情動のエスノグラフィ 南タイの村で感じる・つながる・生きる
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-87698-279-0 C3039
奥付の初版発行年月:2013年04月 / 発売日:2013年04月上旬
南タイの村で調査を始めて20年以上。姦通殺人、老女の自殺など、フィールドでの経験は著者に自らをも含めた「生と死」の問題を突きつける。怒りや悲しみといった通常の感情ではなく「情動」、すなわち身体化されたエネルギーに注目し、時に出来事の連鎖に巻き込まれながら、自らが情動の流れの一部となって産み出された新しい民族誌。
西井 凉子(ニシイ リョウコ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授.
1959年生まれ.京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学.総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程中途退学.博士(文学).
研究テーマは東南アジア大陸部の人類学.
主な著書に『死をめぐる実践宗教—南タイのムスリム・仏教徒関係へのパースペクティヴ』(世界思想社,2001年),『時間の人類学—情動・自然・社会空間』(編著,世界思想社,2011年),『社会空間の人類学—マテリアリティ・主体・モダニティ』(共編著,世界思想社,2006年)など.
目次
序 章 情動のエスノグラフィにむけて
一 人類学のフィールドワーク
二 人類学と感性 —芸術との共通性
三 情動のエスノグラフィへ
四 エスノグラフィが生まれるプロセス
五 本書のテーマと構成
第1章 混住するムスリムと仏教徒 私の調査地
一 村の成り立ちと生業
二 ムスリム —仏教徒混住村落としての特徴
三 本書における主要な人間関係
第2章 集団憑依 —伝染する情動 学校・身体・精霊
一 南タイの「憑霊する学校」
二 憑依の様々な原因
三 タイにおける他の集団憑依の事例
四 伝染する憑依
第3章 クルー・ノーム —「のめり込む」生 エビ養殖の顛末
一 エビ養殖概況
二 村におけるエビ養殖
三 エビ養殖に関わる生
四 生の偶然性 —よりよい生へ
第4章 チャイ —「姦通殺人事件」 サックシーとピーノーン
一 村における姦通および姦通をめぐる言説
二 姦通殺人事件 —マテリアリティ
三 マングローブ林漁村における出来事としての「姦通殺人事件」の考察
四 「姦通殺人」その後
第5章 ヤーイ・チット —老女は自殺したのか 親子と諦念
一 老女の死の状況
二 老女の死をめぐる相反する語り
三 村人の関心
四 「時が至れば死ぬ」
第6章 ノン —死のにおい 身体観と偶有の生
一 ノンの「死」
二 家族にとってのノンの死 —身体性
三 村人の不満 —身体を欠いた死
四 HIV感染による死 —遇有の生
五 偶有性の記述、受動性の人類学へ
第7章 ナー・チュア —人と家と「私=民族誌家」 生のプロセス
一 ナー・チュアと家
二 家をめぐる生
三 ナー・チュアをめぐる関係性
四 「家と人」の生のプロセス
五 民族誌家としての関わり
結語にかえて
あとがき
初出一覧
参照文献
索引