プリミエ・コレクション39
軍馬と農民
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-87698-274-5 C3321
奥付の初版発行年月:2013年03月 / 発売日:2013年03月下旬
戦争の時代であった近代において,馬は特に戦争との結びつきが強く,それゆえに劇的な変化を遂げた存在であった。軍馬の造成を目的とした大型化が実行され,在来種血統が一気に淘汰されたのである。その急激な変化は,馬を生産・利用する農民の経済的犠牲の下で実現されたものであった。「馬」を軸として,農業史と軍事史を有機的に結んだ意欲作。
大瀧 真俊(オオタキ マサトシ)
京都大学農学研究科研修員
1976年生まれ 静岡県出身
京都大学農学部生物環境科学科卒業,同農学研究科生物資源経済学専攻博士課程単位取得満期退学,博士(農学)
目次
序章 軍馬となった日本の馬
第1節 近代の馬をめぐる3者─軍・農・馬政
第2節 研究領域をむすぶ馬─先行研究とその問題点
1)畜産史研究
2)農業史研究
3)軍事史研究
第3節 近代産馬業の統一的把握─課題と方法
1)軍・農・馬政の動態と相互関係─本書の課題
2)資料と方法
3)本書の構成
4)本書における用語
第1章 第一次馬政計画期(1906-35年)の東北産馬業
第1節 近代産馬業の時期区分
第2節 統計でみる第一次馬政計画期
1)馬匹改良の進展
2)東北産馬業の位置
第3節 東北各県の特徴
1)各県産馬業の概要
2)県別の産馬方針
3)国・軍の産馬関連施設
小括
第2章 馬匹改良政策の展開
―馬政計画第一期(1906-23年)の青森県上北郡―
第1節 上北郡馬産の特徴
1)先進馬産地・上北郡
2)馬産経営階層
3)馬政計画第一期の変化
4)馬匹改良施設と軍馬補充施設
第2節 種牡馬制度の整備
1)種牡馬検査法の制定
2)国有種牡馬の供給
3)国有種牡馬と民有種牡馬の比較
第3節 種牡馬購買・軍馬購買
1)セリ市場の景況
2)種牡馬制度との関連
3)馬産経営階層との対応
第4節 陸軍の牧野政策
1)牧野の不足
2)国有林野馬産供用限定地制度
3)牧野政策と馬匹改良政策
小括
第3章 馬匹改良政策の綻び
―馬政計画第一期末の秋田県における重種流行―
第1節 重種流行の背景
1)重種血統の導入
2)大正好況と重種流行
第2節 馬政局と畜産組合の反応
1)馬政局の反応
2)畜産組合の反応
第3節 重種流行の位置づけ
1)馬匹改良政策の破綻条件
2)重種流行の衰退
小括
第4章 軍馬資源確保と農民的馬飼養の矛盾
―馬政計画第二期(1924-35年)の使役農家経営―
はじめに
1)馬政計画第二期の産馬業
2)本章の課題
第1節 馬政計画第二期における軍馬需要の変化
1)平時軍馬需要の減少―軍縮の影響―
2)戦時軍馬需要の増加―陸軍近代化の影響―
第2節 馬政第二期計画の馬政方針
1)陸軍の馬政方針
2)農林省畜産局の馬政方針
第3節 馬利用増進による経営収支改善―改良馬需要の創出プラン―
1)馬利用増進の奨励
2)馬利用増進の実践形態
第4節 支出削減による経営収支改善―小規模農家における小格馬需要―
1)小格馬需要の背景
2)馬論・牛論
3)小規模農家の具体的対応
小括
第5章 軍馬需要の変化と東北馬産
―馬政計画第二期(1924-35年)の馬産農家経営―
はじめに
1)馬政計画第二期の東北馬産
2)本章の課題
第1節 統計からみた馬政計画第二期の東北馬産
1)国有種牡馬と民有種牡馬の比較
2)2歳駒セリ市場の景況
第2節 1920年代馬産農家経営の変化
1)軍馬生産から農馬生産への転換
2)繁殖牝馬の農耕利用拡大
第3節 1930年代馬産農家経営と農林省の馬産救済施策
1)農林省に対する請願
2)農林省の馬産救済施策
3)生産意欲増大の背景
第4節 1930年代馬産農家経営と陸軍の軍馬購買事業
1)陸軍に対する請願
2)1930 年代の軍馬生産と農馬生産
3)壮馬中心の軍馬購買事業
小括
補章 共進会制度からみた馬匹改良政策の変遷
第1節 共進会制度の変遷
1) 産馬奨励規程
2) 畜産奨励規則
第2節 馬政計画第一期の共進会―青森県産馬共進会―
1)青森県産馬共進会と七戸産馬組合
2)馬所有規模による経営階層区分
3)受賞者の内訳
第3節 馬政計画第二期の共進会その1―秋田県種馬共進会―
1)概況
2)国税納付額による経営階層区分
3)受賞者の内訳
第4節 馬政計画第二期の共進会その2―秋田県輓用役馬共進会―
1)概況
2)受賞者の内訳
小括
終 章 総括と展望
第1節 第一次馬政計画期の東北産馬業
第2節 近代産馬業の全体像
1)軍・農・馬政の時期的変化
2)軍・農・馬政の相互関係
3)「馬」を通じた軍と農の結びつき
参考・引用文献一覧
あとがき
索引