モノ探し行動の心理学
価格:1,540円 (消費税:140円)
ISBN978-4-87354-791-6 C3011
奥付の初版発行年月:2025年01月 / 発売日:2025年01月下旬
本書は7章で構成されている。各章の概要を述べて各位の参考に供したい。
[序章:「さがしもの(探し物)」と「モノ探し行動」] 「さがしもの」という言葉には「探す」行為とその対象物という二重の意味があるが「探す行為」に焦点を当てるために「モノ探し行動」という用語を使う。この行動の一部分を警視庁や内閣府の調査資料で把握した。
[第1章:モノ探しの具体的行為]インターネットを検索し“探し物の具体的方法を列挙している10サイト”から69項目を収集し、そのうちの「行為の実施・遂行」に関する51項目を①失くした物を発見できそうな場所(=探索地点)に接近する行為、②探索地点内での所作、③探索を終える行為、に3分類し、①で「接近方略モデル」、②で「探索地点内行為モデル」を作成した。さらに、モノ探しの全体的特徴は「探索地点(Space)が広い~狭い」と「探索時間(Time)が長い~短い」という2次元で表されるとして、組み合わせた「ST2次元空間モデル」を提示した。また、モノ探しの規模はST2次元空間のサイズで把握されると考え、その大から小への連続的な積み重ねで出来る4角錐を「STピラミッド型モデル」と呼んだ。
[第2章:モノ探しの呪術的方法]インターネットで「探し物を見つける方法」にある30サイトから41種類の「占い」と「まじない」の手法を収集した。それらの具体的所作を、「言葉の使用×道具・用具の使用」の2次元分類で見ると「道具・用具を使わない」手法では「言葉を使う」ものが多いことが分かった。
[第3章:進行過程としてみるモノ探し行動] 第1章をふまえて二つの視点から論述した:(A)「探し物の意欲の喚起・保持」に関する18項目を加えた69項目の具体的行為を4段階(問題認識⇒開始⇒探索⇒終了)のなかに位置づけた。(B)モノ探しの進行とともに「探索区域の縮小」と「探索時間の短縮」が同時に進むのでSTピラミッドの歪み(=傾き)が生じる。第3視点として(C)問題解決過程と捉えその4段階(問題認識⇒探索意思決定⇒探索⇒終了)に各行為を位置づけ、行為構成の違いによるモノ探しの4パタン(慎重型、簡略型、試行錯誤型、衝動型)を仮設した。さらに以上の各章での考察からモノ探し行動を俯瞰する“暫定モデル”を提案した。
[第4章:モノ探しにおける状況要因]「状況」概念と「状況要因」の構成内容を考察した。また、モノ探し行動の外部要因である「生活状況」と内部要因である「探索状況」の諸側面を検討し、両者の関連が“探し手の認知”により成立することを述べた。
[第5章:モノ探し行動の「効率」]コスト・パフォーマンスの枠組みで考察するとき、両要素はともに多様で異質的であるため、共通尺度を構成する心理学的視点の必要性を強調した。
[終章:心理学的課題としてのモノ探し行動]モノ探し行動の全体像を描く“包括的モデル”を提示した。さらに著者自身の消費者行動研究の経験をふまえ、モノ探しを含む日常的生活行動の機能分析を試み、この領域での研究的関心の高まりへの期待を述べた。
佐々木 土師二(ササキ トシジ)
履歴
1936年 京都府生まれ
1967年 関西大学社会学部専任講師,同学部助教授を経て
1977年 関西大学社会学部教授,2005年 定年退職
2005年 関西大学名誉教授
1985年 京都大学文学博士
2014年 秋の叙勲で瑞宝中綬章 受章
主要著書
「消費心理学入門」 講談社,1965年刊
「購買態度の構造分析」 関西大学出版部,1988年刊
「旅行者行動の心理学」 関西大学出版部,2000年刊
「観光旅行の心理学」 北大路書房,2007年刊
目次
はしがき
序章 「さがしもの(探し物)」と「モノ探し行動」
第1章 モノ探しの具体的行為
Ⅰ 「モノ探し行動」の具体的行為のリストアップ
1 モノ探しの具体的行為の収集
2 モノ探しの具体的行為のリストにもとづく若干の分析
3 「モノ探しの意欲の喚起・保持」に関する行為の分析
4 具体的行為のデータ収集でのインターネット利用の問題
Ⅱ モノ探しの行動モデル
1 モノ探しの行動モデルの作成の試み
2 「モノの探し方」を具体的に表す部分モデルの構成
3 「モノ探し行動」の全体モデル
Ⅲ モノ探し行為の心理学的分析への視点
第2章 モノ探しの呪術的方法
Ⅰ 「占い」と「まじない」
Ⅱ 呪術的方法に関するデータ
1 データ収集の方法
2 データの概要
Ⅲ 呪術的手法の分析
1 呪術的手法の具体的所作
2 呪術的手法の分類
Ⅳ 呪術的方法の利用について
1 呪術による問題解決
2 呪術利用の心理学的理解
第3章 進行過程としてみるモノ探し行動
Ⅰ 具体的行為で表す進行状況
1 具体的行為による流れ図を描く
2 インターネットの10サイトから収集した69行為の関連づけ
3 考察:モノ探しの進行過程について
Ⅱ ST ピラミッド型モデルで描くモノ探しの進行過程
1 モノ探しの“進行”の表現
2 モノ探しの進行に伴うSTピラミッド型の変化
3 ST ピラミッド型モデルの提案
Ⅲ 問題解決としてのモノ探しの過程
1 問題解決過程としての“モノ探し”のとらえ方
2 モノ探し行動のプロセス・モデル
3 モノ探し行動のプロセスのスタイル間比較
Ⅳ モノ探し行動を俯瞰する暫定モデル
1 心理学的理解の現在レベル
2 モノ探し行動に関する暫定モデル
3 4段階の行動的位相についての説明
4 暫定モデルの提案から生まれる問題
第4章 モノ探しにおける状況要因
Ⅰ 消費者行動における「状況要因」
1 消費者行動分析での状況要因への着目―筆者の場合
2 Belk,R.W.(1974)による状況要因に関する先駆的考察
Ⅱ モノ探し行動の「状況要因」に関する既述内容
1 モノ探し行動の外部要因と内部要因
2 モノ探しの「状況」に関する既述の構成内容の整理
Ⅲ 「状況要因」の概念と特徴
1 「状況要因」の概念について
2 モノ探し行動における「状況認識」
Ⅳ 「探索状況」での状況要因の構成内容
1 2方向からのアプローチ
2 基本的な次元の設定と2次元モデル
3 状況要因の構成内容の暫定的リスト
第5章 モノ探し行動の「効率」
Ⅰ 「コスト・パフォーマンス」という視点
Ⅱ モノ探し行動における「効率」
1 コスト・パフォーマンスの枠組みによる「効率」のとらえ方
2 モノ探し行動におけるコスト
Ⅲ 日常生活での行動コスト
1 モノ探し行動の経験的特徴と低コスト指向
2 日常生活行動でのコスト認識
終章 心理学的課題としてのモノ探し行動
Ⅰ 心理学研究への筆者の取り組み
1 矢田部達郎監修『心理學初歩』で学ぶ
2 筆者における心理学研究
3 「モノ探し行動」に関する小論の方法論的立場
Ⅱ 「モノ探し行動」の心理学的研究の展望
1 モノ探し行動に関する心理学的研究の枠組み
2 モノ探し行動の生活機能
3 データ収集の実証的方法について
あとがき/文献/索引