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環境疫学情報のリスク・リテラシー

環境疫学情報のリスク・リテラシー

A5判 170ページ 並製
価格:2,640円 (消費税:240円)
ISBN978-4-87698-236-3 C3047
奥付の初版発行年月:2012年05月 / 発売日:2012年05月中旬

内容紹介

公衆衛生上の政策立案や環境汚染の係争において科学的根拠に用いられる疫学研究.しかし偏った情報発信の仕方が,受け止め方に影響を及ぼすこともある.環境疫学研究を行う専門家の倫理と責務としてのコミュニケーションのあり方を示し,非専門家の疫学に対する理解を深めるとともに,研究者自身のリサーチリテラシーの向上を目指す.

著者プロフィール

山崎 新(ヤマザキ シン)

1967年神奈川県生まれ.1991年京都大学工学部衛生工学科卒業.2006年京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻博士後期課程修了,博士(社会健康医学).民間企業,独立行政法人国立環境研究所を経て,2007年1月より,京都大学准教授(大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学分野).専攻:疫学,環境疫学.主要著作に,『環境疫学入門』(岩波書店,2009年),『QOL評価学』(中山書店,2005年(共訳)).

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき
第1章 環境・公害問題の発生から被害者救済までの俯瞰
(0) 緒言—疫学研究はどのように活用されるのか
(1) 環境・公害問題が発生していることへの「気づき」
(2) 環境汚染と健康影響の因果関係を推論する
(3) 健康被害の拡大を防止する
(4) 原因物質と生物学的メカニズムを解明する
(5) 環境汚染者を探索する
(6) 環境汚染者を特定する(健康被害に関わる訴訟)
(7) 因果関係の行政判断(被害者の公的な救済)

第2章 リスクを理解するために
(0) 緒言—日常語としてのリスクの意味
(1) 様々なリスクの定義
(2) 疫学の専門用語としてのリスクの意味
(3) 期待値としての健康リスクの試算

第3章 疫学研究の要点を理解するために
(0) 緒言—疫学とは
(1) 疫学研究の基本的なデザイン
(2) 研究結果の偏り(バイアス)
(3) 統計解析の原理を理解する
(4) 疫学研究論文の特徴を理解する

第4章 因果関係を理解するために
(0) 緒言—リスクの比や差による因果関係の推論
(1) 「因果関係がある」という仮説の証明
(2) 疫学研究で示される因果関係
(3) 集団的因果関係と個別的因果関係の違い
(4) 訴訟において争われる因果関係(法的因果関係)
(5) 集団的因果関係から個別的因果関係を類推する(寄与危険割合)

第5章 疫学研究者の信念と倫理
(0) 緒言—疫学研究における倫理とは
(1) 無危害の四原則からの疫学研究倫理の考察
(2) 疫学研究者の良心に基づく中立性
(3) 科学者の信念による研究結果への影響
(4) 疫学研究者により異なる結果の解釈(DDTのリスクの仮想例)
(5) 利益相反に関わる倫理

第6章 リスク情報のコミュニケーション
(0) 緒言—リスク情報の〈リスク〉とは
(1) 発信する価値のあるリスク情報(コミュニケーションの前に(1))
(2) 疫学情報の2つの確率的要素(コミュニケーションの前に(2))
(3) リスク情報の発信の事例(磁場と小児白血病)
(4) リスク情報のコミュニケーションのルート
(5) 社会における疫学研究者の役割
(6) マス・メディアの役割
(7) まとめ

補章 放射線の健康影響に関わるリスク情報のコミュニケーション(あとがきにかえて)
疫学研究者の立場
状況の整理
表現方法による印象の違い
環境汚染の特質(理不尽な曝露と行政の割り切り)
パターナリズムとコミュニケーション

参考文献
索 引


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