大学出版部協会

 

新たな保全と管理を考える

シリーズ群集生態学6
新たな保全と管理を考える

A5判 230ページ 並製
価格:3,190円 (消費税:290円)
ISBN978-4-87698-348-3 C3345
奥付の初版発行年月:2009年12月 / 発売日:2009年12月下旬

内容紹介

農業,林業,漁業,環境保全などの人間活動を群集生態学における操作実験と捉え,これまでの生態系の変化がどのような理論によって説明されるのか,また,群集生態学がこれからの変化をどのように予測し検証していこうとするのか,をチャレンジングに提案する.またそうすることで見えてくる新しい課題にスポットライトを当てる.

著者プロフィール

大串 隆之(オオグシ タカユキ)

京都大学生態学研究センター・教授
専門分野:進化生態学,個体群生態学,群集生態学,生態系生態学,生物多様性科学
主著:『Effects of Resource Distribution on Animal-Plant Interactions』 Academic Press(編著),『Ecological Communities: Plant Mediation in Indirect Interaction Webs』Cambridge University Press(編著),『Galling Arthropods and Their Associates: Ecology and Evolution』Springer(編著),『生物多様性科学のすすめ』丸善(編著),『さまざまな共生』平凡社(編著),『動物と植物の利用しあう関係』平凡社(編著),『進化生物学からせまる』[シリーズ群集生態学2]京都大学学術出版会(編著),『生物間のネットワークを紐とく』[シリーズ群集生態学3]京都大学学術出版会(編著),『生態系と群集をむすぶ』[シリーズ群集生態学4]京都大学学術出版会(編著),『メタ群集と空間スケール』[シリーズ群集生態学5]京都大学学術出版会(編著)

近藤 倫生(コンドウ ミチオ)

龍谷大学理工学部・准教授,科学技術振興機構・さきがけ研究員
専門分野:理論生態学,群集生態学,進化生態学
主著:『Dynamic Food Webs: Multispecies Assemblages, Ecosystem Development, and Environmental Change』Academic Press(分担執筆),『Aquatic Food Webs: an Ecosystem Approach』Oxford University Press(分担執筆),『進化生物学からせまる』[シリーズ群集生態学2]京都大学学術出版会(編著),『生物間のネットワークを紐とく』[シリーズ群集生態学3]京都大学学術出版会(編著),『生態系と群集をむすぶ』[シリーズ群集生態学4]京都大学学術出版会(編著),『メタ群集と空間スケール』[シリーズ群集生態学5]京都大学学術出版会(編著)

椿 宜高(ツバキ ヨシタカ)

京都大学生態学研究センター・教授
専門分野:動物生態学,繁殖生態学,保全生態学
主著:『The ecology and evolutionary biology of swallowtail butterflies.』 Scientific Publishers(編著),『Interlinkages between Biological Diversity and Climate Change and Advice on the Integration of Biodiversity Considerations into the Implementation of the United Nations Framework Convention on Climate Change (UNFCCC) and its Kyoto Protocol.』Convention on Biological Diversity (分担執筆),『Forests and dragonflies.』Pensoft(分担執筆),『新しい地球環境学』古今書院(分担執筆).『トンボ博物学:行動と生態の多様性』 海游舎(監訳),『昆虫ミメティックス〜昆虫の設計に学ぶ〜』エヌ・ティー・エス(分担執筆),『現代生物学入門 第6巻地球環境と保全生物学』岩波書店(分担執筆)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

口絵
はじめに

第1章 個体群から群集へ —新たな漁業管理の視点(松田裕之・森 光代)
1 漁業管理の古典理論とその限界
(1)最大持続収穫量(MSY)理論
(2)MSY理論への批判
(3)被食者捕食者系の環境収容力と再生産力
(4)多魚種系の最大持続生産量
2 生態系を考慮した漁業管理—生態系アプローチ
(1)生態系を考慮した漁業管理とは何か
(2)鯨類をめぐる生態系アプローチ—全生態系モデルと多種動態モデル
(3)鯨類などにおける生態系管理の試み
(4)生態系管理の今後の展望
3 多魚種管理の新たな理論
(1)変動する海洋生態系に適した生態系管理とは?
(2)海洋保護区
(3)スイッチング漁獲

