森を使い,森を守る タイの森林保護政策と人々の暮らし
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-87698-737-5 C3036
奥付の初版発行年月:2008年03月 / 発売日:2008年03月上旬
タイ東北部パーテム国立公園内に,田を耕し,山菜をつみ,魚や小動物を捕える伝統的生活を営む人々がいる.明らかに違法ではありながら,建前としての制度と現実の運用との柔軟な使い分けによる森林の「やわらかい保護」の好例である.自然を人間から隔離するのではなく,地域に根ざした文化と一体として使い,守る方策を提示する.
藤田 渡(フジタ ワタル)
京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了.
京都大学東南アジア研究センター(現研究所)非常勤研究員,国立民族学博物館外来研究員,総合地球環境学研究所非常勤研究員を経て,現在,甲南女子大学講師.
専門は,文化人類学・政治生態学の手法を用いた東南アジア地域研究.
その地域の文化や社会の特徴と調和した自然環境保全の可能性を考えてきた.1995年以来,タイを研究対象にしてきたが,近年は,ボルネオ/カリマンタンにも足を伸ばし,比較研究を通じ,東南アジア世界を俯瞰する広い視野を模索している.
目次
はじめに
第一章 森の中の村
1 村へのみちのり
2 村の様子
3 村人の暮らしぶり
4 村の行政
5 村の歴史
6 村の外で起こったこと--タイの森はどのようにしてなくなったのか
7 開拓移住の歴史
8 「犯人探し」ではなく
第二章 「やわらかい保護」のメカニズム --「国家保全林」の制度と運用
1 国家が森林を「区切る論理」--森林管理の制度のあらまし
2 「国家保全林」にいたるまで--国家が森を「区切る論理」の発展過程
3 国家保全林法--制度の構造
4 「区切る論理」と現実の乖離--国家保全林の運用
5 木材がほしかっただけなのか?--国家保全林と商業伐採コンセッション
6 「やわらかい保護」のメカニズム
第三章 矛盾解消への動き --「やわらかい保護」はなくなるのか?
1 「線引き」の修正
2 自然保護への「区切る論理」の転換
3 せめぎあう「区切る論理」--「保護林」内耕作権と「コミュニティ林」
第四章 国立公園という「社会生態空間」 --「やわらかい保護」がつくりだしたもの
1 国立公園による村人の暮らしの制約
2 自給的生活への志向
3 制度と村人・役人・NGO
4 国立公園による社会生態的空間の生成
第五章 食物からみる人と自然のつながりの実像 --「自然にしたがって生きる」ということ
1 農民にとって森はどういう意味をもつのか
2 自然だのみの食生活
3 環境に調和した食文化
4 豊かな雨期と厳しい乾期
5 自然とつながる暮らしの情景--食材採取の具体的な行動パターンから
6 自然から食物をとってくることで生まれる文化
第六章 「つながりの論理」が生まれる瞬間 --文化形成のインターフェースとしての自然環境の認識
1 森を分類する
2 森の認識の二重性--「つながりの論理」と「区切る論理」
むすびにかえて--森と社会はどこへ向かうのか
註
おわりに
引用文献
索 引