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周縁的ナショナル・アイデンティティと植民地イデオロギー亜寒帯植民地樺太の移民社会形成

プリミエ・コレクション46
亜寒帯植民地樺太の移民社会形成 周縁的ナショナル・アイデンティティと植民地イデオロギー

A5判 302ページ 上製
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-87698-482-4 C3321
奥付の初版発行年月:2014年03月 / 発売日:2014年04月上旬

内容紹介

帝国日本唯一の亜寒帯植民地「樺太」。米食をアイデンティティとした日本で,米が出来ない土地。この地に移住した人々は,自らを「日本」とし て「日本人」としてどう位置付けようとしたのか。拓殖の現場としての移民社会,拓殖を指導した研究機関,そして植民地官僚の言説の詳細な分析を通 して,拓殖の実態とその特殊なアイデンティティに農業社会史の観点から迫る。

著者プロフィール

中山 大将(ナカヤマ タイショウ)

北海道大学スラブ研究センター所属,日本学術振興会特別研究員PD。京都大学博士(農学)。専門は農業社会史,歴史社会学,境界研究。1980年北海道生まれ,札幌開成高等学校卒業(2000年3月),京都大学農学部食料・環境経済学科入学(2001年4月),京都大学大学院農学研究科生物資源経済学専攻博士課程修了(2010年3月),京都大学大学院文学研究科GCOE研究員を経て現職(2012年4月より)。

主な研究業績
『植民地樺太の農業拓殖および移民社会における特殊周縁的ナショナル・アイデンティティの研究』京都大学大学院農学研究科博士学位論文,2010年。「植民地樺太の農林資源開発と樺太の農学―樺太庁中央試験所の技術と思想」野田公夫編『日本帝国圏の農林資源開発―「資源化」と総力戦体制の東アジア』京都大学学術出版会,2013年。「サハリン残留日本人―樺太・サハリンからみる東アジアの国民帝国と国民国家そして家族」 蘭信三編著『帝国以後の人の移動―ポストコロニアルとグローバリズムの交錯点』勉誠出版,2013年。「樺太への人の移動」吉原和男ほか編『人の移動事典―日本からアジア へ・アジアから日本へ』丸善出版,2013年。 その他の研究業績・活動については,http://nakayamataisho.wordpress.com/ に掲載。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

第 1 章 亜寒帯植民地樺太
1 国家史や帝国主義史から疎外される樺太
 1) サハリン島と樺太
 2) 日本戦後歴史学と様太
2 樺太を歴史学的に位置づける
 1) 国民帝国論から見た樺太
 2) 「植民地」をいかに再定義すべきか
 3) 多数エスニック社会という新たな視点からサハリン島近現代史を見る
 4) 移民社会としての樺太
 5) 樺太移民社会の特質をとらえるために
 6) ブローデル歴史学「長期持続」としての「亜寒帯」
3 歴史社会学的分析概念の再検討
 1) ナショナル・アイデンテイティ
 2) 文化
 3) 植民地エリート
 4) 国民国家・日本と米
 5) 総力戦・イデオロギー
4 亜寒帯植民地樺太の移民社会を研究するための理論的枠組みと課題
 1) 論点の整理
 2) 本書の構成

第 2 章 樺太農業への眼差し
1 樺太の産業と移民社会
 1) なぜ農業に注目するのか
 2) サハリン島の近代史
 3) 樺太の人口と産業
2 北大植民学派による樺太農業の同時代的観察
 1) 北大植民学派と機太
 2) 中島九郎の同時代的観察
 3) 高倉新一郎の同時代的観察と歴史的叙述
3 近年の樺太農業史研究の到達点
 1) 1930 年代の樺太農業
 2) 1930 年代末以降の樺太農業
4 検証されるべき樺太農業拓殖の諸側面白

第 3 章 樺太の農業拓殖と村落形成の実像
1 樺太農業と森林資源開発
 1) 樺太の農業移民と村落
 2) 日本帝国圏への日本人農業移民
 3) 非典型的農業移民と移民兼業世帯
 4) 樺太の森林資源開発と労働力
2 富内岸浮——模範農村
 1) 資料と村落の沿革
 2) 入殖者間の社会的関係
 3) 富内岸揮の経済的構造
3 楠山農耕地——林内殖民地
 1) 資料と村落の沿革
 2) 村落内の社会的関係
 3) 楠山農耕地の経済的性格
 4) 林業労働者の定住化
4 農業拓殖プランから乖離する樺太“農家"群

第 4 章 視覚化する拓殖イデオロギー
1 近代天皇制と農政
 1)「昭和の大礼」と篤農家顕彰事業
 2) 近代天皇制における「巡幸啓」と「式典」
 3) 内地農政と近代天皇制
 4) 植民地農政と近代天皇制
2 行啓から大礼へ
 1) 樺太と皇族
 2) 昭和の大礼の中の植民地
3 樺太篤農家顕彰事業
 1) 様太農政における「篤農家」
 2) 機太農政と近代天皇制
4 成功者から功労者へ——拓殖イデオロギーの視覚

第 5 章 形成される周縁的ナショナル・アイデンティティ
1 小農的植民主
 1) 樺太他民地イデオロギーとしての小農的植民主義と樺太文化論
 2) 樺太農政の方針
 3) 樺太農業論争
 4) 寒帯農業論
2 樺太文化論
 1) 移民第二世代の登場
 2) 豊原中学校校長・上田光曦による国家主義的樺太文化論
3 樺太文化振興会
 1) 樺太文化娠興会の設立
 2) 豊原中学校教諭・市川誠一の「亜寒帯文化建設論」
 3) 雑誌『樺太』記者・荒澤勝太郎と移民第二世代の精神的欲求
4 樺太文化論と周縁的ナショナル・アイデンティティ

第 6 章 東亜北方開発展覧会の亜寒帯主義と北進主義
1 樺太庁中央試験所の沿革と研究
 1) 亜寒帯に向き合う農学
 2) 樺太庁中央試験所の沿革と背景
 3) 中試の各部門の試験研究と刊行物
 4) 樺太庁中央試験所の技術
2 樺太移民社会の中の樺太庁中央試験所
 1) メディアの中の中試
 2) 「科学」と「文化」——中試スタッフと樺太文化論
 3) 東亜北方開発展覧会
 4) 樺太文化論との同調
3 拓殖から総力戦へ
 1) 中試の新設部門
 2) 樺太庁博物館叢書
 3) 技術と人事
 4) 孤島化と内地編入
 5) 針葉泊
 6) 総力戦体制イデオローグ・菅原道太郎
4 農学と植民地イデオロギー

第 7 章 樺太米食撤廃論
1 植民論的米食撤廃論
 1) 帝国の周縁と文化ナショナル・アイデンティティの疎外
 2) 農政から見た農業移民の米食問題
 3) 主食転換とナショナル・アイデンティティの疎外
2 文化論的米食撤廃論
 1) 帝国の食糧事情の悪化と樺太
 2) 「亜寒帯」——特殊樺太的な政治ナショナル・アイデンティティの源泉
3 中央の代理人か,住民の代弁者か
 1) 帝国エリートと植民地エリート
 2) 樺太移民社会の米食の実態
4 遊離する二つの樺太——植民地エリートと植民地住民

第 8 章 亜寒帯植民地樺太における周縁的ナショナル・アイデンテイテイの軌跡

引用文献
あとがき
索引


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