水と緑の計画学 新しい都市・地域の姿を求めて
価格:10,450円 (消費税:950円)
ISBN978-4-87698-956-0 C3051
奥付の初版発行年月:2010年09月
環境の質と災害耐性の関係に注目し,水と緑を補償する社会的公正を達成して人類の持続を図るべく編まれた,新しい土木計画学.自然と人の関わりの歴史に発想の基礎をおき,「最大不幸の最小化」を目指した第三世界での土木計画実践の上に立って,治水,治山の基礎から技術まで,さらには「水と緑に遊ぶ」文化の在り方までを壮大に論じる.
萩原 良巳(ハギハラ ヨシミ)
京都大学名誉教授
萩原 清子(ハギハラ キヨコ)
首都大学東京名誉教授・佛教大学社会学部教授 元京都大学客員教授工博
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
口絵
まえがき
1 水と緑の計画学序説
1.1 水と緑とは何だろう
1.1.1 水の出現
1.1.2 メソポタミアにおける水と緑の神話
1.1.3 日本人の水と緑にまつわる信仰
1.2 水と緑の遊びと感性
1.2.1 子供たちの遊び
1.2.2 雨・水にかかわる言葉
1.2.3 感性空間
1.3 水と緑の評価とマネジメント
1.3.1 格差社会をどうするか
1.3.2 環境の価値の経済的評価
1.3.3 リスクの経済的評価
1.3.4 環境と防災のガバナンス論
1.4 雨水計画の歴史と都市環境
1.4.1 雨水計画の歴史的変遷
1.4.2. 河川行政と下水道行政により河川が分割された問題点
1.4.3 雨水計画と水質管理
1.4.4 生活者参加型の都市環境と雨水計画の時代
1.5 水環境から地域・都市計画へのパラダイムシフト
1.5.1 都市域の水環境問題
1.5.2 環境インパクトアセスメント(EIA)を内部化した都市・地域計画
1.5.3 水資源環境から地域・都市計画へのパラダイムシフト
1.6 水資源問題
1.6.1 地球規模の水資源問題
1.6.2 日本の水資源問題とその社会リスク
1.7 水と緑の計画学のメタ論理
1.7.1 「自然」と「天然」
1.7.2 環境の認識〜GES環境
1.7.3 計画の輪廻
1.7.4 参加型適応的計画方法論
2 水と緑の生活リスクとガバナンス論
2.1 生活者の苦悩とガバナンス論
2.2 水と緑の生活リスク
2.2.1 バングラデシュにおける井戸水ヒ素汚染問題と衛生改善
2.2.2 屋久島における地域住民の「森」の価値:猿害と森林管理
2.3 森林ガバナンスの機能と今日的課題
2.3.1 森林ガバナンスの構造と機能
2.3.2 意味の構造
2.3.3 正統化の構造
2.3.4 支配の構造
2.4 21世紀社会の災害と環境のガバナンス
2.4.1 環境と防災のガバナンスの特性化
2.4.2 都市・地域を生命体システムとしてとらえた総合防災マネジメント方法論
2.4.3 生命体の知恵としての多様性
2.4.4 共助・自助のネットワークとしての地域防災力の向上
2.4.5 生命体システムの機能不全とみた環境問題
2.4.6 防災と環境のリスクとコンフリクトの特性化
3 水域環境論
3.1 水環境問題と最近の動き
3.2 河川環境の形成
3.2.1 河川環境の特徴
3.2.2 河川環境と流動変動
3.2.3 流動変動がハビタットや生物に及ぼす影響
3.2.4 出水が河川環境の形成に果たす役割
3.3 鴨川における河川水と地下水間の水・物質循環の解明
3.3.1 鴨川流域の特性・水文資料・現地観測
3.3.2 河川流量・水質観測結果と考察
3.3.3 地下水からの湧水に関する観測
3.3.4 流動および水質解析モデル
3.3.5 モデルの再現性の検証
3.3.6 汚濁物質挙動モデル
3.4 河川生態調査と環境評価
3.4.1 底生動物調査
3.4.2 魚類と鳥類の生態調査
3.4.3 ツバメと水鳥の生態調査
3.4.4 都市域河川における生物相の保全
3.5 中国の流域面源負荷流出モデルの同定方法と実際
3.5.1 負荷流出システムのモデル化
3.5.2 モデルパラメータの同定方法
3.5.3 中国浙江省の実河川への適用
3.6 閉鎖性水域での水質汚濁負荷の排出権取引の可能性
3.6.1 排出枠取引制度とその特徴
3.6.2 閉鎖性水域における水質汚濁負荷削減調整への排出枠取引の適用性について
3.6.3 水質汚濁負荷削減調整への排出枠取引の適用
4 都市域緑環境論
4.1 生活者にとって緑とは何か
4.2 居住環境における緑量評価
4.2.1 居住環境における緑視
4.2.2 都市居住環境における鉢植えの役割
4.2.3 緑量評価
4.3 水辺の景観要素にみる人工と自然の対峙
