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人間安全保障工学

人間安全保障工学

A5判 298ページ 上製
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-87698-298-1 C3051
奥付の初版発行年月:2013年08月 / 発売日:2013年08月下旬

内容紹介

単一の学問領域,トップダウン型の画一的な施策では,都市が抱える諸問題を丸ごと解決することはできない。領域越境的な発想と徹底した現場主義,多様なアクターの参加に焦点をあてた,都市の人間安全保障を確保するための新しいパラダイム。

著者プロフィール

松岡 譲(マツオカ ユズル)

京都大学大学院工学研究科(都市環境工学専攻)教授
1950年生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了。工学博士。名古屋大学工学部教授を経て,1998年より京都大学教授。専門は環境システム工学。
著書/『水質データの統計的解析』森北出版(共著)1980,『地球温暖化を防ぐ』日本放送出版協会(分担執筆)1990,『環境システム―その理念と基礎手法―』共立出版(共著)1998,『地球水資源の管理技術』コロナ社(共著)2003,『Climate Policy Assessment』(共著,Springer,2003),『エネルギーと環境の技術開発』コロナ社(編著)2005など。

吉田 護(ヨシダ マモル)

熊本大学大学院自然科学研究科(附属減災型社会システム実践研究教育センター)特任准教授
1981年生まれ。京都大学大学院修士課程修了。博士(情報学)(京都大学)。京都大学特任助教(グローバルCOE「アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点」)を経て,2013年3月より熊本大学特任准教授(自然科学研究科附属減災型社会システム実践研究教育センター)。専門は土木計画学,災害リスク管理。
論文/「口蹄疫の感染伝染モデリング」(土木学会論文集D3, 67 (4), 2012),「社会基盤テロリスクと情報開示」(土木学会論文集D3, 68 (4), 2011),「Payment Plan for the Delegation of One or Two Inspection Agencies」(Journal of Computers, 4 (10), 2009)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき

第1章 人間安全保障工学とは [松岡譲]
1 人類は災害や環境破壊とどう戦ってきたか
  1.1 現代における災害や環境破壊の脅威
  1.2 脅威から逃れるため,これまで世界はなにをしてきたか?
  1.3 経験からなにを学んだのか?
  1.4 失敗したことばかりではなかった―日本の経験を中心に
  コラム1 日本におけるインフラストラクチャー整備の努力
2 人間安全保障工学の提案
  2.1 人間安全保障工学とはなにか?
  2.2 「人間の安全保障」と「人間安全保障工学」
  2.3 人間安全保障工学の4 つの原則
  2.4 人間安全保障工学の内容
3 おわりに

第2章 実践的アプローチとしての人間安全保障工学 [小林潔司]
1 実践者としてのエンジニア
2 エンジニアに必要となる「フィールド的な知」
  2.1 従来の諸学問の基本原理
  2.2 フィールド的な暗黙知
  2.3 客観化と「客観化の客観化」
3 エンジニアの実践における課題
  3.1 専門性の問題
  3.2 正統化の問題
  3.3 フレームの相対化の必要性
  3.4 実践と行為の中の省察
4 実践的アプローチとは
  4.1 実践的アプローチの問題点と課題
  4.2 実践的アプローチ―フレーム分析
  4.3 実践的アプローチ―フィールド実験
  4.4 実践的アプローチ―橋渡し理論
  4.5 実践的アプローチ―「行為の中の省察」プロセス
  4.6 実践的アプローチの評価
5 人間安全保障工学の発展のために
  5.1 行政・市民パートナーシップ
  5.2 プロフェショナルとしてのエンジニアの役割
  5.3 技術と社会の共進化―地域学習アプローチ
6 おわりに

第3章 社会基盤施設の整備と展開 [大津宏康]
1 メガシティと地方のリンクモデル
2 メガシティに内在する課題と地方リンクに関する課題
  2.1 都市の発展過程における地盤沈下問題
     ―大阪,バンコクを事例として
  2.2 都市の開発速度と洪水対策―バンコク大水害を事例として
  2.3 地すべり・土石流災害と早期警戒体制の整備
     ―日本,タイを事例として
3 新たな都市経営者育成モデル

