学術選書045
カメムシはなぜ群れる? 離合集散の生態学
価格:1,980円 (消費税:180円)
ISBN978-4-87698-845-7 C1345
奥付の初版発行年月:2009年10月 / 発売日:2009年10月中旬
その臭気ゆえに何かと嫌われるカメムシ.かれらは食物や異性をめぐって,あるときは集まり,あるときは散らばる.集まることの損と得を考えながら,カメムシたちのユニークな暮らしぶりを描き出すことで,かれらがただ臭いだけの虫ではなく,さまざまな興味をかき立ててくれる面白い生き物であることを紹介する.ロングセラーの新装版.
藤崎 憲治(フジサキ ケンジ)
京都大学大学院農学研究科教授.農学博士.
1947年 福岡県生まれ.
1978年 京都大学大学院農学研究科博士課程単位取得退学.日本学術振興会特別研究員,沖縄県農業試験場研究員・主任研究員,岡山大学農学部助教授・教授を経て現職.
【専 門】
昆虫生態学.
【主な著書】
「動物の個体群と群集(生物学教育講座7巻)」(共著,東海大学出版会,1980年).「無名のものたちの世界」(分担執筆,思索社,1980年).「昆虫学セミナーⅢ 個体群動態と害虫防除」(分担執筆,冬樹社,1989年).「動物たちの生き残り戦略」(共著,NHKブックス,日本放送出版協会,1990年).「♂♀のはなし——虫」(分担執筆,技報堂出版,1992年).「植物防疫講座第3版——害虫・有害動物編」(分担執筆,日本植物防疫協会,1997年).「応用昆虫学の基礎」(共著, 朝倉書店,2000年),「飛ぶ昆虫と飛ばない昆虫の謎」(共編著,東海大学出版会,2004年),「群れろ!——昆虫に学ぶ集団の知恵」(共著,NTS,2008年),「昆虫科学が拓く未来」(共編著,京都大学学術出版会,2009年).
目次
口 絵
はじめに
第1章 餌をめぐる集合と分散
1 密度効果と集合効果
2 ホオズキカメムシとその集合性
閑話1・ホオズキの語源
3 集合形成のメカニズム
4 集合効果の検証
5 集合効果のメカニズム
第2章 捕食者をめぐる集合と分散
1 臭気の直接的防御効果
2 警告色と集合効果
3 警報フェロモンとしての臭気
閑話2・食文化としてのカメムシ
4 利他的な集団か、利己的な集団か
第3章 異性をめぐる集合と分散
1 交尾なわばりの発見と検証
閑話3・鞍馬での想い出
2 なわばり防衛行動とあぶれ雄の戦術
3 闘争における非対称
4 なわばり防衛のコストとなわばりの崩壊
5 なわばりとハレム
6 雌の戦略
7 闘うカメムシたち
8 ハレムではない交尾集団
第4章 越冬場所をめぐる集合と分散
1 越冬場所への集合とその意義
閑話4・カメムシ類の異常発生の原因
2 スコットカメムシの交尾行動と交尾特性
3 栄養物の移送
4 越冬中になぜ交尾できるのか
5 越冬中交尾の適応的意義
6 昆虫類の婚姻贈呈
第5章 繁殖場所をめぐる集合と分散
1 カンシャコバネナガカメムシとの出会い
2 カンシャコバネナガカメムシとはどういう昆虫か
3 サトウキビとはどういう作物か
4 個体群密度と翅多型
閑話5・調査失敗談
5 ディングル博士の研究室へ
閑話6・デービスでの生活
6 翅型と繁殖戦略
7 翅型決定の季節的要因
閑話7・ハブ騒動記
8 休眠する卵
9 翅多型と卵休眠との関係
閑話8・亜熱帯の風土と人間性
第6章 飛翔性喪失の進化
1 飛ばなくなったカメムシたち
2 翅多型性の進化的シナリオ
3 飛翔性喪失の生態的背景
4 移動分散の意義に関する理論
5 鳥類における飛翔性喪失
閑話9・西表島石畳事件
6 分散多型性研究の今後の展望
おわりに
学術選書への改訂版に際してのあとがき
謝 辞
読書案内
引用文献
索 引
コラム
1 気候温暖化によるミナミアオカメムシの分布拡大
2 日本産ホソヘリカメムシ類の再検討
3 ベニツチカメムシの帰巣ナビゲーション
4 カメムシ類の脱皮集団
5 利己的な群れ
6 雌による隠れた選択
7 食草外産卵の習性は奄美個体群で強い?
8 カメムシと共生微生物との関係
9 再交尾抑制物質の発見
10 交尾をめぐる雄と雌の対立
11 汽水域におけるアメンボの生活史戦略
12 天敵の存在が移動型の生産を促す?
13 聖地保護か開発優先か