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徳・商業・文明社会

徳・商業・文明社会

A5判 420ページ 上製
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-87698-617-0 C3030
奥付の初版発行年月:2015年03月 / 発売日:2015年04月上旬

内容紹介

人間性の本質となる「徳」と営みとしての「商業」とから拡大したヨーロッパの「文明社会」の本質を社会・政治・経済の思想史から論じる。


目次

はじめに 文脈主義(コンテクスチュアリズム)とその彼方  長尾伸一
 1 近代社会思想史の転換
 2 古代,中世,文明社会
 3 モダニティ理解と文脈主義

序章(特別寄稿) 政治思想としての歴史叙述 ―ある研究計画の形成についての報告  J・G・A・ポーコック
原題:J. G. A. Pocock, ‘Historiography as Political Thought: A Report on the Formation of a Project.’

第Ⅰ部

第1章 17世紀イングランドにおける信用と基金 伊藤誠一郎
 1 質屋
 2 抵当銀行と基金
 3 土地登記と信用
 4 利子論争
 おわりに

第2章 ミシシッピ・バブル後のブリテン ―ジョン・ロー来訪をめぐる信用論争  林 直樹
 1 はじめに
 2 ロー氏への手紙
  (1)『手紙』の著者について  (2)『手紙』を読む
 3 正しく語られたロー氏問題
  (1)1720年前後のデフォー  (2)『手紙』への応答  (3)デフォーの将来像
 4 結語

第3章 ジョン・ロックと啓蒙の始まり  生越利昭
 1 はじめに
 2 理性による世界の合理的認識
 3 蓋然性
 4 神の存在の理性的証明
 5 自由と自律
 6 政治的自由と権利の確立
 7 所有と富裕化
 8 宗教的寛容
 9 教育・訓練による啓蒙
 10 むすび

第4章 ジャン・バルベラックの「啓発された自己愛」  門亜樹子
 1 はじめに
 2 プーフェンドルフの自然状態論
  (1)ホッブズへの反論  (2)スピノザへの反論  (3)自然状態における「正しい理性」
 3 「正しい理性」と「啓発された自己愛」
  (1)自然法と「正しい理性」  (2)社交性と「啓発された自己愛」
 4 おわりに―「自己への義務」と「啓発された自己愛」

第5章 アベ・ド・サン=ピエールの商業社会論 ―啓蒙の功利主義  米田昇平
 1 はじめに
 2 人間本性 ―快楽と苦痛
 3 道徳論 ―私欲と公共的利益との一致
 4 商業
 5 むすび

第Ⅱ部

第6章 「文明化された君主政」論の王党派的起源
    ―フィリップ・ウォリック,エドワード・ハイドと,ヒューム  犬塚 元
 1 問題の所在
 2 キャロライン君主政の歴史解釈における王党派とヒューム
 3 「絶対的だが,しかし制限された」君主政
 4 「ヨーロッパ的な,文明化された」君主政
 5 結論といくつかの示唆

第7章 アダム・スミスにおける学問と思想 ―個と普遍をめぐって  篠原 久
 1 アダム・スミスにおける知識人の役割
 2 アダム・スミスの学問論
 3 普遍からの脱却

第8章 文明社会史論としてのスミス経済学  渡辺恵一
 1 はじめに
 2 社会発展の四段階論とスミスの文明社会論
 3 スミスの古代文明論―近代文明との比較史的考察
  (1)古代エジプトとアジアの文明  (2)ヨーロッパ古代文明―ギリシャ共和国と古代ローマの盛衰
 4 近代文明社会と世界市場
  (1)近代文明社会の起源 ―「富裕の逆行的順序」と重商主義体系の成立
  (2)大航海時代の幕開けとヨーロッパ近代社会の発展
 5 むすび

第9章 啓蒙の世界観 ―ポープとスミスの「見えざる手」  野原慎司
 1 はじめに
 2 ポープと「見えない」神
 3 ポープにおける人間社会
 4 スミスの「見えざる手」
 5 おわりに

第10章 ルソーとプーフェンドルフ  森岡邦泰
 1 はじめに
 2 ルソーのプーフェンドルフへの言及
 3 道徳的存在と物理的存在
 4 ルソーの場合
 5 おわりに

第11章 反革命思想と経済学 ―マルサス『食糧高価論』に関する一考察  中澤信彦
 1 はじめに―もうひとつの「二人のマルサス」問題
 2 マルサスとフランス革命
  (1)イギリスにおけるフランス革命  (2)『人口論』初版とフランス革命
  (3)『人口論』の増補改訂とフランス革命
 3 『食糧高価論』の分析
  (1)『食糧高価論』の執筆背景  (2)『食糧高価論』の価格理論と反革命思想
 4 なぜケインズは『食糧高価論』を高く評価したのか?
 5 おわりに

第Ⅲ部

第12章 ベンサム,アメリカ,共和政  川名雄一郎
 1 はじめに
 2 ベンサムとアメリカをめぐる研究史
  (1)ベンサムとアメリカ  (2)アメリカ政治思想史研究における修正主義的解釈
 3 第二期のアメリカ論
  (1)アメリカの民主主義  (2)マディソンとベンサム  (3)上院の位置づけ
  (4)悪政に対する安全  (5)世論の役割
 4 ベンサムのアメリカ大統領宛書簡 ―結びにかえて

第13章 コールリッジをめぐる理論家と歴史家の対話 ―アレン=モロウ論争再訪  小田川大典
 1 問題の所在 ―コールリッジ政治思想研究の現状と課題
 2 グラムシ的公職知識人論の先駆 ―アレンの非歴史的解釈
 3 シヴィック・ヒューマニズムの批判的継承者 ―モロウの歴史的解釈
 4 むすびにかえて 317

第14章 ハイエクと現代共和主義論  太子堂正称
 1 はじめに
 2 ハイエクの「法の支配」論
  (1)法の「上位の法」への従属と階層的構造  (2)ハイエクの議会改革案と共和主義的特徴
 3 「法の支配論」の系譜
  (1)「法の支配」としてのイソノミア  (2)アメリカ独立革命への着目
 4 現代の共和主義論とハイエク
  (1)ペティットの規範的共和主義論とハイエク  (2)ロールズにおける共和主義的契機とハイエク
 5 おわりに

第15章 アイン・ランド ―経済学のマキアヴェッリ  村井明彦
 1 はじめに
 2 ランドの生涯と『アトラス』
 3 ランドの権利論
 4 哲学の崩壊と資本主義の未成立
 5 おわりに

第16章 ゲーム理論とスミス『道徳感情論』  穂刈 亨
 1 はじめに
 2 Bénabou-Tirole(2011)のモデル
  (1)モデルの設定  (2)AU/SEゲームにおける均衡  (3)SCゲームにおける均衡  (4)比較静学
 3 おわりに 376

終章(特別寄稿) 「徳,商業,文明社会」の諸問題  田中秀夫

あとがき  坂本達哉

執筆・翻訳者紹介
索引(人名・事項)


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