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「不信仰の同志」の政治思想スピノザとフロイト

スピノザとフロイト 「不信仰の同志」の政治思想

A5判 626ページ 上製
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-87354-750-3 C3010
奥付の初版発行年月:2022年03月 / 発売日:2022年03月下旬

内容紹介

 本書は、前著『存在・感情・政治-スピノザへの政治心理学的接近-』(関西大学出版部,2013年)の続編で、前著でのスピノザ哲学解釈の成果を適用して、主にハイネ、フロイト、ネグリ、シュトラウスという時代も思想も異なる4人の思想家達(2つの補論においてはゲーテとドゥルーズも対象としている)がスピノザから受けた影響及び、彼らがスピノザ哲学をどのように解釈したかという問題を批判的に分析・研究している。
 本書の構成は以下の通りである。

第1部 フロイトとスピノザ(ハイネとゲーテのスピノザ解釈研究も含む)
第2部 スピノザと現代の政治思想(ネグリ、国際政治学、ドゥルーズのスピノザ解釈研究も含む)
第3部 レオ・シュトラウスのスピノザ解釈の批判的検討─『スピノザの宗教批判』(1930年)第9章「国家と宗教の社会的機能」の注釈的研究

 第1部では、フロイトがスピノザ哲学から受けた影響と両者の思想内容じたいの比較研究(コナトゥスとリビドー、無意識、決定論)を行っている。そこではあまり知られていないフロイトのスピノザ書簡、つまりフロイトが10代の頃に親友に書いた書簡や後年家族へ宛てた書簡に含まれるスピノザへの言及も含めて、フロイトの8通のスピノザ書簡と2著作におけるスピノザ言及を詳細に分析している。なお第1部で本書全体の半分の分量(310頁)。
 第2部では、現代の政治思想とスピノザの関係について論じている。ネグリ(=ハート)がスピノザ哲学から大きな影響を受けていることはよく知られている。この第2部では、ネグリがスピノザ哲学のどこから影響を受けたのかという問題と、彼が強引な独自の解釈を行ってしまっている問題を共に考究している。またこの第2部では、現代の「現実主義国際政治学」の理論家達が、実はスピノザから大きな影響を受けていたという研究やドゥルーズのスピノザ解釈についての予備的研究も併せて行っている。
 第3部では、レオ・シュトラウスの処女作『スピノザの宗教批判』(1930年)の第9章「国家と宗教の社会的機能」を注釈的に研究している。シュトラウスもスピノザから大きな影響を受けたことが広く知られているが、彼のスピノザ論として最も纏まった内容を成している—というよりも彼の唯一のスピノザ政治哲学論と言っていい―この第9章を、スピノザ研究の立場から厳密かつ詳細に分析・研究するということがこれまでに行われなかった。シュトラウスのような独特の著述スタイルとそれと連動した思想を採る思想家の場合、<外>からその思想を見て論じるのではなく、そのテクストを一言一句揺るがせにせず、批判的視点から丁寧に注釈(コメンタール)することによってしか、そのスピノザ解釈の真偽も、そこに見え隠れする思想家自身の真意も見えてこないという観点から、まずシュトラウスのテクストの拙訳を独立引用として掲げ、続いてその引用内容に対する私の注釈(コメンタール)を行うという作業を繰り返し行っている。

第1部 フロイトとスピノザ
第1章 フロイトの8通のスピノザ書簡の分析
第2章 フロイトのレオナルド・ダ・ヴィンチ論におけるスピノザについて
第3章 ハイネのスピノザ主義とフロイト
第3章補論 ゲーテのスピノザ観─『詩と真実』第14章と第16章を中心に
第4章 スピノザとフロイトの思想内容の比較研究

第2部 スピノザと現代の政治思想
第5章 帝国とナショナリズム─ネグリ=ハートの『マルチチュード』とスピノザ
第6章 貧と愛のリアリズム─ネグリ=ハートの『コモンウェルス』とスピノザ
第7章 スピノザと現実主義国際政治学
第8章 スピノザにおける媒介の拒絶としての革命性と救済
第2部補論  ドゥルーズのスピノザ解釈における「出会いの倫理」について

第3部 レオ・シュトラウスのスピノザ解釈の批判的検討─『スピノザの宗教批判』(1930年)第9章「国家と宗教の社会的機能」の注釈的研究
第9章  スピノザ『政治論』の現実主義の特殊性
第10章  スピノザとホッブズの政治哲学における国家成立の問題とその哲学的基礎について
第11章 スピノザ政治哲学におけるマルチチュードと賢者の間の深淵について

著者プロフィール

河村 厚(カワムラ コウ)

河村 厚(かわむら・こう)
1968年 熊本県生まれ
1991年 関西大学法学部政治学科卒業
1994年 大阪大学文学部哲学科卒業
1999年 大阪大学大学院文学研究科哲学・哲学史専攻博士後期課程単位修得退学
(1996年から2002年まで日本学術振興会特別研究員DC 1,PD)
1999年から2006年 関西大学法学部他非常勤講師
2006年4月から2009年3月 大阪産業大学人間環境学部准教授
2009年4月から関西大学法学部准教授(2013年4月より同教授)
 博士(文学)大阪大学

【著訳書】
『グローバル世界と倫理』〔共著〕(ナカニシヤ出版、2008年)
『西洋哲学史入門 ─6つの主題─』〔共著〕(梓出版社、2006年)
レオ・シュトラウス『リベラリズム─古代と近代─』〔共訳〕(ナカニシヤ出版、
2006年)
『存在・感情・政治 ─スピノザへの政治心理学的接近─』〔単著〕(関西大学出
版部、2013年)など

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序文
第1部 フロイトとスピノザ
 第1章 フロイトの8通のスピノザ書簡の分析
 第2章 フロイトのレオナルド・ダ・ヴィンチ論におけるスピノザについて
 第3章 ハイネのスピノザ主義とフロイト
 第3章補論 ゲーテのスピノザ観―『詩と真実』第14章と第16章を中心に
 第4章 スピノザとフロイトの思想内容の比較研究

第2部 スピノザと現代の政治思想
 第5章 帝国とナショナリズム―ネグリ=ハートの『マルチチュード』とスピノザ
 第6章 貧と愛のリアリズム─ネグリ=ハートの『コモンウェルス』とスピノザ
 第7章 スピノザと現実主義(リアリズム)国際政治学
 第8章 スピノザにおける「媒介」の拒絶としての革命性と救済
 第2部補論 ドゥルーズのスピノザ解釈における「出会いの倫理」について

第3部 レオ・シュトラウスのスピノザ解釈の批判的検討―『スピノザの宗教批判』(1930年)第9章「国家と宗教の社会的機能」の注釈的研究
 第9章 スピノザ『政治論』の現実主義(リアリズム)の特殊性
 第10章 スピノザとホッブズの政治哲学における国家成立の問題とその哲学的基礎について
 第11章 スピノザ政治哲学における大衆(マルチチュード)と賢者の間の深淵について

あとがき/文献表/人名索引


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