4.3.1 都市河川の自然要素とその評価
4.3.2 景観要素の測定
4.3.3 河川空間内外の自然
4.3.4 自然享受のための水辺計画の方向
4.4 有機性廃棄物の循環からみた緑地のあり方
4.4.1 有機性廃棄物堆肥利用と都市内緑地
4.4.2 堆肥の品質レベルと堆肥生産量
4.4.3 R緑地への土壌還元を前提とした家庭生ゴミ堆肥化システム
4.5 政策立案支援のための多基準分析による評価手法
4.5.1 多基準分析とその課題
4.5.2 政策立案支援のための評価手法の提案
4.5.3 家庭からの剪定枝葉回収システムにおける評価
5 水と緑の遊び空間論
5.1 水と緑の遊び空間と防災空間の双対性
5.2 江戸時代の水辺遊び空間の形成と構造
5.2.1 近世までの水辺空間の変遷
5.2.2 四条河原における遊興空間
5.2.3 近代以降の水辺空間の変遷
5.2.4 先斗町における遊興空間
5.3 子供たちの遊び文化のための水辺空間
5.3.1 子供のための水と緑の遊び環境の価値
5.3.2 子供たちの水辺と遊びのデザインクライテリア
5.4 都市域河川の水辺デザイン
5.4.1 水辺の機能と水辺デザイン仮説とその検証
5.4.2 共分散構造分析による水辺デザイン要素の抽出
5.4.3 撮影写真によるデザイン要素の具象化
5.4.4 デザイン仮説による水辺デザイン作成事例
5.5 公園緑地の双対(遊びと減災)機能の評価
5.5.1 公園緑地の階層性と生活者からみた整備
5.5.2 公園緑地空間配置の遊びと減災からみた評価
5.5.3 公園緑地の震災時避難行動から減災価値評価
6 水辺環境の感性評価論
6.1 水辺環境の感性評価システムの提案
6.2 季節の移ろいと空間特性による水辺環境評価
6.2.1 四季別水辺空間別の遊びと印象の特徴
6.2.2 印象とGES環境の関連
6.2.3 印象のプロフィール
6.2.4 因子分析による印象の解釈と地方語による表現
6.3 印象による上下流域の水辺GES環境評価
6.3.1 上下流域の地域特性
6.3.2 地域の個性
6.3.3 地域のGES環境評価モデル
6.3.4 印象のプロフィールと地域差
6.3.5 因子分析による地域差の解釈
6.3.6 釣り人のプロフィールと因子分析
6.4. 社会からみた生態(エコ)環境評価
6.4.1 生活者からみた魚類・鳥類評価
6.4.2 水辺住民の鳥類評価
6.4.3 鳥類が水辺住民の印象に与える影響
6.4.4 都市域雨水調節池の生態系創出に果たす役割
6.5 北京の水辺整備のコンセプトと実際
6.5.1 中国における水辺整備に関するコンセプト
6.5.2 北京市の水辺整備の実際とその印象評価
6.5.3 水辺整備事業の多基準評価
6.5.4 水辺整備におけるコンフリクトの実際
7 飲料水健康リスク論
7.1 日常時の飲料水リスク軽減の総合課題
7.2 残留塩素リスクの軽減論
7.2.1 塩素の効用と諸リスクに関する問題点
7.2.2 代替残留消毒剤としてのクロラミンの得失
7.2.3 国と地方の課題
7.3 バングラデシュ飲料水ヒ素汚染
7.3.1 飲料水ヒ素汚染災害の問題点の明確化
7.3.2 バングラデシュの農村の現地調査
7.3.3 安全な飲料水に対する欲求度のモデル化
7.3.4 水運びストレスの計量
7.3.5 ヒ素汚染災害軽減の水利施設整備計画
7.4 健康リスクを考慮した飲料水供給制度設計
7.4.1 厚生経済学の基本定理
7.4.2 リスク下での選好
7.4.3 リスク下での水供給
7.4.4 制度設計の条件
7.5 ライフラインとしての水道システムの施設更新と評価
7.5.1 更新による効果の定量化
7.5.2 水供給レベルの評価指標
7.5.3 最適投資水準と評価
8 渇水と震災の水供給リスク論
8.1 非日常時の水供給リスク軽減の総合課題
8.2 水道供給リスクマネジメントの情報システム
8.2.1 現行制度の情報システム
8.2.2 地震災害における情報システム
8.2.3 渇水災害における情報システム
8.2.4 被害軽減のための情報システム
8.2.5 地震災害軽減のための情報システム
8.3 渇水災害リスク
8.3.1 貯水池による水資源開発の利水安全度
8.3.2 日常時の節水意識と渇水時の節水行動
8.3.3 沖縄離島問題:沖縄県の島嶼における地域環境と水需要構造の変化
8.4 安定性と安全性による淀川水循環圏の震災リスク評価
8.4.1 水循環階層システムモデルとネットワークとしての表現
8.4.2 震災時を想定した大都市域水循環システムの総合的診断
8.4.3 水循環システムの安定性と安全性
8.4.4 下水処理水を利用した水辺創生による震災リスクの軽減
