャッターを切るその瞬間に抱いた心の揺らぎがあると私は考える」― 長く抱いた写真への疑問を、出会ってからは切り離すことなく心のなかにあり続けた、写真家・星野道夫氏が残した写真と「ことば」の数々に向けて追究した、若手研究者が成し遂げた新たな試み。
東松照明氏、畠山直哉氏も対象に、それぞれの写真家が長い年月をかけて伝えようとしたことを、「写真実践」という新たな作品分析方法を用いて見いだしていく。
吉成哲平(ヨシナリテッペイ)
1994年生まれ。大阪大学人間科学研究科博士前期課程。専門領域は、写真の実践研究、生活環境論、アラスカ先住民研究、人間と自然の共生。
2018年に大阪大学人間科学部卒業(写真HP「勿忘草」https://forget-me-not.myportfolio.com/)
三好恵真子(ミヨシエマコ)
1965年生まれ。大阪大学人間科学研究科教授。
専門領域は生活環境論、実践志向型地域研究、人間と自然の共生。
主要著作に、『現代中国社会変動與東亜新格局第二輯、第一輯』(共著、社会科学文献出版社、2020、2012)、『リン事典』(共著、朝倉書店、2017)、『バイオサイエンス時代から考える人間の未来』(共著、勁草書房、2015)、『共進化する現代中国研究―地域研究の新たなプラットフォーム』(共編著、大阪大学出版会、2012)、『グローバル人間学の世界』(共著、大阪大学出版会、2011)などがある。
目次
刊行に寄せて「語り継がれていくこと」― 星野直子
序 章 星野道夫との出会い、そしてアラスカへ
第1節 私と星野作品の間に流れてきた時間
第2節 長く想い続けたアラスカへ
第3節 本書の目的
第4節 本書の構成について
第Ⅰ部 新たな方法論としての「写真実践」
第1章 写真を撮り続ける中で重層されゆく思索
第1節 写真実践とは何か
第2節 類似する先行研究との相違
第2章 風景との出会いの中で揺れ動く写真家たちの心のひだを見つめて
第1節 写真実践をどう捉えていくか
第2節 根源的な問いとともに出会いを待ち望む―星野道夫
第3節 断絶を越え、一人の人間として向き合い続けた「戦争の影」―東松照明
第4節 予期しえない風景から生まれてゆく無数の問い―畠山直哉
第3章 写真実践を重層させることにより浮かび上がる共通項
第1節 人間の一生を越えて続いてきた時間、続いていく時間
第2節 写真家たちが見つめる生と死
第3節 境界を越え、つながりを見つけてゆく横断的思索
第4節 写真家たちの未来へのまなざし
第Ⅱ部 星野がアラスカで見出してゆく内実を「写真実践」から読み解く
第4章 見過ごされてきた星野道夫の写真実践
第1節 従来の「星野道夫論」を越える意義
第5章 分断され論じられ続けてきたアラスカの人間と自然
第1節 アラスカ先住民と自然との関わり、その精神世界
第2節 アラスカ先住民を周縁化してきた幾重ものまなざし
第3節 今も人間と結ばれているアラスカの自然
第6章 「長い旅の途上」で星野道夫が見出したコスモロジー
第1節 分析対象作品およびその方法について
第2節 旅し、住まう中で考え続けられた「人間と自然の関わり」
第3節 「無窮の彼方への旅」から捉え直される諸存在
第4節 星野道夫が辿り着いたコスモスとその時空
第7章 星野道夫のアニミズム論への展望と「内なる自然」
第1節 先見的なアニミズム論との共通項
第2節 領域を越えつながってゆく思索と志
第3節 時空を越え暮らしへと結ばれゆく写真家たちの実践
終 章 再びのアラスカにて―そして写真実践は続く
巻末表4-1 これまでに発表された星野作品
巻末表6-1 星野道夫全エッセイ
写真出典一覧
参考文献
あとがき
監修者のことば―三好恵真子
索引/執筆者紹介/巻末カラー写真