大学出版部協会

 

侵犯する身体

フェティシズム研究3
侵犯する身体

A5判 508ページ 上製
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-87698-951-5 C3336
奥付の初版発行年月:2017年06月 / 発売日:2017年06月上旬

内容紹介

「肉体は魂の牢獄」(プラトン)という言葉があるが、実際のところ身体は長らく精神が用意した檻に囚われてきた。欲望の対象であるとみられてきた身体は、同時に誘惑の主体でもある。フェティッシュへの欲望をフェティッシュによる誘惑、すなわち侵犯する身体による誘惑として理解すると、ヒトと身体とモノの関係になにがみえてくるだろうか。

著者プロフィール

田中 雅一(タナカ マサカズ)

 1955年生まれ。京都大学人文科学研究所教授、人類学(南アジア)、ジェンダー・セクシュアリティ研究。
 主要著書に、『供犠世界の変貌 南アジアの歴史人類学』法藏館、2002年(単著)、『癒しとイヤラシ エロスの文化人類学』筑摩書房、2010年(単著)、『ジェンダーで学ぶ文化人類学』2005年、『ミクロ人類学の実践』2006年、『ジェンダーで学ぶ宗教学』2007年、『南アジア社会を学ぶ人のために』2010年(以上、世界思想社、共編)、『文化人類学文献事典』弘文堂、2004年(共編)、『暴力の文化人類学』京都大学学術出版会、1998年(編著)、『女神 聖と性の人類学』平凡社、1998年(編著)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに [田中雅一]

序 章 侵犯する身体と切断するまなざし [田中雅一]
1 はじめに
2 身体論へ
3 フェティシズムにおける二重の否認
4 フェティシズムの分類
5 複製技術時代のフェティシズム
6 侵犯、切断、誘惑
7 女性のフェティシズム
8 本書の構成

第 I 部 身体をかたどる

第1章 皮膚をまさぐる視線
    一八、一九世紀タヒチ社会における他者認識にみるフェティシズム [桑原牧子]
1 はじめに
2 タプ——皮膚を包む
3 タイオ——皮膚に溶ける
4 船長の皮膚、首長の皮膚
5 水夫の皮膚、平民の皮膚
6 おわりに

第2章 韓国社会における身体の商品化とフェティシズム
    美容整形の流行と新生殖補助医療技術をつなぐもの [岡田浩樹]
1 はじめに
2 韓国における美容整形の浸透と「繁栄」
3 韓国における美容整形流行の状況
4 韓国における「儒学的伝統」とその「崩壊」
5 韓国における新生殖医療技術受容
6 美容整形の受容・普及と新生殖補助医療技術受容の共通点
7 おわりに

コラム1 ゼウクシスのひそみ [岡田温司]

第3章 ドラァグ・クイーン
    触発するフェティッシュあるいは最も美に近い創造物としての [佐藤知久]
1 ドラァグ・クイーンをめぐる諸問題
2 ニューヨークにおけるドラァグ・クイーン小史——〈社会=社交〉空間の観点
3 フェティッシュを通じた触発——古橋悌二とブブ・ド・ラ・マドレーヌ
4 自己フェティッシュ化/脱フェティッシュ化としてのドラァグ

第4章 「人体模倣」の現在 [西村大志]
1 はじめに
2 「ダッチワイフ」から「ラブドール」へ
3 アメリカの「リアルドール」と日本の「ラブドール」の目指すもの
4 ドールにおける物語性——ラブドールとスーパードルフィー
5 おわりに

第5章 観光化する複製身体
    マダム・タッソー蝋人形館をめぐって [妙木 忍]
1 はじめに
2 マダム・タッソーの何に着目するか
3 現実の再現か空想の再現か
4 迫真性の類型
5 アウラの消滅がもたらす娯楽性
6 おわりに

第 II 部 身体をつつむ

第6章 布とフェティシズム
    インドネシア・東ヌサテンガラ州の絣織の考察をとおして [青木恵理子]
1 はじめに
2 布の特性とフェティシズム論
3 東ヌサテンガラ州のイカット
4 おわりに

第7章 袈裟の裂に対するフェティシズム
    金襴袈裟と糞掃衣の裂をめぐって [松村薫子]
1 はじめに
2 金襴袈裟の歴史的展開
3 糞掃衣の歴史的展開
4 金襴袈裟と糞掃衣の裂に対する考え方
5 おわりに

第8章 ファッション・フェティッシュ・ファケーレ [フィロメナ・キート(藤原久仁子訳)]
1 はじめに
2 ファッションにおけるフェティシズム
3 フェティッシュとしてのブランド
4 フェティッシュな対象としてのブランド品
5 衣服ブランド——ファッションを作ること
6 おわりに

コラム2 文化フェティシズムと欲望される身体 [成実弘至]

第9章 ふわふわの訳
    ゴシックロリータ・ファッション [小野原教子]
1 「ゴシックロリータ」とは?
2 「ゴシックロリータ」スタイル
3 「ゴシックロリータ」作り
4 存在感と浮遊感
5 おわりに

第10章 ランジェリー幻想
    官能小説と盗撮、格子写真 [田中雅一]
1 はじめに
2 官能小説
3 ブルセラ・ショップと盗撮
4 〈モノでなし〉の出現と主体の攪乱
5 商品カタログと考現学
6 おわりに——不在の否認から喪の作業へ

コラム3 お札とハイヒール [大浦康介]

第 III 部 身体をえがく

第11章 谷崎文学におけるフェティシズム
    フロイトとマゾッホを超えて [佐伯順子]
1 はじめに——〈フェチのアジール〉としての「文学」
2 谷崎文学における女性の足への執着——〈造形美〉と〈男性を蹂躙する女性像〉
3 なぜ足なのか——〈母性憧憬〉と〈去勢恐怖〉
4 〈男根恐怖〉と〈女性崇拝〉——フロイト説への疑問
5 キリスト教的二元論と男性中心主義を超えて——女性とモノの復権
6 〈女性差別〉か〈女性崇拝〉か——フェミニズム的観点からみたフェティシズムの両義性
7 世界の再解釈の可能性——『毛皮を着たヴィーナス』を超えて

第12章 初期映画と身体
    フェティッシュとしての表象された身体 [森村麻紀]
1 はじめに
2 複製技術とフェティッシュ
3 映画の被写体に選ばれた男
4 ポーズをとる男とその受容
5 連続写真と初期映画の身体表象
6 身体鍛錬の時代
7 おわりに

第13章 「やおい」の男性表現にみる女性の欲望の現在
    女性とフェティシズムについて語りはじめる前に [藤本純子]
1 はじめに
2 男性表現の推移と現状
3 深化するまなざしの背景
4 ナルシシズム的欲望の行方
5 おわりに

コラム4 侵犯されるカラダとココロ——アダルトビデオにおける「フェティシズム」 [花房観音]

第14章 サイボーグに性別はあるか? [田村公江]
1 はじめに
2 「攻殻ワールド」で設定されている科学技術
3 読み取り得る哲学的問題
4 サイボーグ・ファンタジーにおいて語られない部分
5 おわりに

第15章 〈BBS〉の片隅で
    身体、書物、インターネット [菊地 暁]
1 ボディ/メディア/フェティシズム
2 スキャニスト——身体と書物とネットのあいだ
3 レスポンス——オンライン・コミュニティの「秩序」1
4 ヴァリエーション——ジャンルの拡散
5 クライシス——オンライン・コミュニティの「秩序」2
6 おわりに——「アダルト」サイト

コラム5 これは愛ではない [立木康介]

  あとがき [田中雅一]
  索引


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。