第4章 健康リスク管理と都市環境インフラの共進化 [田中宏明]
1 世界の疾病と死亡の要因
2 都市環境が関わる健康問題
  2.1 DALYs に関わる環境要因
  2.2 水と衛生
  2.3 大気汚染
  2.4 化学物質
  2.5 地球温暖化
  2.6 廃棄物問題
  2.7 環境要因がより深刻となる途上国
3 深刻化する生物保全
4 健康リスク管理(Health risk management)に向けて
5 アジア・メガシティを支える都市環境インフラ
6 都市の水インフラの課題と上下水道の分断
  6.1 増加する水需要を支える水インフラ
  6.2 都市でのし尿問題
  6.3 水供給システムと排水システムの整備ギャップによる水汚染
  6.4 排除のための管渠システムの構築
  6.5 集中型下水処理システムによる効率化と集中化による課題
  6.6 水洗化によるし尿処理の変化と水環境汚染
7 水・エネルギー・物質の都市代謝の統合化への都市環境インフラの進化
  7.1 俯瞰的な視点の必要性
  7.2 都市での水・資源・エネルギーの統合管理の重要化
  7.3 都市の水インフラシステムのエネルギー消費の限界
  7.4 廃棄のための処理から水・資源・エネルギーの回収利用へ
8 都市環境インフラの視点から見た人間安全保障工学の深化
  8.1 都市水循環系とエネルギー問題の再利用による複合解決
  8.2 雨水利用と内水対策の複合解決
  8.3 循環型資源利用に潜むリスクとその低減
  8.4 都市の環境・エネルギー・防災問題・都市ガバナンスの複合解決
  コラム2 東日本大震災と下水処理の問題点

第5章 人間安全保障工学の視点からの総合的災害リスク管理 [多々納裕一・吉田護]
1 自然災害と人間安全保障
  1.1 世界における災害の発生傾向
  1.2 アジアにおける災害の特徴
  1.3 ムンバイにおける災害リスク管理
2 人間の安全保障を目指した災害リスク管理
  2.1 人間・生活の災害脆弱性の形成過程
  コラム3 富や権力は災害の被害の大きさに影響を及ぼす?
  2.2 災害リスク管理の手段
  2.3 レジリエンシー―抵抗力と回復力
  2.4 災害リスク管理の主体
  2.5 災害リスク管理のプロセス
  2.6 災害リスクガバナンスとコミュニケーションのデザイン
3 総合的災害リスク管理の実現に向けて

第6章 都市の人間の安全保障におけるコミュニティ次元 [ショウラジブ]
1 「人間の安全保障」をめぐるさまざまな主張
2 人間の安全保障と災害リスク軽減枠組
  2.1 災害に対する人間の安全保障
  2.2 兵庫行動枠組の展開と課題
  2.3 人間の安全保障と兵庫行動枠組
  2.4 兵庫行動枠組のもとでの自治体の取り組み
3 アジア地域の都市リスクおよび都市回復力と人間の安全保障に関わる課題
  3.1 アジア都市が直面する災害リスク
  3.2 都市化するアジア・メガシティ
  3.3 災害リスクにさらされる都市貧困層
4 都市回復力の分析ツールとアプローチ
  4.1 都市回復力の概念について
  4.2 CDRI(気象および災害からの回復力評価イニシアティブ)
  4.3 CDRI指標と人間の安全保障および兵庫行動枠組
  4.4 CDRI評価の実践事例
5 人間の安全保障強化のためのコミュニティ主体アプローチ
  5.1 人間の安全保障強化のためのコミュニティ次元
  5.2 コミュニティ行動計画(CAP)
  5.3 行動および実施型回復力評価(AoRA)
  5.4 社会,制度および経済回復力行動(SIERA)
6 今後の展開

第7章 アセットマネジメントとは [小林潔司]
1 アセットマネジメントの必要性
  1.1 アセットマネジメントの背景
  1.2 日本におけるアセットマネジメントの現状
2 アセットマネジメントの概要
  2.1 アセットマネジメントシステムの必要性
  2.2 アセットマネジメントシステム
  2.3 アセットマネジメントシステムの構成
3 アセットマネジメント標準
  3.1 ISO5500X
  3.2 日本におけるマネジメント標準の役割
  3.3 メタマネジメントとしてのPDCA
4 アセットマネジメントの国際標準化戦略
  4.1 国際標準の種類
  4.2 標準化競争とつきあいの原理
  4.3 国際標準化戦略
5 アセットマネジメント導入事例
  5.1 ベトナムでの導入事例
  5.2 多様化標準システム
  5.3 京都モデル
6 おわりに

第8章 人間安全保障工学の教育体系の実装 [米田稔]
1 人間安全保障工学を習得するには
2 京都大学での教育実践
  2.1 人間安全保障工学と「人間安全保障工学教育プログラム」
  2.2 人材が備えるべき素養
  2.3 必修科目とコア科目
  2.4 モード2学問としてのインターンシップ
  2.5 社会人を対象とした短期コースの実施
  2.6 教育システムの運営で考慮すべき事項
3 今後の展開
  コラム4 プログラム修了生の声
付録 履修生らのインターンシップ報告から

用語集
索引
執筆者紹介


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