生物資源から考える21世紀の農学4
森林の再発見
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-87698-339-1 C3361
奥付の初版発行年月:2007年11月
再生不能な化石資源への過度の依存—現代社会の危機を一言で言えというなら、これに尽きる。その危機を救うのが、森林だ。養分元素の再生、優れた防災機能、良質の水の供給、景観資源としての機能、そして森の生産するバイオマスの近未来的な利用…。持続的社会の根幹に、究極のリサイクルシステムとしての森を志高く科学的に位置づける。
太田 誠一(オオタ セイイチ)
京都大学大学院農学研究科教授
(熱帯林環境学,森林科学専攻)
1949年 長崎県長崎市生まれ
1977年 名古屋大学大学院農学研究科博士課程満了
1983年 農林水産省林業試験場研究官
1988年 農林水産省森林総合研究所北海道支所土壌研究室長
1997年 同 森林環境部立地環境科立地評価研究室長
1998年 同 森林環境部立地環境科長
2001年 独立行政法人森林総合研究所立地環境研究領域長
2002年より現職
主要論文:
Studies on the humus forms of forest soil (1-8). Soil Science and Plant Nutrition (1976-1979)
Ultisols of lowland Dipterocarp forest in East Kalimantan, Indonesia (1-3). Soil Science and Plant Nutrition (1992-1993)
Rainforest Ecosystems of East Kalimantan, Ecological Studies Vol. 140, Springer-Verlag Tokyo (2000)(共編・著)
「熱帯林の土壌生態」久馬一剛編『熱帯土壌学』名古屋大学出版会(2001)(分担執筆)
「森林と土壌環境」 鈴木和夫編『森林保護学』朝倉書店(2004)(分担執筆)
目次
序 文
第1章 資源管理から見た森林の新たな価値(菊沢喜八郎)
はじめに
1 樹木と森林
2 炭素循環における森林の役割
3 森林のさまざまな機能
4 森林科学の役割
5 森林の新たな価値
6 新しい自然産業としての林業
おわりに
第2章 森林生態系における土壌動物群集(武田博清)
はじめに
1 土壌生態系の特徴
2 土壌動物のすみ場所と環境条件
3 多様な土壌動物の紹介
4 土壌動物の調べ方
5 土壌動物の生物学
6 土壌動物の生態学
7 森林生態系の機能と土壌動物群集の関係
おわりに
第3章 森林土壌を腐植から科学する(太田誠一)
はじめに
1 腐植と土壌のプロフィール
2 森林土壌中に貯留される炭素
3 土壌腐植のダイナミクス
4 腐植のはたらき
5 土壌炭素プールと地球温暖化
6 土壌のたどって来た道
第4章 水の循環における森林の役割(谷誠)
1 地球科学と森林科学の交差点
2 流域の水収支
3 森林の蒸発散
4 森林流域からの流出
5 森林の水循環における役割の根幹
第5章 良質の水の源としての森林(大手信人)
はじめに
1 水質を制御する要因
2 水質形成を考えるための水文過程の見方
3 森林生態系の物質循環と水質
4 日本の森林渓流における水質の特徴
おわりに-今日の水環境問題と森林
第6章 森林の防災機能(水山高久・里深好文・小杉賢一朗)
はじめに-森林の機能
1 森林の斜面崩壊防止機能
2 土石流
3 雪 崩
4 落 石
5 流 木
おわりに
第7章 森林の多様性と動態を読み解く(神崎 護)
はじめに
1 攪乱と更新
2 残された攪乱の歴史
3 一斉開花の問題
4 種多様性の地理的勾配
5 希少性と固有性
6 種多様性をもたらす機構-ニッチ分割
7 群集非平衡仮説
8 乾燥と火災によって変質していく森林
9 防火によって変質していく森林
10 もろ刃の剣としての植林地
おわりに
第8章 人間と野生動物との新たな関係(高柳 敦)
1 野生動物と人間との関係にかかわる科学
2 野生動物による被害問題
3 被害を防ぐための科学
4 野生動物の保護管理
5 野生動物との共存に向けて
第9章 京の原風景-文化に育まれた都市の野生-(森本幸裕)
はじめに
1 下鴨神社,糺の森とアオバズク
2 平安神宮神苑,園池のイチモンジタナゴ
3 修学院の庭とランドスケープ
4 吉田山のモチツツジ
5 疏水サクラ並木とキマダラルリツバメ
6 深泥池のカキツバタ
7 東山とシイ
8 巨椋池とマコモの岬
9 桂垣とハチクの風景
10 借景の大文字と鳥相は除間伐で守られる
11 賀茂街道のニレ科巨樹
12 いのちの森のゴマダラチョウ
第10章 バイオマスの新たな機能探求(西尾嘉之・寺本好邦)
はじめに
1 バイオマスのモダンユーティリティー-高度マテリアル変換
2 バイオマスリファイナリー-エネルギー源・化学製品原料への変換