枯死木の中の生物多様性
価格:7,260円 (消費税:660円)
ISBN978-4-87698-475-6 C3045
奥付の初版発行年月:2014年03月 / 発売日:2014年03月中旬
枯死木に依存する真菌類・昆虫・脊椎動物の種や機能の多様性に関する豊富な事例を紹介し,木材の持ち出しや生物に配慮しない森林管理による今日の森林の危機的状況に鑑み,森林や農地,都市公園において生物多様性を保全するための管理方法を提案する.木材に生息する生物の自然史や保全の必要性についてまとめた初めての本.
Jogeir N. Stokland(ストックランド)
ノルウェー森林景観研究所の研究員であるとともにオスロ大学の准教授でもあり,20 年以上にわたり森林の生物多様性や枯死木の動態,枯死木に生息する生物の種多様性について研究を行ってきている.昆虫学と菌学が専門.
Juha Siitonen(シートネン)
フィンランド森林研究所の研究員であり,20 年以上にわたり森林管理が枯死木や枯死木依存性の生物(甲虫や多孔菌)に与える影響を研究している.フィンランド甲虫研究グループの一員でもあり,フィンランドの動物相に関するレッドリストの作成にも関わっている.
Bengt Gunnar Jonsson(ヨンソン)
スウェーデン中部大学の植物生態学教授であり,森林の歴史や動態が森林の生物多様性に果たす役割について研究している.スウェーデンの環境保護庁や森林庁が運営する複数の自然保護プロジェクトで活発な役割を果たしている.
深澤 遊(フカサワ ユウ)
東北大学農学研究科助教
専門:森林微生物生態学
著書:『微生物の生態学』(分担執筆,共立出版,2011).『Wood: types, properties and uses』(分担執筆,Nova science publishers,2011). 『教養としての森林学』(分担執筆,文永堂出版,2014)
山下 聡(ヤマシタ サトシ)
専門:森林保護学
著書:『微生物生態学』(分担執筆,共立出版,2011),『菌類の事典』(分担執筆,朝倉書店,2013).
目次
本書および著者について
序 文
日本語版への序文
1 章 はじめに
1.1 枯死木の中の生物多様性
1.2 枯死木依存性の種:概念の定義
1.3 この本の構成
1.4 関係する学問分野
2 章 木質の分解
2.1 木質の構造
2.2 酵素による材分解
2.3 真菌類による分解と腐朽型
2.4 細菌による木質の分解
2.5 動物による木質の分解
2.6 生態学的な観点
3 章 枯死木依存性の食物網
3.1 糖依存菌と木材腐朽菌
3.2 腐植食者
3.3 菌食者
3.4 腐肉食者
3.5 捕食者
3.6 捕食性真菌
3.7 寄生者
3.8 菌寄生菌
3.9 菌根菌
3.10 菌生菌
3.11 生態学的な観点
4 章 枯死木をめぐる栄養を介さない関係
4.1 脊椎動物
4.2 無脊椎動物
4.3 材上性種:表面での生活者
5 章 樹木との関係
5.1 針葉樹と広葉樹
5.2 樹木の多様性と系統
5.3 針葉樹と広葉樹の木質の違い
5.4 樹木の防御システム
5.5 樹種選好性と腐朽
5.6 樹種との関係に関する仮説
6 章 枯死要因と分解に伴う生物相の遷移
6.1 枯死要因と枯死木の質
6.2 分解経路
6.3 変化する資源としての腐朽木
6.4 真菌類の遷移
6.5 無脊椎動物の遷移
6.6 コケや地衣類の遷移
6.7 分解に伴う生物相遷移の概要
7 章 微小生息場所
7.1 生木の傷と樹液
7.2 樹洞
7.3 枯死した枝や根
7.4 樹皮・辺材・心材
7.5 真菌類の子実体
7.6 枯死木の表面
8 章 枯死木のサイズ
8.1 枯死木の直径に対する選好性をもたらす要因
8.2 枯死木の直径に対する選好性
8.3 枯死木の直径と種多様性・種組成のパターン
8.4 種多様性に対する大径木の重要性
9 章 周辺環境
9.1 無機的な環境
9.2 地上部の環境
9.3 埋もれ木
9.4 水没木
9.5 樹木の生長速度と材密度,二次代謝物
10 章 枯死木依存性生物の進化
10.1 木本植物の進化
10.2 木質分解者の起源
10.3 枯死木依存性の無脊椎動物の起源と進化
10.4 機能的な役割の進化
10.5 展望
11 章 枯死木依存性の生物の種多様性
11.1 北欧における枯死木依存性種の多様性
11.2 その他の枯死木依存性の分類群
11.3 なぜ多くの枯死木依存性生物がいるのか?
11.4 枯死木依存性種の世界的な多様性
12 章 天然林の動態
12.1 枯死の時空間的変異
12.2 林分置換動態
12.3 連続被覆動態
12.4 渓流と河川の中の枯死木
12.5 天然林の枯死木
13 章 枯死木と持続的な森林管理
13.1 管理された森林における枯死木の量や質の動態
13.2 森林の管理体制
13.3 持続的な森林管理:背景
13.4 撹乱のタイプと森林管理体制
13.5 生木や枯死木を残す
13.6 保護区の設定
13.7 鍵となる生息場所
13.8 生息場所の復元
13.9 枯死木管理
13.10 保全目標と管理基準
14 章 個体群動態と進化戦略
14.1 生活史戦略
14.2 個体群動態に影響する要因
14.3 メタ個体群動態
14.4 連続性の役割
15 章 絶滅の恐れのある枯死木依存性種
15.1 枯死木依存'性種の滅少を示す歴史的証拠
15.2 現在の減少の要因
15.3 枯死木の減少が枯死木依存性生物に与える影響
15.4 枯死木依存性種の絶滅の危急性を判定する
15.5 調査方法と自然環境保全の評価
16 章 農耕地や都市域の枯死木
16.1 枯死木依存性種の生息場所としての人工的環境
16.2 最終氷期以降のヨーロッパの森林
16.3 ヨーロッパにおける有史以前の人類による森林改変
16.4 歴史的な森林や公園
16.5 都市林や森林化した荒廃地
16.6 人工的環境における枯死木の保全管理
17 章 枯死木依存性生物の多様性の価値と未来
17.1 枯死木依存性生物の多様性の価値
17.2 悪い傾向
17.3 研究の課題
17.4 まとめ:知識の統合と普及
訳者あとがき
引用文献
索 引