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線虫学実験

線虫学実験

B5判 346ページ 並製
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-87698-538-8 C3045
奥付の初版発行年月:2014年09月 / 発売日:2014年09月下旬

内容紹介

線虫は、分子生物学・遺伝学のモデル生物として有名なC.エレガンス、松枯れの原因であるマツノザイセンチュウをはじめとして、基礎研究でも環境保全や医学・農学でも重要な生物である。近年の発展が著しい遺伝子解析など最先端の研究法まで取り入れた線虫の実験方法を、標本作りや分類法から生理・生態学的研究まで網羅する一冊。

著者プロフィール

水久保 隆之(ミズクボ タカユキ)

農業・食品産業技術総合研究機構・中央農業総合研究センター・病害虫研究領域・上席研究員,九州大学農学博士.日本線虫学会会長.
九州大学大学院農学研究科修士課程 修了.
主著
線虫の生物学(東京大学出版会,2003年,分担執筆),植物病理学(文永堂出版,2010年,分担執筆),ほか.

二井 一禎(フタイ カズヨシ)

京都大学・名誉教授,京都大学農学博士.
京都大学大学院農学研究科博士課程修了.
主著
森林微生物生態学(朝倉書店,2000年,共編・著),Pine Wilt Disease (Springer 社,2008年,共編・著),ほか.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

口 絵
線虫を研究するということ

第1部 線虫の分類・同定法

第1章 標本作製
 1. 釣り上げ法
 2. 熱殺法,固定および保存法
   2.1 線虫の熱殺法
   2.2 ホルムアルデヒドによる線虫の固定
   2.3 DESS 保存液の使用
   2.4 熱殺,固定,保存法の特徴と問題点
 3. グリセリン置換法
   3.1 緩慢法
   3.2 迅速法
   3.3 1バイアル法
   3.4 グリセリン置換試料の保管
 コラム:ホルマリン・グリセリン固定液と置換法
 4. ラクトフェノール置換法
 5. 封入法 ─ プレパラート標本の作製
   5.1 パラフィンリング封入法
   5.2 ソーンのセメントによる周封法
 6. 永久標本の管理
   6.1 ラベルの貼付
   6.2 線虫の永久プレパラート標本の保管
   6.3 研究証拠標本について
 7. 群集研究用集合標本
 8. ネコブセンチュウ ─ 会陰紋標本などの作製法
 9. シストセンチュウ ─ 陰門錐標本の作製法
 10. 走査型電子顕微鏡観察用標本の作製法
   10.1 線虫の分離と洗浄
   10.2 固定
   10.3 脱水と置換
   10.4 臨界点乾燥・凍結乾燥
   10.5 試料台への接着
   10.6 金属蒸着
   10.7 検鏡と写真撮影

第2章 分類・同定のための形態観察
 1. 採集法
   1.1 線虫の採集法
   1.2 土壌からの線虫抽出 ‐ ふるい分け法(ウェットシービング法)
   1.3 倒立フラスコ法
   1.4 根の線虫の回収
 コラム:昆虫嗜好性線虫の採集法
 2. 顕微鏡の使い方
   2.1 生物顕微鏡の基本設定
   2.2 対物レンズとコンデンサ
   2.3 フィルター
 コラム:線虫の分類体系
 3. 線虫のボディプラン
   3.1 線虫の形態
   3.2 線虫の目レベルの識別 ─ 食道と口腔の形態
 4. 線虫のその他の形態的特徴 ─ 分類・同定に有用な形質を中心に
   4.1 体の概形
   4.2 体表面:角皮に見られる形態的特徴
   4.3 口唇部
   4.4 食道関連構造:半月体・排泄口・神経環
   4.5 腸・直腸
   4.6 尾部
   4.7 雌性生殖器官
   4.8 雄性生殖器官:交接刺・導帯
   4.9 科・属・種の同定および分類・同定のための検索表の利用
 5. 線虫の形態測定法

第3章 分子生物学的分類・同定法
 1. 分類・同定のためのDNAデータの利用法
   1.1 系統樹の構築
   1.2 DNAバーコート
   1.3 データベースの利用
 2. 線虫からのDNA抽出法
   2.1 線虫1頭からのDNA抽出法
   2.2 ISOHAIR(アイソヘアー)によるDNA抽出法
   2.3 ISOIL(アイソイル)によるDNA抽出法
 3. 締固め及びビーズビーターによるDNA抽出法
   3.1 土壌の前処理
   3.2 締固め
   3.3 ボールミルによる粉砕・攪拌
   3.4 ワンダーブレンダーによる粉砕・攪拌
   3.5 土壌からのDNA抽出法
 4. PCR-RFLP法(及び種特異的プライマー)による同定法
   4.1 試薬の調整
   4.2 PCRの条件
   4.3 アガロース電気泳動(PCR産物の確認)
   4.4 RFLP
   4.5 解析および種の識別
 5. LAMP法を利用したマツ材線虫病診断キットによるマツノザイセンチュウの検出法
 6. リアルタイムPCRによる定量検出
   6.1 プライマーおよびプローブの準備
   6.2 PCRの手順と注意事項
 7. DNAシークエンシングによる同定法
   7.1 PCR産物の精製
   7.2 サイクルシークエンス反応
   7.3 DNAシークエンシング
   7.4 解析および種の推定

