伝統社会の司法利用 東西比較の可能性
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-87259-793-6 C3032
奥付の初版発行年月:2024年02月 / 発売日:2024年03月中旬
「司法利用(Justiznutzung; Use of Justice)」とはドイツの近世史家M.ディンゲスが提唱した概念で、住民が裁判に限らずさまざまな公的紛争解決手段を選択し利用する行動に着目した作業概念である。「近代的権利意識」を中心基準としない分析を可能にするこの概念をもとに、東西の伝統社会における多様な公的紛争解決の実態とその背景を比較する。
松本尚子(マツモト ナオコ)
一橋大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学,法学博士(フランクフルト大学),現在,上智大学法学部教授(西洋法制史)
主な業績:『ホイマン「ドイツ・ポリツァイ法事始」と近世末期ドイツの諸国家学』(有斐閣,2016年),『戦時体制と法学者 1931~1952』(小野博司・出口雄一との共編著:国際書院,2016年),『法を使う:紛争文化』(編著:国際書院,2019年)
小林 繁子(コバヤシ シゲコ)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了.博士(学術).現在,新潟大学教育学部准
教授(ドイツ近世史)
主な業績:『近世ドイツの魔女裁判:民衆世界と支配権力』(ミネルヴァ書房,2015 年),「魔女は例外犯罪か:近世ドイツにおける犯罪と拷問」『思想』1125 号(岩波書店,2017年),「魔女迫害と「神罰」」踊共二編著『記憶と忘却のドイツ宗教改革』(ミネルヴァ書房,2017 年)
高村 学人(タカムラ ガクト)
早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程中退.博士(法学).現在,立命館大学政策科学部教授(法社会学)
主な業績:『入会林野と所有者不明土地問題—両者の俊別と現代の入会権論』(古積健三郎・山下詠子との共編著:岩波書店,2023 年)
陳 宛妤(ワン ユチェン)
京都大学大学院法学研究科博士後期課程修了.博士(法学).現在,台湾・国立清華大学科技法律研究所(大学院)副教授(台湾法律史,民法).
主な業績:「探尋台灣財產法秩序的變遷—台灣財產法史研究的現狀與課題」『中研院法學期刊』2019特刊(2019年10月)陳宛妤・王泰升「第六章日治初期資本主義財產法制的確立」王泰升主編『台灣史論叢法律篇多元法律在地匯合』(臺大出版センタ―,2019年)
マルティン・ディンゲス(マルティン ディンゲス)
文学博士.ロベルト・ボッシュ財団医学史研究所元副所長;マンハイム大学員外教授(近代史).
Männlichkeiten in der Frühmoderne — Körper, Gesundheit und Krankheit (1500‒1850). Stand der Forschung und Einleitung[近世における複数の男性性:身体,健康そして疾病(1500‒1850)研究動向および序章]。in: Dinges / Pfütsch (Hg.): Männlichkeiten in der Frühmoderne:Körper, Gesundheit und Krankheit (1500‒1850), Franz Steiner 2020; Bettine von Arnim und die Gesundheit. Medizin, Krankheit und Familie im 19. Jahrhundert[ベッティーナ・フォン・アルニムと健康:19 世紀における医療,疾病および家族],Franz Steiner 2018.
寺田 浩明(テラダ ヒロアキ)
東京大学法学部卒業.京都大学名誉教授.現在,公益財団法人東洋文庫研究員.
主な業績:『权利与冤抑:寺田浩明中国法史詑集』(清华大学出版社,2012年),『中国法制史』(東京大学出版会,2018
年.中国語訳:『清代传统法秩序』广西师范大学出版社,2023年)
中谷 惣(ナカヤ ソウ)
大阪市立大学文学研究科後期博士課程修了.博士(文学).現在,大阪大学大院人文学研究科准教授(イタリア中世史)
主な業績:『訴える人びとーイタリア中世都市の司法と政治』(名古屋大学出版会,2016年)『イタリア史のフロンティア』(共著:昭和堂,2022 年),『はじめて学ぶイタリアの歴史と文化』(共著:ミネルヴァ書房,2016 年)
林 真貴子(ハヤシ マキコ)
大阪大学大学院法学研究科博士後期課程中退,博士(法学).PhD(ロンドン大学).現在,近畿大学法学部教授(日本法制史).
