「まちがって中国に生まれてきた」と評された男,馬建忠.季鴻章の幕下で,西洋・日本とわたりあった外交官にして,いち早く西洋近代経済の重要性を説いた企業家.ヨーロッパと中国のはざまに揺れたその悲劇的生涯を通じて,激動の清末史に新たな光を照射する. 彼の外交官養成論・朝鮮紀行・経済論もあわせて訳出.
岡本 隆司(オカモト タカシ)
1965年、京都市に生まれる。1993年、宮崎大学教育学部講師、宮崎大学教育文化学部助教授をへて、現在、京都府立大学文学部准教授。
著書 『近代中国と海関』(第16回大平正芳記念賞受賞、名古屋大学出版会、1999年)、『属国と自主のあいだ——近代清韓関係と東アジアの命運』(第27回サントリー学芸賞受賞、名古屋大学出版会、2004年)
目次
プロローグ
第Ⅰ部 フランス留学と在外公館
第一章 フランスへの留学
一 生い立ち
二 旅立ち
三 ヨーロッパにて
第二章 馬建忠の役割
一 郭嵩燾・曾紀澤の論評
二 一八七八年、李鴻章への書翰
三 曾紀澤の「出使日記」
第三章 在外公館に関する意見書
一 「パリにて友人にこたえる書翰」(翻訳)
二 「マルセイユにて友人にこたえる書翰」(翻訳)
第四章 馬建忠と在外公館
一 「出使」と人材
二 公使館の危機感
三 馬建忠の意図と在外公館
第Ⅱ部 馬建忠と清末外交
第一章 李鴻章の幕下にて
一 帰国と「洋務」
二 旅順視察
三 インド紀行
四 朝鮮の条約交渉
五 朝鮮奉使
第二章 「東行三録」
一 壬午変乱の勃発と朝鮮行——一八八二年七月三〇日より八月一一日(翻訳)
二 日・朝との交渉——八月一二日より一六日(翻訳)
三 清軍の到着——八月一七日より二五日(翻訳)
四 大院君拉致と済物浦条約——八月二六日より三〇日(翻訳)
五 復命と帰還——八月三一日より九月五日(翻訳)
第三章 清末外交の転換
一 壬午変乱と馬建忠
二 ひろがる「屬邦」問題
三 馬建忠と対仏交渉
(1)ブーレ交渉
(2)フルニエ交渉
四 名声と悪評と
第Ⅲ部 馬建忠と清末経済
第一章 企業経営の時代
一 輪船招商局
(1)馬建忠の位置
(2)盛宣懷と馬建忠
(3)モース、沈能虎と馬建忠
二 国立銀行の設立構想
(1)前史
(2)銀行設立構想の特徴と挫折
第二章 「富民説」(翻訳)
第三章 経済思想
一 「富民説」と馬建忠の進退
(1)「富民説」の位置
(2)挫折と失脚
二 「富民説」の構成とその由来
三 「富民説」の課題
(1)借款問題
(2)会社組織
(3)富・強の論理
エピローグ
註
引用文献目録
索引