哲学するのになぜ哲学史を学ぶのか
価格:3,190円 (消費税:290円)
ISBN978-4-87698-239-4 C1010
奥付の初版発行年月:2012年10月 / 発売日:2012年10月中旬
哲学はどのように学ぶのか。哲学が純粋に知を愛する(フィロソフィア)ものであるならば、現在における諸問題のみの考察だけでよいはずであるのに、哲学するためになぜ哲学史を学ぶ必要があるのだろうか。本書は、この素朴な疑問に正面から立ち向かい、哲学史を学ぶ意義についてあらためて考えてみる。
松本 啓二朗(マツモト ケイジロウ)
大阪教育大学准教授
主な著訳書
『哲学は何を問うべきか』(共著)晃洋書房(2005年)
「〈物への問い〉はいかにして可能か」(『アルケー』12号,2004年)
ギュンター・ペルトナー『医療倫理学の基礎』(共訳)時空出版(2011年)
戸田 剛文(トダ タケフミ)
京都大学大学院人間・環境学研究科准教授
主な著訳書
『世界について』岩波ジュニア新書(2011年)
『バークリ——観念論・科学・常識』法政大学出版局(2008年)
リチャード・ローティ『文化政治としての哲学』(共訳)岩波書店(2011年)
バークリ『ハイラスとフィロナスの三つの対話』岩波文庫(2008年)
目次
はじめに——本書の主題と構成
第一部 哲学史への問い
第一章 哲学史と教養——古典を読むこと [松本啓二朗]
第一節 「哲学的な哲学史」について
第二節 教養への問い
(一)さまざまな教養論
(二)「教養」の特徴
第三節 古典を読むこと——「教養」の際立ったあり方
(一)歴史性の強調
(二)「古典」とはどういうものか
(三)古典を読むこと
第四節 教養と哲学
第二章 最近の二つの哲学史観——問題史と発展史について [渡邉 浩一]
第一節 ヴィンデルバントの問題史
(一)ヴィンデルバントの学問的経歴
(二)「カントを理解することとは、カントを越えゆくことをいう」
第二節 ディルタイの発展史
(一)ディルタイの学問的経歴
(二)「著者が自己自身を理解したよりもよく著者を理解する」
第三節 問題史観と発展史観の意義と限界
第二部 知にとって歴史とは
第三章 歴史と哲学 [戸田 剛文]
はじめに
第一節 哲学と科学の蜜月
第二節 オルタナティブ——プラグマティズム
第三節 自然主義をこえて
第四節 経験論、歴史、そして少し文学
第四章 懐疑論についての歴史的考察
——「ものごとを疑う」あるいは「知っている」ということ [松枝 啓至]
はじめに
第一節 ストア主義と古代懐疑主義
(一)ストア主義
(二)古代懐疑主義
第二節 一六・一七世紀における懐疑論
(一)モンテーニュにおけるピュロン主義
(二)デカルトの方法的懐疑
第三節 現代における懐疑論/知識論
(一)現代における懐疑論/知識論の状況
(二)マイケル・ウィリアムズの文脈主義
第三部 哲学の古典をどのように読むか
第五章 必然性と自由の問題——ライプニッツと共に考える [根無 一信]
はじめに
第一節 ライプニッツのさまざまな活動
(一)関係し合う諸学問
(二)理論と実践
第二節 ライプニッツ哲学における必然性と自由の両立
(一)必然性と自由の問題
(二)絶対的必然性(necessite absolue)
(三)無差別の自由(liberte d' indifference)
(四)ライプニッツの答え——傾かせるが強いない(incliner sans necessiter)
(五)人間の自由と義務
(六)「最善」の意味
おわりに
第六章 非物質論とはどのような考え方か
——バークリ哲学から見出される多様な意義 [山川 仁]
はじめに
第一節 非物質論の概要
第二節 物はどのように存在するか
(一)物は実在するか
(二)物は継続して存在するか
(三)物は公共的に存在するか
(四)物は知覚されるとおりに存在するか
第三節 知覚されないものの存在はどのように主張されるか
(一)心について
(二)心以外の知覚されないものについて
第四節 非物質論の意義、そして、哲学の古典を解釈することの意義
(一)非物質論の哲学史的観点からの意義
(二)非物質論の現代における意義、そして哲学の古典を解釈することの意義
第七章 超越論哲学の歴史的背景——カントとスピノザ主義 [内田 浩明]
はじめに
第一節 批判期の「批判」と「超越論哲学」
第二節 理念論としての『オプス・ポストゥムム』の超越論哲学
第三節 批判期のスピノザ主義への批判
第四節 『オプス・ポストゥムム』のスピノザ主義
(一)「超越論哲学の最高の立場」とスピノザ主義
(二)カントとリヒテンベルク
おわりに [松本啓二朗・戸田 剛文]
人名索引