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アジア近代からの問い親密圏と公共圏の再編成

変容する親密圏/公共圏1
親密圏と公共圏の再編成 アジア近代からの問い

A5判
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-87698-582-1 C3336
奥付の初版発行年月:2013年02月 / 発売日:2013年02月中旬

内容紹介

アジア諸国では急速な経済発展を背景に,社会の近代化がきわめて短期間に進行し,繁栄と共に歪みをもたらした。こうしたグローバル化と「圧縮された近代化」による変容は,具体的にどのような展開をみせているのか。ジェンダー・人口移動・労働・ライフヒストリーからその実像を総合的に分析し,親密圏と公共圏のせめぎあう界面を描出する。

著者プロフィール

落合 恵美子(オチアイ エミコ)

京都大学大学院文学研究科教授。 東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専攻:家族社会学。
主な著作:『21 世紀家族へ ― 家族の戦後体制の見かた・超えかた(第 3 版)』
(有斐閣,2004 年),『アジアの家族とジェンダー』(山根真理・宮坂靖子と共編, 勁草書房,2007 年)。
Asia’s New Mothers: Crafting Gender Roles and Childcare Networks in East and Southeast Asian Societies. Folkestone: Global Oriental, 2008, co-edited with Barbara Molony.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 アジア近代における親密圏と公共圏の再編成――「圧縮された近代」と「家族主義」[落合恵美子]
1 「第一の近代」と「第二の近代」――人口とジェンダーに注目した再定義
 1―1.「第一の近代」の成立
 1―2.公的領域と私的領域,親密圏と公共圏
 1―3.人口転換と近代
 1―4.ジェンダーと近代
 1―5.市民社会の双方向への拡大――「第二の近代」の新たな社会秩序
2 アジア近代の論理――「圧縮された近代」と「半圧縮近代」
 2―1.人口転換とアジア近代
 2―2.ジェンダーとアジア近代
3 アジア近代の家族と国家
 3―1.家族主義とは何か
 3―2.アジアの家族主義
 3―3.「圧縮された近代」の家族と国家
 3―4.アジア社会のゆくえ
4 本書の構成

第1章 個人主義なき個人化――「圧縮された近代」と東アジアの曖昧な家族危機 [張 慶燮]
1 パラドックス――家族主義的東アジア人の個人化
2 圧縮された近代,家族の変容,個人化
3 家族中心的な(圧縮された)近代と脱家族化――制度化された家族主義
4 第二の近代とその制度的影響――リスク回避としての個人化
5 家族主義的制度下での個人化傾向――経験的証拠
6 比較評価―日本の経験の概観
第2章 東アジアの低出生率と家族主義――半圧縮近代としての日本 [落合恵美子]
1 東アジアにおける超低,極低出生率
 1―1.東アジア内における多様性
 1―2.低出生率の歴史的発展
 1―3.「圧縮された近代」と人口転換
2 東アジアにおける婚姻の逆説
 2―1.離婚,晩婚,生涯未婚
 2―2.同棲と婚姻外の出生
 2―3.国際結婚と高い出生性比
 2―4.東アジアの婚姻とリスク回避的な個人化
3 家族主義の多様性とその失敗
 3―1.家族主義の原因
 3―2.日本における家族主義的改革
 3―3.その他の東アジア社会における自由主義的家族主義
4 結論

第3章 人口ボーナスとアジアの将来 [パチャラワライ・ウォンブーンシン,クア・ウォンブーンシン]
はじめに
1 人口ボーナスとは
 1―1.第一次人口ボーナス
 1―2.第二の人口ボーナス
2 アジアの将来
 2―1.人口ボーナスの消滅
 2―2.スキルギャップ
 2―3.DINKとSINKの社会
 2―4.高齢化社会
 2―5.経済への影響
 2―6.家族への影響
 2―7.高齢社会の女性化と女性の労働参加率の低下
3 公共圏
 3―1.現在の人口ボーナスの利用
 3―2.第二の人口ボーナスに向けて
要約と結論