第2部 生理・生化学的研究法

第4章 実験材料線虫の入手法・培養法・保存法
 1. 線虫の入手法
   1.1 自分で系統を確立する場合
   1.2 線虫の分譲を依頼する場合
 2. 線虫無菌化法
   2.1 少量の植物寄生性線虫の簡易無菌化法
   2.2 大量の線虫の無菌化法
 3. 植物寄生性線虫の培養法
   3.1 ネコブセンチュウ
   3.2 シストセンチュウ
   3.3 ネグサレセンチュウ
   3.4 糸状菌による培養
 4. 昆虫寄生性線虫の培養・保存法
   4.1 シヘンチュウの培養・保存法
   4.2 昆虫病原性線虫の培養法と保存法
 5. 昆虫等便乗性線虫の培養・保存法
   5.1 マツノザイセンチュウ
   5.2 節足動物やカタツムリに便乗する線虫
 6. 非寄生性線虫の培養法 I─ 細菌食性線虫
   6.1 C. エレカ?ンスの培養法
   6.2 C. エレカ?ンスの保存法
 7. 非寄生性線虫の培養法 II ─ 糸状菌食性線虫の培養
 8. 線虫の凍結保存法
   8.1 植物寄生性線虫の凍結保存法
   8.2 スタイナーネマ属およひ?ヘテロラフ?テ?ィティス属昆虫病原性線虫の凍結保存法

第5章 行動解析実験法
 1. 植物寄生性線虫の行動解析
   1.1 宿主探索と摂食過程の観察
   1.2 線虫の走化性 ─ 誘引・忌避物質への反応
 2. 昆虫寄生性線虫の行動解析
   2.1 シヘンチュウ類
   2.2 昆虫病原性線虫の行動解析法
 3. 昆虫便乗性線虫の行動解析
   3.1 マツノサ?イセンチュウ
 4. 非寄生性線虫の行動解析
   4.1 細菌食性線虫の生殖行動解析法
   4.2 糸状菌食性線虫の行動解析法
 コラム:C. ジャポニカの宿主探索行動解析

第6章 植物と線虫の相互関係研究法 I
 1. 線虫レース検定法 (1) ─ ネコブセンチュウ
   1.1 ネコブセンチュウの国際レース
   1.2 ネコブセンチュウのサツマイモレース(SPレース)
 コラム:植物と線虫の相互関係研究
 2. 線虫レース検定法 (2) ─ シストセンチュウ
   2.1 ダイズシストセンチュウのレース
   2.2 ジャガイモシストセンチュウのレース
 3. 線虫のタンパク・遺伝子(核酸)実験法
   3.1 線虫タンcク質の抽出
   3.2 質量分析計を用いたタンブク質の網羅的同定法
   3.3 寄生性に関する線虫遺伝子の解析
 コラム:線虫のゲノム研究

第7章 線虫の環境耐性研究法
 1. 乾燥耐性実験法
   1.1 ニセネグサレセンチュウを用いた乾燥耐性実験法
   1.2 他の線虫の乾燥耐性評価法
 コラム:C. ジャポニカの乾燥耐性研究
 2. 無酸素条件・有機酸の影響評価法
   2.1 無酸素環境影響評価法
   2.2 有機酸の殺線虫活性調査法
 3. 線虫を用いた環境毒性学実験法
   3.1 寿命測定による毒性の評価法
   3.2 産仔数測定による毒性の評価法

第8章 線虫の化学的防除試験法
 1. 室内試験法
   1.1 薬液浸漬法
   1.2 密閉容器内土壌くん蒸法
 2. 圃場試験法
   2.1 土壌くん蒸剤
   2.2 粒剤・液剤

第9章 線虫の物理的防除試験法
 1. 熱を利用した防除試験法
   1.1 温湯浸漬
   1.2 熱水・蒸気・太陽熱による土壌消毒試験
 2. 土壌還元消毒法
   2.1 土壌還元消毒の圃場試験
   2.2 土壌還元消毒に関する室内試験

