フェティシズム研究2
越境するモノ
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-87698-950-8 C3336
奥付の初版発行年月:2014年02月 / 発売日:2014年02月下旬
近代は「未開」のモノ崇拝を「フェティシズム」と呼んで切断した。それが,近代社会に刻印されたモノの呪いの始まりであった――。モノをめぐる固着した植民地的関係の相対化を図りながら,「信仰」「蒐集」をキーワードに,領域と地域を軽やかに越境するモノの呪力に迫る。
田中 雅一(タナカ マサカズ)
1955年生まれ。京都大学人文科学研究所教授、人類学(南アジア)、ジェンダー・セクシュアリティ研究。
主要著書に、『供儀世界の変貌 南アジアの歴史人類学』法蔵館、2002年(単著)、『癒しとイヤラシ エロスの文化人類学』筑摩書房、2010年(単著)、『ジェンダーで学ぶ文化人類学』2005年、『ミクロ人類学の実践』2006年、『ジェンダーで学ぶ宗教学』2007年、『南アジア社会を学ぶ人のために』2010年(以上、世界思想社、共編)、『文化人類学文献事典』弘文堂、2004年(共編)、『暴力の文化人類学』京都大学学術出版会(編著)、『女神 聖と性の人類学』平凡社、1998年(編著)などがある。
目次
はじめに [田中雅一]
序 章 越境するモノたちを追って [田中雅一]
1 はじめに
2 推量を拒否するモノ
3 フェティシズムとコンタクト・ゾーン
4 博物館へ/博物館から
5 本書の構成
第 Ⅰ 部 フェティッシュとであう
第 1 章 呪物の幻惑と眩惑 [石井美保]
1 はじめに
2 フェティッシュと創造性——ピーツとグレイバーのフェティッシュ論
3 異文化間の交渉とフェティッシュ
4 考察——フェティッシュの幻惑
5 おわりに
第 2 章 リンガとファルス
フェティシズムの植民地主義からの解放のために [田辺明生]
1 はじめに
2 リンガ・ヨーニはファリック・シンボルか
3 リンガ・ヨーニとフェティシズム
4 植民地主義と近代ヒンドゥー教の再編——インド的公共性へ
5 おわりに
第 3 章 装飾のフェティシズム
東アフリカの衣服カンガの誕生をめぐって [金谷美和]
1 はじめに
2 オランダのサンプル帳にみられるカンガ資料の検討
3 グジャラートから東アフリカ沿岸部へ(移民と布の交易)
4 カッチ地方の絞り染め布とその生産者たち
5 おわりに
第 4 章 コモディティ化するフェティシズムへの挑戦
社会主義国キューバのアーティスト、コロニアリズム、グローバル市場 [細谷広美]
1 はじめに
2 フェティシズムとしての美術、グローバル化
3 キューバ現代美術とグローバル化
4 コロニアリズム、グローバル化へのまなざし
5 おわりに
第 Ⅱ 部 フェティッシュをしんじる
第 5 章 変奏される伝説、転置するフェティッシュ
奇跡をめぐる欲望が生み出す人・モノ・場所 [藤原久仁子]
1 はじめに
2 タピヌ巡礼地の成立
3 アールプ村と「癒しの油」伝説
4 フレンチおじさんと「癒しの油」
5 おわりに
第 6 章 モノ化する「運命」
西アフリカ・ベナン南西部の宗教実践 [田中正隆]
1 はじめに
2 運命と受動性
3 アジャ社会と在来信仰
4 運命と霊的存在をめぐる諸概念
5 村落社会におけるポリ儀礼
6 おわりに——運命とかかわりあう
コラム1 フェティッシュ・メーケット瞥見——トーゴでの体験から [鈴木正崇]
第 7 章 聖なる複製・商品の信仰空間
イスラームの聖遺物とフェティシズム [小牧幸代]
1 はじめに
2 イスラームの聖遺物とは
3 南アジアにおけるイスラームの聖遺物信仰
4 複製化・商品化された聖遺物への信仰
5 聖遺物あるいはフェティッシュの聖性と物質性
6 おわりに
コラム2 大量生産された神像や宗教画を祀る
インドにおけるヒンドゥー教徒の家庭内礼拝をめぐって [木下彰子]
第 8 章 複製化し、増殖するブッダ
韓国仏教の物質化、ポップカルチャー化と忍び込むフェティシズム [岡田浩樹]
1 はじめに——増殖するブッダ
2 釈迦仏信仰と抑圧されたフェティシズム
3 ブッダの増殖と複製化
4 仏教的モノの氾濫と「私化」、忍び込むフェティシズム
5 おわりに
コラム3 モノと図譜と知識人、あるいは日本近世のフェティシズムの構造 [上杉和央]
第 9 章 本物をのっとる贋物
インドにおける小生産物がかきたてるフェティシズム [岩谷彩子]
1 はじめに——フェイクとフェティシズム
2 「オリジナル」のありか——ヴァギリが扱う商品
3 フェイクを流通させる人々
4 フェイクはフェティッシュとなりえるか——ヴァギリの顧客たち
5 フェイクからフェティッシュへ
第 Ⅲ 部 フェティッシュをあつめる
第 10 章 歴史の翻案
合衆国における博物館コレクションの政治性と象徴性 [田川 泉]
1 はじめに
2 翻案される歴史
3 再解釈されるコレクション
4 越境するコレクション
5 せめぎあうコレクション
6 解放されるコレクション
7 コレクションの政治性と象徴性
コラム4 武器を欲望する人々
広島県呉市における戦艦大和の展示をめぐって [福西加代子]
第 11 章 博物館とフェティシズム
秘匿と開示をめぐる地域博物館の抵抗と交渉 [窪田幸子]
1 はじめに
2 カナダの博物館の変化
3 オーストラリアの博物館の変貌
4 地域博物館をめぐる交渉——カナダとオーストラリア
5 モノとフェティシズム
コラム5 近代天皇制の「秘匿性」と御物 [高木博志]
第 12 章 性を蒐集・展示する [田中雅一]
1 博物館、あるいはもうひとつの他者表象
2 二種類の秘宝館
3 男たちの世界から二人の世界へ——秘宝館の変容
4 レジャー系秘宝館——伊勢と熱海
5 ムセイオンからミュージアムへ
6 宇和島・多賀神社境内性文化財資料館凸凹神堂
7 欲望を欲望する
8 おわりに
第 13 章 収拾のつかない蒐集 [長尾晃宏]
1 はじめに——我、集める。ゆえに我あり。
2 研究の視点と方法をめぐって
3 コレクションの魅力、祝祭、呪縛
4 消費文化の蒐集
5 モノ集めに夢中になるメカニズム
6 おわりに
第 14 章 ガンプラというフェティシズム
モノと物語の相互作用 [川村清志]
1 はじめに
2 ガンダムという物語
3 ガンプラの誕生と展開
4 ガンプラを展開させたメディアと「らせん的進化」
5 フェティッシュとしてのガンプラ
6 おわりに
あとがき
索引