大学出版部協会

 

外国人留学生のメンタルヘルスと危機介入

外国人留学生のメンタルヘルスと危機介入

A5判 332ページ 並製
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-87698-752-8 C1011
奥付の初版発行年月:2008年07月 / 発売日:2008年07月上旬

内容紹介

外国人留学生は,教育・研究というプレッシャーに加えてつねに異文化にさらされるというストレスフルな環境下にある.大学で長年外国人留学生の相談にのってきた著者が,かれらのおちいりやすいメンタルな問題の傾向を分析・紹介し,代表的事例をとおして危機介入の実際を提示.外国人留学生支援にかかわるすべての人の必携書.

著者プロフィール

大橋 敏子(オオハシ トシコ)

京都府立大学文家政学部卒業.大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程修了(健康科学専攻精神・社会健康学分野).神戸大学大学院国際協力研究科博士課程修了(地域協力政策専攻国際保健医療学講座).博士(学術).
日本カウンセリング学会認定カウンセラー,産業カウンセラー,JAFSA(国際教育交流協議会)理事.多文化間精神保健専門アドバイザー資格認定委員.
現在,京都大学に勤務(留学生アドバイザー).
専門領域は,異文化間教育,カウンセリング,精神・社会健康学,国際保健医療学.
主な著作として,「外国人留学生とのコミュニケーション・ハンドブック—トラブルから学ぶ異文化理解」(共著,アルク,1992年),「留学生からのメッセージ 日本留学の光と影」(北斗書房,1998年),「マルチカルチュラリズム(現代のエスプリ)」(分担執筆,至文堂,2003年),「マクロ・カウンセリング実践シリーズ4」(分担執筆,川島書店,2007年)など.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき

第1編 理論編

第1章 留学生のメンタルヘルスと危機介入の理論
1 国際交流と留学生のメンタルヘルス概観
2 相談事例のいくつから
  1 事例:「我輩は佐々木小次郎である」
  2 事例:「おならで行進」
  3 事例:「先生を殺して私も死ぬ!」
  4 事例:「私はここにいる人とは違う」
3 留学生への危機介入
  1 危機的状況の意義づけ
  2 留学生の危機的状況と危機的対応
  3 危機介入理論の潮流
  4 留学生への危機介入・危機管理のための提言

第2章 「つなぐ」カウンセリングの基本的な考え方
1  コーディネーションの実際
  1 「つなぐ」機能とは
  2 コーディネーターの資質と専門性
  3 先行研究にみるモデル化
2 カウンセリングを進める際のシステム
  1 生態学的システム(モデル)の活用
  2 ヘルスケアシステムの活用
3 カウンセラー(サービス提供者)の役割
4 「つなぐ」カウンセリングのあり方
  1 協働・研修の重要性
  2 留学生担当者の評価の重要性
  3 提  言

第3章 メンタルヘルスへの影響要因を探る
1 ストレッサーとストレス反応
2 多変量解析による要因分析
  1 調査の概要
  2 SDS
3 調査結果
  1 ストレス得点、SDS得点およびサポート利用頻度(全体)
  2 留学生の属性による比較
4 因子分析からみえてくるもの
  1 SDS要因
  2 ストレス要因
  3 サポート要因
5 3Sモデル(パスモデル)
6 考  察
  1 留学生のメンタルヘルスに影響する要因
  2 留学生のストレス状態に影響する要因
  3 留学生のサポート利用頻度に影響する要因
7 結  論
  1 異文化間コミュニケーションの重要性
  2 社会人口学的変数による比較
  3 社会情緒的サポート
  4 留学生のメンタルヘルスと日本語
  5 日本語学校生の課題
  6 提  言

第4章 留学生への危機介入と予防
1 オリエンテーションとメンタルヘルスプログラム
  1 オリエンテーションの評価
  2 留学生のためのメンタルヘルスプログラム
2 留学生のメンタルヘルスの保持・増進
  1 第1次予防(事例化の予防):来日前
  2 第1次予防(事例化の予防):来日後
  3 第2次予防(早期発見・早期治療)
  4 第3次予防(社会復帰への援助、再発の防止)
3 留学生のメンタルヘルスに関する評価尺度
(スクリーニング)
  1 評価尺度の特徴と限界
  2 留学生のメンタルヘルス質問票
4 危機介入プログラムのあり方をめぐって
  1 危機介入の諸説から
  2 学校危機対応モデル
  3 コミュニティ心理学の視点から
  4 ガイドライン
5 結  論
  1 考  察
  2 提  言

第5章 異文化適応とメンタルヘルス
1 留学生が抱く日本・日本人のイメージ
  1 調査の概要と結果
  2 日本・日本人イメージの時間的変遷
2 留学生の異文化適応の課題と過程
  1 留学生が置かれている状況の特徴と適応課題
  2 異文化への適応過程
  3 異文化生活への不適応現象と精神障害
3 復帰ショックと自文化への再適応
  1 異文化受容と帰国適応
  2 帰国文化ショックと価値観の変化
4 結  論
  1 リエントリーオリエンテーションの必要性
  2 元留学生同窓会(同窓生)の活用
  3 提  言

