変容する親密圏/公共圏7
東アジアの労働市場と社会階層
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-87698-379-7 C3336
奥付の初版発行年月:2014年05月 / 発売日:2014年05月下旬
世界の多くの諸地域が産業化を遂げた現在も,社会の不平等は偏在している。冷戦の終焉と社会主義の崩壊を経て,その原因を解明するための学術研究が再び求められている。性別分業や家族制度のあり方と関係の深いジェンダーに注目し,欧米諸国に限らず東アジア地域を含めた包括的な国際比較を行い,労働市場と社会階層の特徴を析出する。
太郎丸 博(タロウマル ヒロシ)
京都大学大学院文学研究科准教授
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程退学。専攻:社会階層論。
主な著作:『若年非正規雇用の社会学』(大阪大学出版会,2009年),「社会階層論と若年非正規雇用」(直井優・藤田英典編『講座社会学13階層』東京大学出版会,2008年),「正規/非正規雇用の賃金格差要因―日・韓・台の比較から」(落合恵美子編『親密圏と公共圏の再編成―アジア近代からの問い』(「変容する親密圏/公共圏」)京都大学学術出版会,2013年)。
目次
まえがき [太郎丸博]
第1章 東アジアの労働市場と社会階層―研究の背景と枠組み [太郎丸 博]
1 東アジアの社会階層
2 労働市場と社会階層の国際比較と東アジア
2―1. 世代間移動の国際比較
2―2. ジェンダー・家族・労働市場
2―3. 社会制度と労働市場・社会階層
2―4. 近代化のスピードとタイミング,そして脱工業化
2―5. 東アジア内比較社会学
3 東アジアの労働市場と社会階層の概観
3―1. 高等教育
3―2. 労働力率
3―3. 失業率
3―4. 産業構造
4 本書の構成 20
4―1. 東アジアにおける労働市場の変容
4―2. 東アジアのジェンダーと社会階層
第2章 グローバル化のなかでの失業リスクの変容とジェンダー差
―日本と台湾の比較からみる制度要因の影響 [阪口祐介]
1 問題:制度と失業リスクのジェンダー差
2 日本と台湾の制度比較
2―1. 日本
2―2. 台湾
2―3. 仮説:グローバル化と失業リスクの変容
3 データと変数
3―1. データ
3―2. 変数
4 分析:失業リスクの日台比較
4―1. 非自発的離転職リスクの水準の比較
4―2. 日本:拡大する失業リスクのジェンダー差
4―3. 日本:非正規拡大の失業リスクへの影響
4―4. 台湾:拡大しない失業リスクのジェンダー差
5 議論:失業リスクのジェンダー差を生む制度要因
第3章 韓国における経済危機,労働市場再編成と職業移動:1998―2008 [ファン・ハナム](山下嗣太・太郎丸博訳)
1 労働市場再編成と職業移動についての理論的視点
2 分析戦略
2―1.構造的効果(産業,企業規模,労働組合の状況)
2―2.個人レベルの効果(年齢,性別,教育,職業)
3 分析のデータと方法
3―1. データと変数
3―2. 分析方法
4 結果と議論
4―1. 集合的分析 :労働市場の再編成と労働移動
4―2. 個人レベルの動的分析
5 結論
第4章 女性のライフコースと就業パターン ―変化する日本型雇用システム [大和礼子]
1 問題の所在
2 経済のグローバル化は女性の就業をどう変えたか?―欧米における研究
3 東アジアの資本主義社会(日本・台湾・韓国)における比較研究
3―1. 日本・台湾・韓国の共通点と相違点
3―2. 日本・台湾・韓国における雇用システムの違い
3―3. 女性の就業を分析するために必要な視点
3―4. 女性の結婚・出産時の就業に注目した東アジア資本主義社会における比較研究
4 問いと仮説:日本型雇用システムの変化は女性の就業にどのような影響を与えたか?
5 データと方法
6 分析結果
6―1. 結婚・出産年齢の上昇と非正規雇用の増加
6―2. 1995年と2005年の比較(モデル1の結果から)
6―3. 非正規雇用の影響(モデル2の結果から)
6―4. 女性の就業支援策の効果(モデル3の結果から)
7 結論と含意:日本型雇用システムの変化が女性のライフコースと社会階層的地位に与えた影響
7―1. 結論
7―2. 女性の就業とライフコースへの含意
第5章 積極的労働市場政策は親密性の自殺予防効果を高めるか
―1980年から2007年における日韓を含むOECD27ヵ国の動学的パネル分析 [柴田 悠]
1 先行研究―自殺率を下げる社会政策は何か
2 目的―「公共圏と親密圏の相互作用」に着目する
3 仮説―積極的労働市場政策と親密性の相互作用
3―1. データと方法
3―2. 結果と予測値
4 解釈―冒頭の問いへの答え
5 結論―積極的労働市場政策は親密性の自殺予防効果を高める
第6章 性別職域分離は地域によってどう異なるか
―日本における分析 [織田暁子・大和礼子・太郎丸博]
1 はじめに
2 性別職域分離についての研究枠組み
2―1. 仕事のどの側面に注目するか
2―2. どの単位について分析するか
2―3. 性別分離をどのようにとらえ測定するか
2―4. 分離の規定要因として何に注目するか
3 分析:ジェンダー平等主義と脱工業化の指標を用いて
3―1. 分析枠組み
3―2. 仮説
3―3. 分析モデル
3―4. データ
3―5. 変数
4 分析結果:都道府県の性別職域分離
4―1. データの分布
4―2. マルチレベル・モデル
5 議論と課題:日本における性別職域分離の特徴
5―1. 分析結果の考察
5―2. 今後の課題
第7章 自営業の継続と安定化 ―家族,ジェンダー,労働市場の視点から [竹ノ下弘久]
1 ジェンダーと自営業
2 女性・男性自営業における各国間の違い
2―1. 労働市場構造と自営業
2―2. 労働市場における女性の雇用
2―3. ジェンダー・家族構造・自営業
3 仮説
4 データ・分析方法・変数
5 記述統計
6 多変量解析
7 結論
第8章 物質主義はどこで生き残っているのか ―東アジアにおける階層帰属意識
[チャン・チンフェン,ジ・キハ,髙松里江,キム・ヨンミ](山本耕平訳)
1 序論
2 文献のレビュー:社会階層のとらえ方
3 経済資本と文化資本
4 比較研究というアプローチ
4―1. 国家間比較
4―2. 東アジア社会
5 データと変数
5―1. データ
5―2. 変数
6 調査結果
6―1. 東アジア社会における社会的帰属意識の分布
7 考察:東アジアにおける社会的帰属意識の特徴
索 引
執筆・翻訳者紹介