第4章 戦後日本型ライフコースの変容と家族主義――数量的生活史データの分析から [岩井八郎]
1 ライフコースと家族主義
2 福祉レジームの比較からみた日本
3 M字型就業パターンの定着と変容
 3―1.「団塊の世代」のライフコース
 3―2.「団塊ジュニア」のライフコース
 3―3.就業パターンと家族形成
4 高齢者の社会的地位と同居の意味の変化
 4―1.高齢者の社会的地位の変化
 4―2.子ども世代の不安定化と同居の意味
5 若年男性の学歴と初期キャリア
 5―1.初期キャリアの不安定化:無職,非正規雇用,転職の分析
 5―2.初期キャリアのプロフィール
6 縮小する日本型システムとその課題

第5章 正規/非正規雇用の賃金格差要因――日・韓・台の比較から [太郎丸博]
1 問題:なぜ非正規雇用の賃金は低いのか?
2 非正規雇用の賃金抑制要因
 2―1.労働力需給バランス
 2―2.人的資本
 2―3.職業の特性
 2―4.性差別
 2―5.非正規雇用そのものに対する差別
3 モデル:Oaxaca-Blinder 要因分解
4 データ
5 分析結果
 5―1.正規雇用の賃金関数の日韓台比較
 5―2.Oaxaca-Blinder 要因分解の結果
6 議論

第6章 ケアダイヤモンドと福祉レジーム――東アジア・東南アジア6社会の比較研究 [落合恵美子]
1 社会的ネットワークと福祉ミックス
2 アジア家族の比較研究
3 子どものケアをめぐる社会的ネットワーク
 3―1.親族
 3―2.コミュニティ
 3―3.施設
 3―4.家事労働者
 3―5.父親と母親
 3―6.地域による違い
4 高齢者のケアをめぐる社会的ネットワーク
 4―1.子どもと子どもの配偶者
 4―2.親族
 4―3.コミュニティ
 4―4.施設
 4―5.家事・介護労働者
5 ケアダイアモンドと福祉レジーム
 5―1.ケアダイアモンド
 5―2.福祉レジーム
6 ケアネットワークの再編成

第7章 家族ケアの担い手として組み込まれる外国人家事労働者――香港・台湾・シンガポールを事例として [安里和晃]
はじめに
1 アジアにおける家族主義
 1―1.台湾
 1―2.シンガポール
 1―3.香港
まとめ

第8章 韓国の社会投資政策 [イト・ペング]
1 政策の学習と移転
2 韓国におけるソーシャルケアの拡大
3 2000年以降の政策転換の政治経済的背景:政策規範と政策学習
4 2003年以降の子育て改革プロセス:社会投資パラダイムのもとでのソーシャルケアの進展
5 結論

第9章 比較法の視点から見た家族法 [水野紀子]
1 法のイメージと機能
2 日本家族法の特徴
3 家族の観念と家族の保護

第10章 フェミニズムにおける「私」と「公」のダイナミクス――ドイツと日本 [イルゼ・レンツ]
1 公と私の変化する関係
2 女性運動とは何か
3 フェミニズムと近代ジェンダー秩序の変容
 3―1.近代新家父長制的ジェンダー秩序の発展
 3―2.差異に基づくジェンダー秩序
 3―3.フレキシブルなジェンダー秩序は現れつつあるのか?
4 「私的なるもの」の未来?

第11章 アジアの市民的公共圏と市民社会――新たな公共性に向けて [五十嵐誠一]
はじめに
1 分析の視点
 1―1.市民的公共圏と市民社会
 1―2.トランスナショナル市民社会と地域主義
2 アジアの市民的公共圏と市民社会の定量的検討
 2―1.ナショナル・レベル
 2―2.リージョナル・レベル
3 アジアの市民社会の成長と停滞
 3―1.ピープルパワーと市民社会
 3―2.弱い国家と市民社会
 3―3.政府管理の市民社会
 3―4.停滞する市民社会
4 トランスナショナルな市民社会の台頭
 4―1.ASEAN憲章制定過程
 4―2.人権擁護
 4―3.移民労働
 4―4.環境保護
 4―5.紛争予防
おわりに

索 引
執筆・翻訳者紹介


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