森棲みの生態誌 アフリカ熱帯林の人・自然・歴史 I
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-87698-952-2 C3039
奥付の初版発行年月:2010年02月 / 発売日:2010年02月下旬
熱帯林の生物相にとけ込むように生きる人々の「森の文化」.40年以上,数十人にのぼる集約的なアフリカ生態人類学研究を総括し,環境保全と地域社会の持続を両立させる道を探る.人類にとって「狩猟」とは何か? 「農耕」とは何か? そしてそもそも「生きる」とはなにか? 21世紀の人類学の視角と方法を示し,人類史の根源的な問いに迫る.
木村 大治(キムラ ダイジ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授
1960年生まれ,京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士。
主な著書に,『ヒトの自然誌』(平凡社,共著),『人間性の起源と進化』(昭和堂,共著),『共在感覚—アフリカの二つの社会における言語的相互行為から』(京都大学学術出版会)。
北西 功一(キタニシ コウイチ)
山口大学教育学部准教授
1965年生まれ,京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了,博士(理学)。
主な著書に,『森と人の共存世界』(京都大学学術出版会,共著),『平等と不平等をめぐる人類学的研究』(ナカニシヤ出版,共著)。
目次
巻頭図
はじめに
第 I 部 総 説
第1章 アフリカ熱帯雨林の歴史生態学に向けて [市川光雄]
1—1 「グローバル・イシュー」から「森棲みの視点」へ
1—2 人間の生活環境としての熱帯雨林
1—3 植生環境に対する人間活動のインパクト
第2章 ワイルドヤム・クエスチョンから歴史生態学へ —中部アフリカ狩猟採集民の生態人類学の展開— [安岡宏和]
2—1 ワイルドヤム・クエスチョン前史
2—2 リヴィジョニズムの台頭とワイルドヤム・クエスチョン
2—3 ワイルドヤム・クエスチョンをめぐる初期の論争
2—4 ワイルドヤム・クエスチョンの展開
2—5 ワイルドヤム・クエスチョンを組み替える
2—6 森と人のポリフォニー
第3章 中部アフリカ熱帯雨林の農耕文化史 [小松かおり]
3—1 アフリカの農耕文化
3—2 中部アフリカの農耕のはじまり
3—3 東南アジアからのバナナの到来
3—4 南米からのキャッサバの到来
3—5 主食作物の分布
3—6 作物としてのバナナとキャッサバの比較
3—7 調理と加工の技術の変化
3—8 キャッサバによる農耕と食の変化
3—9 コーヒーとカカオの受け入れと農産物の商品化
3—10 半栽培の文化
3—11 中部アフリカの農耕文化
第4章 アフリカ熱帯雨林とグローバリゼーション [北西功一]
4—1 はじめに
4—2 木材伐採と野生動物
4—3 カメルーンの森林法と行政
4—4 カメルーン東南部の自然保護,森林利用,地域住民
4—5 ピグミーと様々な援助活動
4—6 グローバルな世界とローカルな世界をつなぐ新しい動き
4—7 おわりに
第5章 交易の島から展望する「三つの生態学」 —東アフリカ,ムワニ世界の漁師たち— [飯田卓]
5—1 はじめに
5—2 ムワニ世界
5—3 三つの生態学を展開させる「糸口」
5—4 キリンバ島の地曳網漁
5—5 人との絆に頼る漁撈社会
第6章 植生からみる生態史 —イトゥリの森— [市川光雄]
6—1 森への誘い
6—2 二つの森林タイプ
6—3 生活史の比較
6—4 植生史の復元
6—5 野火の影響
6—6 Marantaceae forestの謎
6—7 地域の植生を考える視点
6—8 森に刻まれた歴史
第7章 熱帯雨林狩猟採集民が農耕民にならなかった理由 [佐藤弘明]
7—1 はじめに
7—2 「農耕民」インパクトを推し量る資料と方法
7—3 熱帯雨林における純粋な狩猟採集生活
7—4 定住村における日常生活
7—5 熱帯雨林狩猟採集民が農耕民と接触したとき何が起きたか?
