歴史的世界の哲学としての西田哲学
価格:0円 (消費税:0円)
ISBN978-4-87698-375-9 C3010
奥付の初版発行年月:2013年12月 / 発売日:2013年12月中旬
昭和という動乱の時代に、その歴史の展開の中で、西田幾多郎は独自の思索を展開した。本書は、京都学派の歴史哲学との関わりに目を配りながら、「歴史」という概念を軸に後期西田哲学の形成過程を跡づけ、その根本諸概念を再読することにより、「歴史的世界」を立脚地として「宗教」の問題へと踏み込んでゆく西田哲学の全体像を描く。
杉本 耕一(スギモト コウイチ)
昭和52(1977)年愛知県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員等を経て、平成25(2013)年より愛媛大学法文学部准教授(倫理思想史)。専門は日本の哲学・思想。
主要業績
博士論文「歴史的世界の哲学としての西田哲学」(京都大学、2007年)。「道元における行と知」(『日本の哲学』13、2012年)。「鈴木大拙「霊性」再考」(『北陸宗教文化』24、2011年)。「京都学派の仏教的宗教哲学から「倫理」へ」(『日本哲学史研究』7、2010年)。
目次
はじめに
序
第一部 京都学派の問題圏と歴史的世界の哲学としての後期西田哲学の形成
第一章 京都学派における「歴史」の問題の萌芽 ――昭和四年前後の三木清と田辺元
一 「歴史」の問題の萌芽 ――三木清を中心に
二 「歴史の非合理性」という視点の形成 ――田辺元を中心に
第二章 西田における「歴史」の問題の萌芽 ――『一般者の自覚的体系』を中心に
一 『一般者の自覚的体系』における体系の企図
二 『一般者の自覚的体系』の中での「歴史」の位置
三 中期西田哲学の展開と「歴史」の問題の主題化の背景
第三章 歴史的世界の哲学の成立への道 ――『一般者の自覚的体系』から『哲学の根本問題続編』へ
一 「絶対無の自覚」と「歴史」 ――『一般者の自覚的体系』
二 「私と汝」と「歴史」 ――『無の自覚的限定』
三 「弁証法的一般者」と「歴史」 ――『哲学の根本問題』正・続
補論 『一般者の自覚的体系』以後の「歴史」をめぐる京都学派の問題圏 ――昭和七年前後の三木清と高坂正顕
第二部 歴史的世界の哲学としての西田哲学と宗教の問い
第一章 「制作」
一 「制作」ということ ――歴史的世界の哲学の経験的基盤
二 「制作」の世界としての歴史的世界
三 歴史的世界における「制作」と宗教
第二章 「行為的直観」
一 行為的直観とその歴史性
二 歴史的世界における「知識」の問題
三 歴史的世界における「宗教」の問題
第三章 「絶対矛盾的自己同一」
一 歴史的世界に「於てあるもの」あるいは「個物」の矛盾的自己同一
二 歴史的世界そのものの矛盾的自己同一
三 宗教の次元での絶対矛盾的自己同一
四 宗教の次元の絶対矛盾的自己同一と歴史的世界の矛盾的自己同一との絶対矛盾的自己同一的な接点としての個物
第四章 「場 所」
一 中期西田の「場所」論
二 中期「場所」論から後期「世界」論へ ――歴史的世界の「場所」論
三 「世界の自覚」ということ
四 「場所」論の宗教的意義
五 歴史的世界の「宗教」へ
補説 京都学派の問題圏の展開と時代の中での歴史への問い
補 説 一 「歴史」と「哲学」との狭間で ――高坂正顕の歴史哲学と時局的発言
一 西田幾多郎の「歴史」論の立場と高坂正顕の歴史哲学の展開
二 「歴史」への思索と時局的発言
三 高坂の歴史哲学の窮境
補 説 二 「実践」という問題をめぐって ――京都学派の問題圏と西田の立場
一 昭和初期京都学派における「実践」の問題の諸相
二 西田における「実践」をめぐる問題の所在
三 「絶対」と「実践」
おわりに
あとがき
索引(人名・事項)