第3部 生態学的研究法

第10章 線虫の個体群生態学的研究法
 1. 土壌試料の採集から試料の定量・分離まで
   1.1 土壌採取器具
   1.2 採土するパターン
   1.3 採土する深さ
   1.4 土壌の状態
   1.5 採土後の運搬と保存
   1.6 コアの攪拌の影響
   1.7 分離段階の土壌定量基準
   1.8 サブサンプルの反復
 コラム:ジャガイモシストセンチュウのカップ検診法
 2. 線虫の分布と密度推定法
   2.1 線虫の水平分布
   2.2 圃場における標本抽出
   2.3 標本土壌から線虫を分離するためのサフ?サンフ?ルの抽出
 3. 土壌からの線虫分離法
   3.1 ヘ?ールマン法
   3.2 二層遠心浮遊法
   3.3 ふるい分け法と二層遠心浮遊法またはベールマン法との組み合わせ法
   3.4 チューブ法
   3.5 シストセンチュウの分離法
 4. 線虫感染組織切片の作製法
 5. 植物体内の線虫密度推定法
   5.1 植物組織内線虫の染め分け法
   5.2 根・植物体からの線虫分離法
   5.3 イネシンカ?レセンチュウ調査法
 コラム:イネとイネシンカ?レセンチュウの相互関係について
 6. 検疫を目的とした圃場サンプリング
 コラム:輸入植物検疫におけるサンプリング
 コラム:線虫の外来種

第11章 線虫の群集生態学研究法
 1. 線虫群集構造の指数化
   1.1 細菌食と糸状菌食との比(Nematode Channel Ratio, NCR)
   1.2 成熟度指数(Maturity Index, MI)
   1.3 農業生産管理や土壌生態学研究て?の使用を目指したその他の指数
 コラム:線虫群集指数を環境指標に用いた研究例
 2. DNA ヘ?ースの群集分析法
   2.1 線虫群集からの DNA 抽出
   2.2 PCR による標的遺伝子の増幅
   2.3 DGGE による標的遺伝子の分離
   2.4 ハ?ント?の切り出しによる分類群の推定
   2.5 サンフ?ル間比較のためのテ?ータ解析

第12章 植物と線虫の相互関係研究法 II
 1. 線虫による植物被害評価法
   1.1 ネコブセンチュウ被害評価法
   1.2 シストセンチュウ被害評価法
   1.3 ネグサレセンチュウ被害評価法
   1.4 ハガレセンチュウの被害評価法
   1.5 イネシンガレセンチュウ
   1.6 マツノザイセンチュウ被害評価法
 2. 対抗植物スクリーニング法
   2.1 室内試験法
   2.2 圃場試験法
 3. 抵抗性評価法
   3.1 室内検定法
   3.2 線虫抵抗性圃場試験法
 コラム:植物の線虫抵抗性遺伝子と抵抗性メカニス?ム

第13章 昆虫と線虫の相互関係研究法
 1. 昆虫寄生性線虫の生態関係研究法
   1.1 同定
   1.2 生活史の解明
   1.3 宿主への影響
   1.4 宿主行動の操作
 2. 昆虫便乗線虫の生態関係研究法
   2.1 研究材料の選択
   2.2 生態研究(野外)
   2.3 生態研究(室内)
 コラム:人工蛹室を用いた線虫便乗実験法
 3. 昆虫病原性線虫の生態関係研究法
   3.1 昆虫病原性線虫の室内殺虫試験法
   3.2 昆虫病原性線虫の野外土壌からの収集法
   3.3 昆虫病原性線虫を用いた害虫防除試験

第14章 微生物と線虫の相互関係研究法
 1. 天敵微生物分離のための土壌分画法
   1.1 ステップ1〈粘土および20μm以下の微生物の分画〉
   1.2 ステップ2〈10μm以下の微生物の回収〉
 2. 線虫天敵微生物の分離・同定・継代法
   2.1 寄生菌類検出用線虫の培養,卵寄生菌の分離
   2.2 内部寄生菌
   2.3 捕捉性菌
   2.4 パスツーリア
 3. 線虫天敵微生物の大量培養法
 4. 天敵微生物による線虫防除試験法
   4.1 卵寄生菌
   4.2 パスツーリア
 5. 菌食性線虫による植物病原糸状菌防除試験法
   5.1 アフェレンクス・アヴェネの採集・培養法
   5.2 アフェレンクス・アヴェネの大量生産
   5.3 線虫の保存法
   5.4 防除試験法
 6. 菌類子実体(きのこ)と線虫の生態関係調査法
   6.1 代表的なきのこ利用線虫
   6.2 野外採取子実体からの線虫の分離法
   6.3 伝播昆虫の解明
   6.4 生活史の解明
 コラム:オオハリセンチュウ個体群のウイルス媒介能評価
 コラム:トランスポゾンを用いた昆虫病原性線虫の共生細菌の研究法

APPENDIX 線虫を材料にした,「新しくて面白い」研究例
 1. セノラブディティス・ジャポニカの生態学的研究
 2. 線虫タンパク質と寄生性の関係
 3. 線虫寄生に対する寄主遺伝子の応答解析
 4. マツノザイセンチュウの感染に対する寄主マツ遺伝子の応答

あとがき
索 引


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