東洋史研究叢刊之七十四
唐宋時代刑罰制度の研究
価格:7,700円 (消費税:700円)
ISBN978-4-87698-532-6 C3322
奥付の初版発行年月:2010年02月 / 発売日:2010年02月下旬
「減死一等の刑」として唐令以降死刑に次ぐ重刑と位置づけられる一方で「礼教の刑罰」とも呼びうる流刑は、本来の刑罰の理念と現実の執行との乖離から様々な困難に直面することになる。本書では、2006年に公開された「明鈔本天聖令」条文に基づいてこの流刑に焦点をあて、唐宋時代における刑罰制度の特質を明らかにする。
辻 正博(ツジ マサヒロ)
京都大学大学院人間・環境学研究科准教授.
1961年 滋賀県生まれ.
1984年 京都大学文学部史学科卒業.
1987年〜88年 中国政府奨学金留学生として北京大学歴史学系に留学.
1988年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程(東洋史学専攻)中途退学.
1988年 京都大学人文科学研究所助手.
1992年 滋賀医科大学医学部助教授.
1997〜98年 文部省在外研究員としてロンドン大学東洋アフリカ学院に留学.
2007年より現職.
主要論著
「魏晋南北朝時代の聴訟と録囚」(『法制史研究』55,2006年),『新版エ 中国の歴史(上)』(共著,昭和堂,2009年),『草創期の敦煌学』(共著,知泉書館,2002年)ほか.
目次
序 論 研究の視角と本書の構成
凡 例
前篇 唐代流刑考
第一章 流刑の淵源と理念
はじめに
第一節 秦・漢初の遷刑
第二節 漢・魏晋南朝の「徙遷刑」
一 漢代の「徙遷刑」
二 魏晋南朝における展開
第三節 流刑の成立
一 北魏・北斉の流刑
二 北周・隋の流刑
小 結 流刑の理念
第二章 唐律の流刑制度
はじめに
第一節 律令に規定された流刑の刑罰内容
第二節 流刑案件の裁判手続き
一 通常の手続き
二 「発日勅」による流刑判決
第三節 流刑の執行
一 配流地の確定と州への通知
二 流人の護送
第四節 隋制との比較
第五節 配流の距離の起点
一 上代の追放刑と唐律の流刑
二 流刑と移郷似て非なるもの
三 量移と流刑
第六節 配所における流人の扱い
小 結
第三章 流刑の理念と現実
はじめに
第一節 律の理念と現実との乖離
第二節 律外の流刑配流刑
第三節 恩赦による流人の放還
一 沈家本説の検討
二 恩赦による流人の放還
三 流人放還文書
第四節 流人の放還規定流刑の有期刑化が意味するもの
一 律令規定における流人放還の可能性
二 流人の放還規定
小 結
後篇 宋代編配考
第四章 北宋時代の「配隷」
はじめに
第一節 『宋史』刑法志の配隷記事『文献通考』刑考との比較
第二節 配役・配流・配軍『宋史』刑法志に見える北宋の「配隷」
一 配 役
二 配流と配軍
三 配軍をめぐる諸問題
小 結
第五章 宋代の流刑と配役
はじめに問題の所
第一節 滋賀説に対する検討
第二節 配役に関する令の条文
第三節 流刑に対する折杖法の適用事例
一 判決原案に見える事例
二 配役の執行事例
第四節 配役人が存在したことを示す事例
一 恩赦に見える徒役人・配役人
二 恩赦による配役人放免の事例
第五節 配役に実態とその変容
一 作 坊
二 廂 軍
三 八¥ 作¥ 司
小 結
第六章 宋代の配流刑と配軍刑
はじめに
第一節 唐代的残滓刺面を伴わない配流刑
第二節 罪人の赴闕と刺面配流刑
一 峻法の緩和と死刑案件の奏裁
二 京師に送られる罪人
三 刺面配流刑
四 沙門島への刺面配流
第三節 配軍刑
一 廂軍の成立特に牢城部隊について
二 居作から配軍刑へ窃盗法の改正
三 追放刑的要素の導入強盗法の改正
第四節 刺配刑の序列化
一 多様化する刺配刑
二 就配法(配軍画一法)
三 刺配刑の序列化
小 結
第七章 宋代の編管制度
はじめに
第一節 編管とは何か
一 「編管」の語義「収管」との対比から
二 編管の適用対象
三 編管は「流謫」か
四 居作の有無
五 刑期の問題
第二節 配流と編管
一 遠隔地への編管
二 配流と編管
小 結
結 論 唐宋時代の追放刑と労役刑
附篇第一 唐代貶官考
はじめに
第一節 刺 史
一 統計による概観
二 唐前期における刺史の位置づけ
三 唐後期における刺史への貶官
第二節 上 佐別駕・長史・司馬
第三節 司戸参軍と県尉
一 司戸参軍
二 県 尉
おわりに
(附)唐代貶官者一覧
附篇第二 天聖獄官令と宋初の司法制度
はじめに天聖令の編纂と「宋令」の位置づけ
第一節 天聖獄官令「宋令」の諸相いつの制度を記しているのか
一 単一の制度変更を反映した条文
二 複数の制度変更を反映した条文
三 唐令と全く同じ法意をもつ条文
第二節 天聖獄官令の成り立ちについて
一 天聖令の編纂方針
二 折杖法との関係
おわりに
主な引用資料一覧
中文概要
あとがき
図表一覧
索 引