社会化される生態資源 エチオピア 絶え間なき再生
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-87698-652-1(4-87698-652-5) C3039
奥付の初版発行年月:2005年03月
エチオピア西南部には,変化に富んだ自然環境のもと,多様な暮らしがいまも展開されている.自然との長い相互関係から育まれた独自の文化と社会が,近代化と国家の政治的影響にさらされながらしたたかに適応し,その多様性を保つ様を,「生態資源の社会化」を鍵概念に分析する.エチオピアの民族誌としても貴重な秀作.
福井 勝義(フクイ カツヨシ)
[現 職]京都大学大学院人間・環境学研究科教授、農学博士。
[主 著]
『認識と文化:色と模様の民族誌』(認知科学選書21)東京大学出版会、1991
『民族とは何か』岩波書店、1988(共編著)
Ethnicity and Conflict in the Horn of Africa, London: James Currey, 1994(共編著)
Redefining Nature: Ecology, Culture and Nature, Ocford: Berg, 1996(共編著)
その他,学術雑誌『エコソフィア』(昭和堂)編集代表
目次
はじめに――社会化される生態資源 福井勝義
「地方」の誕生と近代国家エチオピアの形成 宮脇幸生・石原美奈子
I エチオピアへの視点
II 生態環境と民族の多様性
III 帝国の「中心」と「周縁」
IV 社会主義による近代化と挫折
V 「地方」に突きつけられた新たな課題
第1部 生存の多様化選択
第1章 氾濫原をめぐる文化抵抗 宮脇幸生
――国家支配下におけるクシ系農牧民ホールの栽培戦略――
I 牧畜社会を支える氾濫原
II 氾濫原の環境利用
III 耕作者たちの栽培戦術
IV 聖域としての氾濫原
V 帝国支配と「徴税」システムの構築
VI 氾濫原をめぐる文化抵抗
第2章 青いモロコシの秘密 松田 凡
――余剰なきムグジの生存戦略――
I 余剰を蓄えない生き方
II オモ川下流平原とムグジ
III モロコシの生産と消費
IV 近代化と「辺境」
V おわりに
第3章 多様な作物資源をめぐる営み 藤本 武
――山地農耕民マロにおけるムギ類の栽培利用――
I エチオピアにおけるムギの多様性
II ムギ類はいかに栽培されるか
III ムギ類はいかに利用されるか
IV 変動しつつある多様なムギ類をめぐる営み
第2部 野生動物と人間の共存戦略
第4章 「野生の宝庫」の行く末 増田 研
I 「有害」な人間活動
II 周辺民族バンナとエチオピア国家
III バンナにとっての狩猟
IV 涸渇する野生資源
V まとめ
第5章 コーヒーの森とシャネルの5番 石原美奈子
――ジャコウネコ飼育をめぐる動物愛護の主張とその影響――
I ジャコウネコとの出会い
II 調査地域の自然と歴史
III ジャコウネコ飼育の歴史
IV 伝統的なジャコウネコ捕捉・飼育方法
V 国家とジャコウネコ飼育――許可制の導入と「近代的」飼育法の開発
VI 世界動物保護協会(WSPA)による批判
VII ジャコウネコ飼育は「残酷」か?
第3部 変化する森と人びとの持続戦略
第6章 社会空間としての「コーヒーの森」 松村圭一郎
――ゴンマ地方における植林地の拡大過程から――
I 「森林破壊」の語られ方
II ゴンマ地方北部の人と自然
III コーヒー栽培をめぐる歴史と森林域の変化
IV 「コーヒーの森」の生成過程
V 「コーヒーの森」の所有と利用
VI 大樹がつなぐ精霊空間
VII 社会空間としての「コーヒーの森」
第7章 森棲みの戦術 佐藤廉也
――二〇世紀マジャンの歴史にみる変化と持続――
I 変化する政治・社会状況と持続する森の戦術
II 人びとの移住の履歴をたどる
III 移動パターンの制約としての戦いと呪い
IV 移住から定住へ
V あらたな状況と森への執着
VI 森棲みの戦術はいかに獲得されるのか
VII 変化のなかで持続する「森棲みの戦術」
第4部 社会変動と空間の再編成
第8章 民俗の時間から近代国家の空間へ 田川 玄
――オロモ系ボラナ社会におけるガダ体系の時間と空間の変容――
I 年齢体系と空間の秩序
II 出自体系と領域
III ガダ体系の時間秩序
IV ガダ体系の空間秩序
V アビシニア帝国による征服と支配
VI 近代国家とガダ体系
VII 結びに
第9章 繰り返される戦いと空間の社会化 福井勝義
――スルマ系諸社会における統合と排他性の文化装置――
I 繰り返される戦い
II 変革期における大襲撃
III 戦いによって社会化されるテリトリー
エチオピア近・現代史年表
引用文献
索 引