在華紡と中国社会
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-87698-662-0(4-87698-662-2) C3022
奥付の初版発行年月:2005年11月 / 発売日:2005年11月上旬
日本資本の紡績業=在華紡は,綿業のみならず中国産業の近代化に大きく寄与したとされる.しかし,これまでの研究は,主に日本の産業史の一局面としてとらえることが多く,中国の民族紡への影響や,中国の労働運動,財政問題など,中国社会との関わりまで深く踏み込んでは論じてこなかった.その欠を補う好著.
森 時彦(モリ トキヒコ)
[現 職] 京都大学人文科学研究所教授
1947年奈良市生まれ。1974年京都大学大学院博士課程(東洋史)中退。同年京都大学人文科学研究所助手。愛知大学法経学部助教授、京都大学人文科学研究所助教授を経て、1995年より現職。
[主要編著書] 『中国近代化の動態構造』(編著、京都大学人文科学研究所、2004年)、『中国近代綿業史の研究』(京都大学学術出版会、2001年)、『中国近代の都市と農村』(編著、京都大学人文科学研究所、2001年)、「梁啓超の経済思想」(『共同研究 梁啓超』みすず書房、1999年)。
目次
まえがき
第1章 日本綿業における在華紡の歴史的意義 --5・30事件から日中戦争直前まで 篭谷直人
はじめに
1.内外綿,生産綿糸の高番手化 --5・30事件後の先発在華紡の再編--
2.日華紡織,紡機のハイ・ドラフト化 --5・30事件後の先発在華紡の再編--
3.「黄金期」(1929~31年)における分岐 --5・30事件後の先発在華紡の再編--
4.有力紡績企業系の在華紡の意義 --上海製造絹糸と裕豊紡績を事例に--
1)親会社にとっての「果実」
2)人事的再編の場としての在華紡
5.満洲事変後の在華紡と日本綿業界
1)拠点の拡散化と在華紡の主体性
2)華北経済進出と綿工連
まとめにかえて
第2章 在華紡と労働運動 江田憲治
はじめに
1.勃興期--2月ストと5・30運動(1925年2月~8月)
1)2月ストの勃発
2)ストの要求と労働者状況
3)2月ストから5・30運動へ
2.高揚期 --運動の再建から三大ゼネスト参加へ(1925年9月~27年4月)
1)ポスト5・30期のスト運動
2)三つの大規模スト 在華紡の労働政策の転換
3)ふたたび政治闘争へ
3.防戦期 --在華紡資本の攻勢への対抗(1927年8月~30年9月)
1)国共両党の労働運動政策と労働者の防戦
2)日華紡織における労働者の要求
4.後退期 --反日闘争への傾斜と最後の高揚(1931年12月~36年11月)
1)上海事変期のストライキと復業闘争
2)最後の高揚--在華紡反日大ストライキ
おわりに
第3章 1927年9月上海在華紡の生産シフト 森 時彦
はじめに
1.「1923年恐慌」と中国紡績業界の分化
2.1920年代後半の市場環境
3.1927年の中国市場
4.1927年9月の生産シフト
むすび
第4章 中国近代の財政問題と在華紡 岩井茂樹
はじめに
1.中国の工業化の財政環境
2.輸入代替産業育成策と在華紡
3.統税と在華紡
おわりに
第5章 在華紡の進出と高陽織布業 森 時彦
はじめに
1.中国近代における綿紡織業の展開過程
2.第一次世界大戦と高陽近代織布業の勃興
3.「近代セクター成長期」の高陽織布業
4.在華紡の兼営織布と高陽織布業
むすび
第6章 在華紡の遺産--戦後における中国紡織機器製造公司の設立と西川秋次 富澤芳亜
はじめに
1.西川秋次の中国残留
1)残留決定までの経緯
2)西川秋次と豊田佐吉との関係
3)日中戦争前における西川秋次と中国人紡織業者との関係
4)在華紡の「技術」の戦後中国への継承
5)国民政府の留用政策との関係
2.中国紡織機器公司の設立と日本人技術者
むすび
索 引