国際機関の政治経済学
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-87698-499-2 C3033
奥付の初版発行年月:2014年08月 / 発売日:2014年08月上旬
資本による自由競争が国際的な経済活動を推進している今日にあって,実は,国際機関の役割は不可欠である。むしろ,国家や資本と入れ子のよう重層して 活動しながら,途上国市場の創出や世界的な市場統合を推進している。表面的には見えにくい国際機関の組織構造や特性に着目することで,国際機関による市場形成の実情をあぶり出す。
池島 祥文(イケジマ ヨシフミ)
横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授。
専攻:国際開発政策論,地域経済学,農業経済学。
京都大学博士(経済学)。京都大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得満期退学,横浜国立大学経済学部を経て現職。
主要な論文として,「大都市におけるフードデザート問題と都市農業」『農業・農協問題研究』53,2014年のほか,「地域産業政策の展開とその到達点」『地域経済学研究』27,2014年(共著),「国際社会のなかの東日本大震災と復興」田代洋一・岡田知弘編『復興の息吹き:人間の復興・農林漁業の再生』農山村漁村文化協会,2012年,“Commodification of Local Resources and Its Paradox: A Case of Traditional Vegetables in Kyoto”, Yokohama Journal of Social Sciences 16(4・5), 2012(共著),など。
目次
序章 国際機関研究の視角と方法
第1節 現代社会と国際機関——本書の課題
1.グローバル化による非国家主体の台頭
2.アクターから捉え直す国際開発政策
第2節 政治経済的な〈主体〉としての国際機関——分析の視角
1.国際機関による市場形成
2.国際機関の内面的特質
3.国際機関による権力行使
4.政策手段としての規制措置
第3節 本書の構成
第1章 国際機関研究の系譜
第1節 食料・農業問題としての系譜
1.グローバル・イシューとしての食料・農業問題
2.飢餓と食料・農業システム
3.アグリビジネスの展開と「資本による食料・農業の包摂」
4.現代のフードレジーム
第2節 開発政策としての系譜
1.グローバル・ガバナンスと国際機関
2.経済社会分野における国際機関
3.国際機関による途上国開発
第1章のまとめ
第2章 国際機関の政治経済学
第1節 国際機関の法理論的分析
1.国際機関の法的定義とその機能
2.グローバル化における秩序形成
第2節 伝統的国際政治理論と批判的国際政治経済論
1.国際政治理論の諸潮流
2.批判的国際政治経済論による理論的再構築へ
第3節 国際機関,国家,資本の関係性
1.秩序形成における資本の台頭
2.国際機関,国家,資本をめぐる再帰的で重層的な相互関係
第2章のまとめ
第3章 国際機関の「普遍性」と市場形成
第1節 空間的階層と普遍性
1.自由貿易体制の中の国際機関
2.国際機関と空間的階層
3.普遍性の獲得
第2節 国際通貨制度の整合化
1.IMFの設立
2.IMFの役割の変遷
3.国際通貨制度の整合化過程
第3節 規格の整合化
1.技術的国際機関の活動
2.通商拡大と国家主権
3.標準化による市場競争
第4節 貿易制度の整合化
1.GATTからWTOへ
2.均一的市場の形成
第3章のまとめ
第4章 途上国農業開発における官民協同事業の導入
第1節 ICPの政策形成過程
1.FAOの開発機関化と途上国農業
2.ICPの目的と組織構造
3.ICPの事業展開
第2節 アグリビジネスとの協同とプログラムの変容
1.プログラム初期の農業開発
2.企業主導型プロジェクトの発展と国連世界食料会議
3.NIEOの樹立とFAOの転回
第3節 農薬問題とICPの転進
1.「緑の革命」と農薬問題
2.FAOの組織的矛盾
第4章のまとめ
第5章 開発援助の財政構造と国際機関の「自律性」
第1節 国際機関の自律性
1.国際財政と国際機関
2.国際機関の意思決定とその形成要素
3.相対的自律性と再帰的重層性
第2節 開発援助政策と国連開発援助の展開
1.開発援助政策の動向
2.UNDPの設立とその展開
3.国連開発援助の変容と自律性の相対化
第3節 国連開発援助における自律性の追求と官民パートナーシップ
1.FAOの財源構造
2.外部環境の変化と自律性の追求
3.FAOにおける官民パートナーシップとその消極性
第5章のまとめ
第6章 規制から活用へ——国際機関と多国籍企業
第1節 海外直接投資の動向と市場としての途上国
1.資本の途上国進出とその歴史的展開
2.海外直接投資の進展とその動向
3.インフラ整備に対する民間資本参入
第2節 世界銀行による民間部門開発
1.民間部門開発行動プログラムとその展開
2.インフラ部門民営化の動向
3.民間部門開発と途上国開発
第3節 国連による多国籍企業行動規範の策定とその帰結
1.国連多国籍企業センターの設立
2.行動規範をめぐる対立と多国籍企業センターの解体
第4節 多国籍企業規制をめぐる国連システムの変容
1.多国籍企業の規制から活用へ
2.パートナーシップ形成における共通項
第6章のまとめ
終章 グローバル・ガバナンス研究が拓く未来
第1節 国際機関,国家,資本による再帰的重層性——本書の総括
第2節 新しい世界秩序を探る試み——国際機関研究の課題と可能性
参考文献
あとがき
初出一覧
索引