変容する親密圏/公共圏4
コリアン・ディアスポラと東アジア社会
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-87698-258-5 C3336
奥付の初版発行年月:2013年08月 / 発売日:2013年08月上旬
戦間期の日本帝国による植民地支配,戦後の東アジアにおける暴力的冷戦構造,また冷戦後のグローバルな新自由主義的秩序——相次ぐ社会構造の変動は奔流のような人びとの移動を生んだ。移動を余儀なくされた先々で人びとは生き抜くためにどのような共同性を創造/想像したのか。日本・韓国・中国の事例から浮かび上がる実像を鋭く抉る。
松田 素二(マツダ モトジ)
京都大学大学院文学研究科教員。 ナイロビ大学社会学科大学院修了。文学博士。専攻:社会人間学。
主な著作:『日常人類学宣言』(世界思想社,2009 年),『呪医の末裔』(講談社, 2003 年),『抵抗する都市』(岩波書店,1999 年),Urbanisation From Below(Kyoto University Press, 1998 年)など。
鄭 根埴(チョン グンシク)
ソウル大学校社会科学大学社会学科教授。
ソウル大学校社会科学大学社会学科卒業。文学博士。専攻:歴史社会学,社 会運動論,身体の社会学。
主な著作:『生活の中の植民地主義』(編,人文書院,2004 年),『韓国原爆 被害者苦痛の歴史:広島・長崎の記憶と証言』(編,市場淳子訳,明石書店, 2008 年),『植民地の遺産, 国家形成,韓国の民主主義 1, 2』(編,チェクセ サン,2012 年)(『식민지 유산 국가 형성 한국 민주주의 1, 2』(편,책세상, 2012 년)。
目次
はじめに [松田素二]
序 章 コリアン・ディアスポラの形成と再編成 [鄭 根埴]
1 ディアスポラとは
2 植民地主義と近代の「離散」
3 冷戦による分断とディアスポラ
4 ポスト冷戦とディアスポラの解体
5 コリアン・ディアスポラ研究の進展のために
第I部 コリアン・ディアスポラの民族関係−−東アジア社会から
第1章 在日朝鮮人−日本人間の〈親密な公共圏〉形成
—−「パラムせんだい」において「対話」はいかに成立したのか? [山口健一]
1 はじめに
2 〈現代日本社会〉と「公共圏」としての「パラムせんだい」
3 「パラムせんだい」における「対話」の社会的結合様式
4 むすびにかえて
第2章 在日朝鮮人女性の識字教育の構造
—−1970—1980年代京都・九条オモニ学校における教師の主体に着目して [山根実紀]
1 はじめに—在日朝鮮人女性と識字教育—
2 南部教会再建運動と九条オモニ学校
3 九条オモニ学校における教師の語り
4 おわりに—識字教育構造と教師の関係性—
第3章 「見えない朝鮮族」とエスニシティ論の地平
−−日本の新聞報道を手掛かりに [権 香淑]
1 「見えない朝鮮族」をめぐる問題構制
2 朝鮮族をめぐる報道内容とその傾向
3 朝鮮族の報道内容から読み取れるもの
4 エスニシティ論の地平を拓くために
第4章 ポスト冷戦期における在日朝鮮人の移動と境界の政治 [趙 慶喜]
1 ディアスポラの逆移動
2 境界線上の国籍
3 民族 / 多文化のダブル・スタンダードを超えて
4 〈想像的移動〉の効果
5 むすびにかえて
第II部 民族的共同性生成の現場—日本社会から
第5章 在日朝鮮人のナショナル・アイデンティティを再考する
—−3・4世朝鮮籍者の「共和国」をめぐる語りを手がかりに [李 洪章]
1 目的と問題意識—多彩な在日朝鮮人のナショナル・アイデンティティ
2 朝鮮籍とは何か—管理体制の変遷と現在
3 ナショナル・アイデンティティ論導入の有用性
4 インタビュー・データの分析
5 能動的かつ主体的なナショナル・アイデンティティ形成
6 おわりに—脱植民地主義思想としてのディアスポラ
第6章 多様性と響き合う「在日朝鮮人」アイデンティティ
−—在日3世学生たちの学びの運動から [孫・片田 晶]
1 在日アイデンティティの課題
2 マイノリティの運動とアイデンティティの「ジレンマ」
3 韓学同京都の「在日朝鮮人」アイデンティティ
4 多様な個人史と相互作用する「在日朝鮮人」アイデンティティ
5 学びと連帯のアイデンティティの運動
6 多様なアイデンティティの枠組みの可能性
第7章 民族間結婚による「近さ」の再編—−2人の在日朝鮮人男性の「特殊」な結婚事例から [橋本みゆき]
1 民族間結婚はいつまで「困難」なのか
2 インタビュー調査について
3 事例1 洪英甫の結婚
4 事例2 具守連の結婚
5 共同体を横断する親密圏
6 おわりに
第8章 在日朝鮮人の居住と共同性—「不法占拠」という地平からの一考察 [山本崇記]
1 「不法占拠」 / スクオッティングの間
2 居住と共同性へのアプローチ
3 「不法占拠」という地平
4 共同性の剔抉へ—モノグラフの必要性
第III部 「在外同胞」と民族意識—韓国社会から
第9章 在外同胞法と在韓外国人の法的地位変遷の関係性 [佐藤暁人]
1 在韓外国人の法的地位をめぐる課題
2 在韓外国人の法的地位:在外同胞法以前
3 在韓外国人の法的地位の変遷:在外同胞法制定を契機に
4 在韓外国人の法的地位:在外同胞法制定以降
5 おわりに 在外同胞法と公共性
第10章 祖国とディアスポラ—1970年代韓国映画における在日朝鮮人表象 [金 泰植]
1 朴正煕政権と国民的記憶の創出
2 朴正煕政権と在日朝鮮人
3 『EXPO70東京作戦』(1970)
4 『帰ってきた八道江山』(1976)
5 在日朝鮮人表象の政治性
第11章 1970年代在日同胞母国訪問事業に関する政治社会学的考察 [金 成姫(金 泰植 訳)]
1 問題意識—母国訪問事業と韓国社会
2 「在日同胞母国訪問事業」とは何か
3 母国訪問事業の意義
4 結論
第12章 経済的インセンティブと「道具的民族主義」
−—在韓中国朝鮮族を中心に [朴 佑(金 泰植 訳)]
1 研究目的および問題提起
2 朝鮮族労働者の韓国進出:制度的背景と経済社会的特性
3 朝鮮族留学生の韓国留学:制度的背景と経済社会的特性
4 経済的インセンティブ,そして「道具的民族主義」
5 道具的民族主義と「アイデンティティの変容」
あとがき [松田素二・鄭 根埴]
索 引
執筆・翻訳者紹介