シリーズ群集生態学1
生物群集を理解する
価格:3,740円 (消費税:340円)
ISBN978-4-87698-343-8 C3345
奥付の初版発行年月:2020年09月 / 発売日:2020年09月下旬
群集生態学が科学として発展するのは20世紀後半になってからである。生態学理論や生態系研究の方法論の芽生えから,ネットワーク,相互作用,生態系の複雑性と安定性の関係などの現代的テーマへ――特に群集の構造とその機能に注目して研究史を整理し,群集理解にとって不可欠な基礎概念について詳述する。研究者・実務家必携の解説。
大串 隆之(オオグシ タカユキ)
京都大学・名誉教授
専門分野:進化生態学.個体群生態学.群集生態学.生態系生態学.
主著:『生物多様性科学のすすめ』丸善(編著),『さまざまな共生』平凡社(編著),『動物と植物の利用しあう関係』平凡社(編著),『進化生物学からせまる』[シリーズ群集生態学 2]京都大学学術出版会(編著),『生物間ネットワークを紐解く』[シリーズ群集生態学 3]京都大学学術出版会(編著),『生態系と群集をむすぶ』[シリーズ群集生態学 4]京都大学学術出版会(編著),『メタ群集と空間スケール』[シリーズ群集生態学 5]京都大学学術出版会(編著),『新たな保全と管理を考える』[シリーズ群集生態学 6]京都大学学術出版会(編著),『昆虫生態学』朝倉書店(共著)
近藤 倫生(コンドウ ミチオ)
東北大学大学院生命科学研究科・教授
専門分野:理論生態学,群集生態学
主著:『進化生物学からせまる』[シリーズ群集生態学 2]京都大学学術出版会(編著),『生物間ネットワークを紐解く』[シリーズ群集生態学 3]京都大学学術出版会(編著),『生態系と群集をむすぶ』[シリーズ群集生態学 4]京都大学学術出版会(編著),『メタ群集と空間スケール』[シリーズ群集生態学 5]京都大学学術出版会(編著),『新たな保全と管理を考える』[シリーズ群集生態学 6]京都大学学術出版会(編著)
難波 利幸(ナンバ トシユキ)
大阪府立大学・名誉教授
専門分野:数理生態学,群集生態学
主著:『数理生態学』[シリーズ・ニューバイオフィジックス 10]共立出版(分担執筆),『群集生態学の現在』京都大学学術出版会(分担執筆),『「空間」の数理生物学』[シリーズ数理生物学要論 2]共立出版(分担執筆),『生物間ネットワークを紐解く』[シリーズ群集生態学 3]京都大学学術出版会(編著)
目次
はじめに
第1章 群集生態学の成立(武田博清)
1 はじめに
2 群集生態学における主要な概念の提案
(1) 群集の体系化と遷移の概念――植物群集の研究から
(2) 動物群集研究の展開
3 理論生態学からの群集へのアプローチ
――理論生態学のパイオニアたち
(1) 個体群の成長方程式
(2) 種間競争の方程式による生存闘争の説明
4 実験生態学の誕生
――実験個体群から生存闘争を探る試み
(1) ガウゼによる理論モデルの拡張
(2) ガウゼによる実験個体群を用いた理論モデルの実証
(3) 実験生態学における種間競争の実証
(4) 野外における種間競争の研究
5 生態系生態学の誕生
(1) 陸上の生態系
(2) 水界の生態系
6 群集生態学の確立
(1) 生態系生態学からのアプローチ
(2) 群集を種間関係から説明する試み
(3) 野外群集の総合調査――イギリスのワイタムの森での群集研究
(4) 群集生態学への理論生態学からのアプローチ――島の生物地理学理論
7 おわりに
第2章 競争と平衡の群集論の展開(武田博清)
1 はじめに
2 競争と平衡の群集論
(1) 個体群を群集に組み立てる試み――ニッチ理論の登場
(2) 種間における資源利用競争――ニッチ理論の展開