第6章 危機介入における留学生のニーズ分析
1 留学生の異文化適応面でのニーズ分析
  1 調査対象者の特色
  2 留学生のニーズの重要度・満足度
  3 調査結果からみえてくるもの
2 日本人とのコミュニケーションを阻む要因
  1 滞在期間による比較(1年未満/5年以上)
  2 出身国による比較(欧米/非欧米)
3 結  論
  1 日常文化における認知面,情緒面,行動面での適応上の特徴
  2 日本語教育の重要性
  3 提  言

第7章 配偶者・家族の重要性
1 留学生の家族帯同の課題
  1 日本における家族の形:被調査者の属性における特色
  2 調査の結果および考察
2 大学での留学生の家族に対する支援の実態
  1 家族問題への大学の関与
  2 留学生会館における家族へのケア
3 調査結果からみえてくるもの
  1 「住」の確保の重要性
  2 家族支援の光と影
  3 提  言

第2編 実践編

第8章 留学生のメンタルヘルスと危機介入の実践
1 留学生支援:危機介入の実際
  1 危機介入のスキル
  2 危機カウンセリング
  3 危機介入コーディネーター
2 支援を実施する際に何が必要とされるのか
3 何ができるのか,何ができないのかを明確化させる
4 多様な役割を認識する

第9章 留学生にみられる精神障害・精神疾患
1 精神障害・精神疾患の基礎知識
  1 精神障害を扱う標榜科
  2 精神障害の診断名・診断分類
  3 精神疾患・精神障害の原因と要因
  4 精神医学的治療
2 うつ病・躁うつ病
  1 「うつ病」「うつ状態」などの用語
  2 うつ病の初期症状と自殺予防
  3 躁うつ病・うつ病の基本的な概念
  4 躁うつ病の原因・誘因
  5 うつ状態とは
  6 学校現場での特徴的なうつ病
  7 躁状態とは
  8 躁うつ病への対応をめぐって
  9 事例:躁うつ状態に苦しむチャン
3 統合失調症
  1 統合失調症とは
  2 学校での対応
  3 事例:妄想・幻聴に苦しむジョセフ
4 神経症
  1 神経症とノイローゼ
  2 代表的な神経症
  3 神経症への対応
  4 事例:ノイローゼに悩むマリリン
5 心身症
  1 心身症とは
  2 心身症への対応
  3 事例:脱毛に悩むケイト
6 アルコール依存症
  1 アルコール依存症とは
  2 アルコール依存者への援助と治療
7 てんかん
  1 てんかんとは
  2 事例:てんかんとうつ病に悩むマリー
8 事例性を重視する

第10章 留学生のメンタルヘルスの危機の実際
1 留学生の異文化適応と危機
 1 事例:指導教員に不満を表明できない張さん
 2 留学生と指導教員との関係性
2 留学生のメンタルヘルスの特徴・留意点
 1 調査研究から
 2 特徴・留意点
3 留学生のメンタルな相談の実際
 1 「つなぐ」カウンセリングの重要性
 2 異文化不適応現象の症状
 3 事例:足の痛みに悩むホセ(身体化)
 4 事例:妄想に苦しんだマーク(行動化・精神化)
 5 「つなぐカウンセリング」と情報管理

第11章 留学生カウンセラーの多様な役割
1 コミュニティカウンセリングの視座から
  1 コミュニティ心理学の重要性
  2 コミュニティカウンセリングの実際
  3 「つなぎ」モデルの実際
2 コミュニティカウンセリングの応用
  1 事例:精神的不調で大学生活になじめない交換留学生
  2 コミュニティサービスの支援
  3 クライエントサービスの支援
  4 コメント
3 専門医と連携した事例(アウトリーチ)
  1 事例:地震によってPTSDを被ったピエール
  2 考  察
4 指導教員と連携した事例(コンサルテーション)
  1 事例:飛び降り自殺をはかったサテ
  2 考  察
5 再発予防に重点が置かれた事例(カウンセリング)
  1 事例:失恋をして自殺をはかったマイケル
  2 考  察
6 信頼関係に重点を置いた事例(アドボカシー)
  1 事例:妄想障害に陥ったチョン
  2 考  察

第12章 異文化理解へのアプローチ
    カルチャーアシミレーターを用いて
1 カルチャーアシミレーターとは
2  「ノー」とはいえなくて
  1 事例:不仲になったエマとマイク
  2 解説およびアドバイス
3 「直接、いってよ!」
  1 事例:家主や指導教員との関係不良でうつになったマリア
  2 解説およびアドバイス
4 「遊びに来て」といったのに
  1 事例:日本人への不信を拭えなくなったダム
  2 解説およびアドバイス
5 「はい」といったのに
  1 事例:日本語クラスを変わりたくなった李さん
  2 解説およびアドバイス
6 補論:自分を危機から守るために
  1 事例:留学生アドバイザーの困惑
  2 解説およびアドバイス

資  料
 資料1 留学生受け入れの概要
 資料2 DSM-IV-TR
 資料3 ICD−10
 資料4 JAFSA(国際教育交流協議会)
 質問票Ⅰ
 質問票Ⅱ
 質問票Ⅲ
 質問票Ⅳ
 質問票Ⅴ
 質問票_
 質問票_

 索  引
 あとがき


コラム
1 ラポール
2 リファー
3 トラウマと外傷後ストレス障害
4 アクティブリスニング、積極的傾聴
5 インテーク面接、インテーカー
6 ピアカウンセリング
7 NAFSA
8 多文化間精神医学
9 論理療法、ナラティブセラピー
10 転  移
11 燃え尽き症候群


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。