第8章 バカ・ピグミーの生業の変容 —農耕化か? 多様化か?— [安岡宏和]
8—1 未熟な農耕?
8—2 調査地およびバカの生活の概要
8—3 栽培
8—4 採集
8—5 半栽培
8—6 バカによる植物性食物の利用形態
8—7 農耕民になるということ
第9章 森が生んだ言葉 —イトゥリのピグミーにおける動植物の名前と属性についての比較研究— [寺嶋秀明]
9—1 「ピグミー語」をめぐる問題
9—2 植物の名前とその利用
9—3 動物の名前と文化的属性
9—4 考察
Field essay 1 森の恋占い [四方篝]
第III部 森をひらく
第10章 バナナとカカオのおいしい関係 —カメルーン東南部の熱帯雨林における焼畑農耕とその現代的展開— [四方篝]
10—1 バナナがそだつ森
10—2 調査地域の概要
10—3 バナナを基幹とする焼畑
10—4 カカオ栽培の導入と農耕システムの変化
10—5 バナナとカカオのおいしい関係
第11章 森と人が生み出す生物多様性 —カメルーン熱帯雨林の焼畑・混作畑— [小松かおり]
11—1 農地における生物多様性
11—2 調査対象と調査方法
11—3 主食畑の作り方
11—4 農地のなかの植物群
11—5 農地の生物多様性
11—6 生物多様性を生みだす関係性
第12章 ヤシ酒と共に生きる —ギニア共和国東南部熱帯林地域におけるラフィアヤシ利用— [伊藤美穂]
12—1 ヤシ植物の重要性
12—2 ラフィアヤシの利用
12—3 ヤシの樹液採取
12—4 ヤシ酒の消費
12—5 ラフィアヤシの管理
12—6 ラフィアヤシ利用の持続性を支えらもの
第13章 サバンナ帯の人口稠密地域における資源利用の生態史 —セネガルのセレール社会の事例— [平井將公]
13—1 はじめに
13—2 集約的農業の展開とサース林の形成
13—3 サースの稀少化をめぐって
13—4 飼料採集の現場
13—5 サースの生態に対する理解と精緻な切枝技法
13—6 まとめと考察
Field essay 2 エコック行 [木村大治 ]
第IV部 森でとる
第14章 バカ・ピグミーの狩猟実践 —罠猟の普及とブッシュミート交易の拡大のなかで— [安岡宏和]
14—1 森林伐採・ブッシュミート交昜・国立公園
14—2 バカの狩猟
14—3 罠猟が普及した生態的要因
14—4 ブッシュミート交易の拡大
14—5 罠猟のサステイナビリティ
14—6 森棲みのレジティマシーの確立へ向けて
第15章 コンゴ民主共和国・ワンバにおけるタンパク質 獲得活動の変遷 [木村大治 安岡宏和 古市剛史]
15—1 熱帯雨林におけるタンパク質獲得
15—2 1970年代から2000年代にかけての社会・経済・生態学的変化
15—3 ワンバの生活調査
15—4 タンパク質獲得活動の変遷
15—5 今後何ができるか
15—6 地域の未来と定点観測の意味
第16章 バカ・ピグミーのゾウ狩猟 [林 耕次]
16—1 はじめに—ゾウを倒すバカ・ピグミー
16—2 ピグミーのゾウ狩猟に関する先行研究
16—3 バカの概況と調査方法
16—4 バカの狩猟活動
16—5 バカ文化のなかのゾウ
16—6 ゾウ狩猟の実際
16—7 おわりに
第17章 出稼ぎ漁民と地元漁民の共存 —カメルーン東南部における漁撈実践の比較から— [稲井啓之]
17—1 伐採活動と共に活性化する熱帯林の漁撈
17—2 調査地
17—3 ンゴコ川における漁撈活動
17—4 二つの漁撈ストラテジー
17—5 異質なグループはいかに共存をはかっていたか
Field essay 3 響く銃声と響かない声 [安田章人]
あとがき
引用文献