主な業績:『近代日本における勧解・調停—紛争解決手続の歴史と機能』(大阪大学出版会,2022 年),「近代日本における無資格者による法廷代理とその終焉」(三阪佳弘編著『「前段の司法」とその担い手をめぐる比較法史研究』大阪大学出版会,2019 年).
カール・ヘルター(Karl Härter)(カール ヘルター)
文学博士.法史家.元マックス・プランク法史法理論研究所主任研究員.ダルムシュタット大学員外教授(近現代史).
Policey und Strafjustiz in Kurmainz. Gesetzgebung, Normdurchsetzung und Sozialkontrolle im frühneuzeitlichen Territorialstaat[選帝侯領マインツにおけるポリツァイと刑事司法:近世領邦国家における規範の貫徹と社会統制],Klostermann 2005; Strafrechts- und Kriminalitätsgeschichte der Frühen Neuzeit[近世における刑事法史と犯罪史],De Gruyter Oldenbourg 2018; mit M. Stolleis, Repertorium der Policeyordnungen der Frühen Neuzeit[近世ポリツァイ令目録 全12巻(M. シュトライスとの共編著)〕,12 Bde., Klostermann 1996‒2017.
前田 星(マエダ ホシ)
北海道大学大学院法学研究科博士後期課程修了.博士(法学).現在,広島修道大学法学部法律学科助教(西洋法制史).
主な業績:「魔女裁判と学識法曹:ヴェストファーレン公領における魔女裁判実務」『法制史研究』第70号,2021年,41-76頁ウィンストン・ブラック(大貫俊夫監訳)『中世ヨーロッパ:ファクトとフィクション』(平凡社,2021 年)(第10章「中世の人々は魔女を信じ,火あぶりにした」を担当)
スザンネ・レプシウス(Susanne Lepsius)(スザンネ レプシウス)
修士(シカゴ大学),法学博士(フランクフルト大学),ミュンヘン大学教授(ドイツ法史・西洋法史・民法).
Von Zweifeln zur Überzeugung. Der Zeugenbeweis im gelehrten Recht, ausgehend von der Abhandlung des Bartolus von Sassoferrato[疑いから確信へ:普通法における証言をバルトルスの著作から見る],Klostermann 2003; Konfliktlösung im Gemeinen Prozess[普通法訴訟における紛争解決],in: Mayenburg (Hg.), Handbuch der Konfliktlösung in Europa, Bd.2, Springer 2021; Susanne Lepsius (Hg.)
目次
はじめに
序章 伝統社会の司法利用―利用者行動の実証的分析による東西比較の可能性
第I部 刑事事件の司法利用
第1章 イタリア中世都
市における公的司法の利用と裁判外の正義―紛争当事者,地区代表,執政府の平和の試み
第2章 請願と交渉―16・17世紀の魔女裁判をめぐるinfrajustice
第3章 近世ヘッセンの下級刑事裁判権における紛争,逸脱行為と司法利用
第II部 民事事件の司法利用
第4章 債権回収から高利貸し告発へ―キリスト教社会の信用ネットワークと司法利用
第5章 帝国最高法院における魔女―名誉棄損訴訟の利用可能性の考察
第6章 植民地台湾における土地紛争の司法利用
第7章 明治前期の勧解・裁判における当事者の役割―「願」と「請」の意味するもの
第III部 司法利用から見た比較研究の可能性と課題
第8章 概念発案者からの論点提示
第9章 法社会学からみた司法利用研究
第10章 司法利用とインフラジャスティス―比較研究の可能性と課題
第11章 ヨーロッパ近世(1500-1800年)の司法利用と医療利用―類似点,相違点,展望
おわりに