8.4.5 安定性と安全性からみた淀川水循環圏の地域震災リスク診断
9 水災害環境論
9.1 水災害軽減のための計画方法論の構築に向けて
9.2 計画降雨・計画高水量の決定問題のモデル化
9.2.1 計画降雨モデル
9.2.2 自然の脅威を極大とした治水規模決定問題のモデル化
9.2.3 エントロピー・モデルによる計画降雨波形決定モデル
9.2.4 積分方程式,多目標計画法,DPによる方法
9.3 生活者参加型治水計画論
9.3.1 調査票設計プロセス
9.3.2 生活者参加型河川改修代替案評価のための計画情報の抽出
9.3.3 生活者の意識による河川改修代替案の評価
9.4 都市水害とその予測
9.4.1 都市水害の特徴
9.4.2 都市流域に基づく都市水害モデル
9.4.3 京都市内域への適用
9.4.4 地下空間の浸水実験—京都市御池地下街を対象として
9.4.5 地下空間の浸水解析法の適用事例—大阪市梅田地下街を対象として
9.5 都市域の局所的浸水リスク
9.5.1 都市域浸水問題の解決の方向性
9.5.2 公的整備のための浸水対策重点地区の絞り込みに関する方法論
9.5.3 地表面・地下水路システム氾濫解析モデルとその検証
9.6 自律的避難のための水害リスク・コミュニケーション支援システムの開発
9.6.1 水害リスク・コミュニケーションの支援
9.6.2 水害リスク・コミュニケーション支援システムの構築
9.6.3 検証実験について
9.6.4 検証実験の結果と考察
10 水資源コンフリクト論
10.1 コンフリクトマネジメントとは何か
10.2 コンフリクト事例の特定化
10.2.1 水資源の囲い込みによるコンフリクト事例—国際河川を例として
10.2.2 開発と環境のコンフリクト事例と分類—日本の一級河川を例として
10.2.3 水資源コンフリクトマネジメントの定義
10.2.4 第3者機関の事例—仲裁者・調整者・寄贈者
10.3 水資源開発と環境保全の合意形成
10.3.1 合意形成と意思決定
10.3.2 水資源開発代替案の多元的評価モデルの構築
10.3.3 満足関数の吉野川可動堰問題への適用
10.3.4 効率と公正の評価
10.4 階層システム論的合意形成
10.4.1 階層システム論の概要と分解原理
10.4.2 河川水質保全のための中央政府と地方政府の対話型分権制度設計
10.4.3 実流域への適用事例
10.5 調整者によるコンフリクトマネジメント—ガンジス川を例にして
10.5.1 第3者機関が介入するガンジス川のGMCRの均衡解
10.5.2 スタッケルベルグ均衡解
10.5.3 進化ゲーム理論による均衡解
10.6 調整者と寄贈者によるコンフリクトマネジメント
10.6.1 コンフリクトの変化要因モデル
10.6.2 シナジェティクスによる意見分布モデル
10.6.3 相互評価モデルによるマネジメント
10.6.4 相互評価による長良川コンフリクト分析
11 水辺の歴史的変遷 859
11.1 水辺の歴史と履歴 859
11.2 神話に見る水 861
11.2.1 川の水はどこから来ているのか 861
11.2.2 メソポタミアの神話 862
11.2.3 エジプトの神話 863
11.2.4 インドの神話 865
11.2.5 中国の神話 867
11.3 中国都城の水辺ネットワークの歴史的変遷
11.3.1 中国の都市計画思想と都市構造
11.3.2 中国の水資源開発と水辺ネットワーク
11.3.3 長安城と北京城の歴史的変遷
11.3.4 北京市を含む海河流域の水資源危機
11.3.5 現代北京の水資源問題
11.4 京都の水辺の歴史的変遷
11.4.1 平安京の水辺構築とその変遷
11.4.2 室町時代の水辺の変遷
11.4.3 豊臣秀吉の都市計画
11.4.4 角倉了以と保津峡・高瀬川の開削
11.4.5 幕末の西高瀬川の開削と琵琶湖第1疎水事業
11.4.6 都市の近代化と水辺の喪失,そして現代の水辺
11.4.7 鴨川流域の現代的課題
11.4.8 鴨川上流域の文化と苦悩
数学的補遺
補遺A クラメールの関連係数
補遺B 因子分析
1 因子分析とは
2 因子分析モデル
3 因子負荷量の推定
4 因子軸の回転(規準バリマックス法)
5 因子得点の推定
補遺C ウィシャート分布の導出過程
1 多変量正規分布からの独立標本
2 ウィシャート分布の定義
3 平均ベクトルと分散共分散行列の独立性
4 多変量回帰分析
5 多変量正規分布からの標本における条件付分布とウィシャート分布
6 ウィシャート行列の三角分解
7 ウィシャート分布の密度関数
あとがき
索 引
著者(担当)一覧