第2章 森林の管理と再生 —生物群集の考え方から(日野輝明)
1 はじめに
2 樹種多様性を考慮した森林のゾーニング
(1)土地生産力と土地安定性に基づく森林のゾーニング
(2)Hustonの種多様性の動態平衡モデル
(3)動態平衡モデルに基づく森林の分類
(4)動態平衡モデルに基づくゾーニング
3 生物多様性を考慮した森林管理
(1)階層構造の多様化
(2)種組成の多様化
(3)林分配置の多様化
(4)自然攪乱を模倣した森林管理
4 生物間相互作用を利用した森林管理
(1)草食獣の採食による下刈り
(2)共生微生物による定着・生育促進
5 シカとササの相互作用の動態に基づく森林生態系管理
(1)シカとササの相互作用の動態
(2)シカとササの相互作用に基づく森林再生
(3)シカとササの相互作用と動物群集
6 おわりに

第3章 害虫管理の新展開 —群集生態学の視点から(安田弘法)
1 はじめに
2 第2次世界大戦以降の害虫防除
(1)農薬万能時代と農薬により生じた問題
(2)総合的害虫管理
3 害虫と天敵の相互作用
(1)天敵の食性とギルド内捕食
(2)天敵の種数と害虫の抑制効果
(3)天敵を介した害虫間の見かけの競争
4 作物と害虫と天敵の相互作用
(1)天敵から作物への間接効果
(2)作物と害虫と天敵の間接相互作用網
(3)作物の揮発物質を介した害虫と天敵の相互作用
(4)作物・害虫・天敵の相互作用における土壌微生物の役割
5 害虫管理への新たな提言
6 今後の課題と展望
(1)生物多様性の役割
(2)群集生態学と応用生態学の連携

第4章 外来種問題と生物群集の保全(大河内勇・牧野俊一)
1 はじめに
2 外来種はいかに群集に定着するか—おもに種間競争と天敵から
(1)種間競争
(2)天敵
3 見えない外来種にどう対応するか—マツ材線虫病を例として
(1)病原微生物の侵入
(2)外来種としてのマツノザイセンチュウ
(3)マツ材線虫病の感染メカニズム
(4)宿主転換によるマツノザイセンチュウの繁栄
(5)マツ材線虫病の根絶
4 送粉共生系への外来種の影響
(1)外来ハナバチがもたらす影響
(2)小笠原の送粉系に起きている変化
5 小笠原に侵入した外来種の制御を目的とした群集理論の適用
(1)小笠原の外来種
(2)外来種が更なる外来種の侵入を促進する
(3)小笠原における外来種の制御が群集に及ぼす影響
(4)外来種対策をどう進めるべきか
6 おわりに

第5章 農業生態系の修復—コウノトリの野生復帰を旗印に(内藤和明・池田 啓)
1 はじめに
2 生物多様性と群集の安定性
(1)ミレニアム生態系評価と生態系サービス
(2)生物多様性が群集の安定を促進する
(3)里地・里山の生物多様性の危機
3 コウノトリを核にした食物網の復元
(1)自然再生事業と生物群集の再生
(2)コウノトリを核にした自然再生
(3)水田生態系の現状と改善の方策
(4)「コウノトリ育む農法」の広がり
(5)冬期湛水と水田の生物群集
(6)減農薬・無農薬と生物多様性
(7)中干し延期によるカエル類の増加
(8)一時的水域の役割—水田と河川
(9)小規模水田魚道の設置
(10)河川改修による浅場創出
4 生物群集の視点に立った環境修復
(1)法律の改正や組織の再編が後押しした自然再生
(2)社会的合意の重要性
(3)実践的な研究の蓄積と順応的管理
(4)修復目標を明らかにする
(5)食物網の全体像は複雑
(6)生息地の構造変化が群集の変化をうながす
(7)昔の生物群集に戻せばよいとは限らない
(8)環境修復における群集生態学の重要性
(9)地域の環境保全学としての自然再生

コラム  絶滅の連鎖が起こるとき—群集ネットワークを保全する(近藤倫生)
1 連鎖絶滅と生物群集の保全
2 生物群集の脆弱性を評価する
3 生物群集のアキレス腱を見つける
4 さらなる理解に向けて

終 章 応用群集生態学への展望(椿 宜高・大串隆之・近藤倫生)
1 生物群集が提供する生態系サービス
2 生物群集といかにつきあうか
3 新たな応用群集生態学の課題

引用文献
索  引


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