変容する親密圏/公共圏8
セクシュアリティの戦後史
価格:4,400円 (消費税:400円)
ISBN978-4-87698-392-6 C3336
奥付の初版発行年月:2014年07月 / 発売日:2014年07月下旬
恋愛や性愛はどのようなものとして表象/実践されたのか?戦後のセクシュアリティ規範を問い、親密性の内実を歴史的に解明する。
小山 静子(コヤマ シズコ)
953年生まれ,京都大学大学院人間・環境学研究科教授
主要著書:『家庭の生成と女性の国民化』(勁草書房,1999年),『子どもたちの近代』(吉川弘文館,2002年),共編著『戦後公教育の成立』(世織書房,2005年),共編著『「育つ・学ぶ」の社会史―「自叙伝」から』(藤原書店,2008年),『戦後教育のジェンダー秩序』(勁草書房,2009年),編著『子ども・家族と教育』(日本図書センター,2013年),Ryōsai Kenbo: The Educational Ideal of ‘Good Wife, Wise Mother’ in Modern Japan(Brill, Leiden, 2013)
赤枝 香奈子(アカエダ カナコ)
大谷大学文学部講師
主要論文・著書:「同性婚・パートナーシップ制度」(井上眞理子編『家族社会学を学ぶ人のために』世界思想社,2010年),『近代日本における女同士の親密な関係』(角川学芸出版,2011年)
今田 絵里香(イマダ エリカ)
1975年生まれ,成蹊大学文学部講師
主要論文・著書:『「少女」の社会史』(勁草書房,2007年),「女子高校における女性性利用型成功志向」(木村涼子・古久保さくら編『ジェンダーで考える教育の現在―フェミニズム教育学をめざして』解放出版社,2008年),「京都大学の女性ポストドクター」(京都大学女性研究者支援センター編『京都大学 男女共同参画への挑戦』明石書店,2008年),「戦後日本の『少女の友』『女学生の友』における異性愛文化の導入とその論理―小説と読者通信欄の分析」(『大阪国際児童文学館紀要』24,2011年),「﹁少女﹂になる―少女雑誌における読むこと/見ること/書くことをめぐって」(『ユリイカ』45(16),2013年)
目次
序章 問題関心 [小山静子]
Ⅰ 純潔と異性愛
第1章 純潔教育の登場 ―男女共学と男女交際 [小山静子]
はじめに
1 私娼問題から男女交際・男女共学へ
2 『男女の交際と礼儀』の刊行
3 子どもの「問題」状況
4 純潔教育のゆくえ
おわりに
第2章 純潔教育委員会の起源とGHQ [斎藤 光]
はじめに
1 「次官会議決定」と文部省
2 GHQと純潔教育
1.街娼発生防止対策としての純潔教育の由来
2.文部省と民間情報教育局の交渉過程
3 通達「純潔教育の実施について」の意味
おわりに
第3章 異性愛文化としての少女雑誌文化の誕生 [今田絵里香]
はじめに
1 職業獲得から男女交際へ
2 少女たちの戸惑い/少年たちの無関心
3 編集者・執筆者による「明るい男女交際」の創出
4 男女交際におけるジェンダーの非対称性
おわりに
第4章 雑誌『平凡』に描かれた純潔 [中山良子]
はじめに
1 青少年が観る映画の問題化
1.「純潔の危機」が描かれる映画・小説・読者相談
2.「性的」映画への批判がつくる,青少年のセクシュアリティ規範
2 純潔について語る読者
1.農村に焦点をあてた座談会と純潔
2.太陽族映画の批判記事
3.純潔という価値観
3 『純潔のために』の登場
1.異例の冊子
2.売春防止法の成立と『純潔のために』
おわりに
第5章 「感じさせられる女」と「感じさせる男」 ―セクシュアリティの二枚舌構造の成立 [田中亜以子]
はじめに
1 男性知識人主導の「平等」
2 夫婦雑誌の流行
3 『夫婦生活』の世界
4 『主婦の友』の世界
おわりに―セクシュアリティの二枚舌構造とは何か?