(3) 生物の資源競争
(4) ニッチ理論の一般化
(5) 野外研究によるニッチ理論の実証
(6) 競争-平衡の野外研究の総括
(7) 競争と平衡についての再検討
(8) 競争-平衡の群集論が目指したもの――個体群を群集に組み立てる試み
3 新しいパラダイムを求めて
――群集研究の多様化
(1) 植物の群集と資源利用モデル
(2) 非平衡群集の特徴
(3) 非平衡群集が生み出すパターン
4 おわりに
第3章 生物群集の構造と機能を通して群集生態学を振り返る(難波利幸)
1 はじめに
2 生物群集とネットワーク
(1) 生物群集
(2) 食物網,食物連鎖,食物環
(3) ネットワークの先駆け
3 相互作用
(1) 相互関係と相互作用
(2) 相互作用の分類
(3) 間接効果
4 生態系生態学の発展
(1) 生態系の定義と初期の生態系研究
(2) 植生遷移から生態系の代謝へ
(3) アルフレッド・ロトカと生態系生態学
(4) ハッチンソンとその弟子たち
(5) オダム兄弟の登場
(6) 新しい生態学――システム生態学
5 生態系の複雑性と安定性
(1) エネルギーの経路と多様性指数
(2) 生態系の成熟度とサイバネティック・システムの安定性
(3) 複雑性と多様性の関係に関するさまざまな議論
(4) ロス・アシュビーの先見の明
6 おわりに
第4章 1950年代から1980年代の生物群集の理論モデル(難波利幸)
1 はじめに
2 環境の時空間変動と群集動態
(1) 逃亡種とメタ個体群モデル
(2) 環境の変動と種の共存
3 多種系における間接効果と非線形動態
4 食物網の構造
(1) ジョエル・コーエンとジョージ・スギハラの理論
(2) 食物網におけるスケーリング則
5 おわりに
第5章 1980年代後半からの群集生態学・生態系生態学(難波利幸)
1 はじめに
2 生態系生態学から生物多様性と生態系機能の関係へ
(1) 生産者の多様性と生態系機能の関係
(2) 競争と個体群・群集の変動の関係についての理論研究
(3) 多栄養段階の群集における多様性と生態系機能の関係
(4) 生物多様性と生態系の多機能性の関係
3 現代のニッチ理論と共存理論
(1) 現代のニッチ理論
(2) 現代の共存理論
4 複雑ネットワークとしての生物群集
(1) 食物網研究の新たな展開
(2) 生態系の代謝理論と生物エネルギーモデル
(3) いくつかの型の相互作用を含むネットワーク
(4) 複雑性-安定性関係と非平衡状態を考慮した群集の存続解析
(5) 新たな DNA分析手法と時系列データ解析法による実証研究の発展
(6) 形質と群集をつなぐ
5 おわりに
コラム 1 群集構造を記述するモデルと指数(長谷川元洋)
1 はじめに
2 多様性指数と類似度指数の発達と利用
(1) 多様性指数
(2) β多様性
3 群集の分類と座標付け
(1) 群集を分類する――クラスター解析
(2) 群集組成の違いを軸とした図を作る――座標付けとは
(3) 群集組成の違いの要因は何か?――環境要因や仮説の検証を含む座標付け
4 種-個体数分布
(1) 種-個体数分布と各モデルの適合性
(2) 種-個体数分布のモデルの変遷と近年のモデルの展開
5 まとめ
コラム 2 多種系相互作用の解析法(山村光司)
1 はじめに
2 間接相互作用のパス解析
3 ポアソン回帰
4 一般化線形混合モデル(GLMM)
5 GLMM の近似としての変数変換法(ポアソン分布の場合)
6 GLMM の近似としての変数変換法(二項分布の場合)
7 共分散構造分析
8 昆虫群集の時系列解析
9 状態空間モデル
10 水田群集の解析例
11 個体数変動の主流部分と派生部分の区別
12 おわりに
引用文献
索 引