Ⅱ 同性愛という概念
第6章 戦後日本における「レズビアン」カテゴリーの定着 [赤枝香奈子]
はじめに
1 女性同性愛者の表象
1.先行研究
2.「レスボス愛」
2 戦前から戦後へ―1940年代後半の雑誌記事
1.戦前との接合―エスのポルノ化
2.西洋との接合―「サッフィスト」と「トリバード」
3 「レスビアン」の登場―1950年代
1.キンゼイ報告の影響
2.「レスビアン」と「レズビアン」
4 日本の事例との結びつき―1960年代
1.「エス」と「レス」
2.「歌劇」「男役」との結びつき
3.レズビアン・バーの流行―ゲイ・バーとの結びつき
4.「フリーセックス」ブームの影響
おわりに
第7章 パンパン,レズビアン,女の共同体 ―女性映画としての『女ばかりの夜』(1961) [菅野優香]
はじめに
1 レズビアン表象
2 女性共同体
1.映画に描かれる女性共同体
2.映画を描く女性共同体
3 女性映画
おわりに
第8章 戦後日本における「ホモ人口」の成立と「ホモ」の脅威化 [石田 仁]
はじめに―本章の目的
1 群れる―1945年~1960年代
1.戦前と戦後の不連続性
2.群れて増える
3.“新語”の「ホモ」
4.「本当のホモ」
2 「ホモ人口」の成立―1970年代前半
1.都市に集まる
2.エビデンス
3.拡散のモチーフ
3 影響―1970年代後半~1980年代
1.Save our ……
2.漠とした不安
3.感染者数
おわりに―本章の意義
第9章 1970年代における男性同性愛者と異性婚 ―『薔薇族』の読者投稿から [前川直哉]
はじめに
1 異性婚と同性愛の「両立」
1.異性と結婚した動機,結婚を希望する理由
2.求められた結婚のかたち① 妻に隠れて同性と交際
3.女性からの反論
2 「理解ある妻」の物語
1.求められた結婚のかたち② 告白と理解ある妻
2.告白の失敗
3 女性同性愛者との結婚
1.求められた結婚のかたち③ 女性同性愛者との結婚
2.「薔薇族と百合族のお見合い会」
3.「お見合い会」の失敗
おわりに
Ⅲ メディアにおける性愛の表象
第10章 Kissのある日常 ―『週刊マーガレット』におけるキスシーンの定着過程 [日高利泰]
はじめに
1 キスシーンはいかにして可能か
1.少女雑誌の中の「性」
2.『週刊マーガレット』におけるキスシーンの登場
2 キスシーンの定着・展開
1.キスシーンの類型化
2.用例の拡大と意味づけの変化
3.『りぼん』におけるキスシーン
おわりに
第11章 1970~1990年代の『セブンティーン』にみる女子中高生の性愛表象の変容 [桑原桃音]
はじめに
1 ドラマ化される「ある少女」の性愛体験談 ―創刊年1969年~1979年
2 コメディー化される男目線のエッチ談義 ―1982年~1987年
3 ドキュメント化される読者みんなの性愛報告 ―1987年~1994年
おわりに
第12章 楽しむものとしての“性”はいかにしてもたらされたか
―1970~1980年代の『少女コミック』の場合 [トジラカーン・マシマ]
はじめに
1 1970年代の女性向けマンガにおける「性」
1.はじめてのベッドシーン
2.1970年代の『少女コミック』における性描写
2 読者投稿コーナーで語られる「性」:Cがしたい!
3 マンガで描かれる「性」:日常の中のちょっとしたエロから愛撫まで
おわりに
第13章 マンガにおける農村の「性」とジェンダー ―「むら」のファンタジー [一宮真佐子]
はじめに―農村という空間のイメージ
1 農村マンガにおける性描写
1.分析対象と視点―農村マンガについて
2.農村マンガにおける性描写のパターン
3.「ホラー・オカルト・ミステリー」パターン
4.「農村の不自由」を描く作品群
2 農村のセクシュアル・マイノリティ
1.マンガに登場したセクシュアル・マイノリティたち
2.村で生きるか,出ていくか
おわりに―「農村の性」に残り続けるジェンダー規範
第14章 女性ジャンルに表れる‘恋愛’と韓国女性 ―テレビドラマを通じて [朴 珍姫]
はじめに
1 韓国女性にとっての恋愛
2 韓国テレビドラマの‘恋愛’―メロドラマを通じて
1.韓国ドラマが‘恋愛’を描くまで
2.家族と‘恋愛’
3.セクシュアリティと‘恋愛’
おわりに
あとがき [赤枝香奈子・今田絵里香]
索 引
執筆者紹介