大学出版部協会

 

「社会主義」経験の歴史化のために東ドイツ農村の社会史

東ドイツ農村の社会史 「社会主義」経験の歴史化のために

菊判 660ページ 上製
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-87698-983-6 C3022
奥付の初版発行年月:2011年02月 / 発売日:2011年02月中旬

内容紹介

20世紀世界を大きく規定した「社会主義」とは何だったのか——冷戦の終結,東西ドイツ統一から20年を経て,今まさにその歴史学的位置が問われている。第二次大戦後東ドイツでの20年間の土地改革と集団化をミクロ史的に分析,当時の人々が歩んだ経験を再考,今日の農業社会形成を歴史的に跡づける。日本の戦後歴史学に新たな光を当てる。

著者プロフィール

足立 芳宏(アダチ ヨシヒロ)

京都大学大学院農学研究科准教授
1958年 岐阜県可児市生まれ
1982年 京都大学農学部農林経済学科卒業
1990年 京都大学大学院農学研究科博士後期課程満期退学
1996年 京都大学博士(農学)取得
1996年 京都大学大学院農学研究科助教授(2007年より准教授)
2003年 ロストク大学客員研究員
専攻 近現代ドイツ農業史
主著 『近代ドイツの農村社会と農業労働者―〈土着〉と〈他所者〉のあいだ―』(京都大学学術出版会)1997年12月,(1999年度日本農業経済学会学術賞受賞)
E-mail yadachi@kais.kyoto-u.ac.jp

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

巻頭地図
目  次
略語一覧

序章 本書の課題と視角
   ―戦後東ドイツ農村における「社会主義」経験の歴史化のために―
一 東エルベ農業史と戦後東ドイツの土地改革・集団化
二 冷戦期における研究動向
  1 東ドイツ
  2 西ドイツ
  3 日  本
三 パラダイム転換―ポスト冷戦期の新しい研究動向―
  1 概  況
  2 「社会史・日常史」研究
  3 A・バウアーケンパー『共産主義独裁下の農村社会―強制的集団化と伝統―』(二〇〇二年)
四 本書の課題と視角

第一章 土地改革期の新農民問題
    ―難民・経営資本・村落 一九四五年~一九四九年―
はじめに
  1 ソ連軍進駐と土地改革の実施
  2 東ドイツ土地改革の特徴と本章の課題
第一節 難民問題とソ連軍農場占領
  1 難民問題と村落形態
  2 ソ連軍の農場占領問題
第二節 農業経営資本の利用形態と労働のヘゲモニー
  1 家畜
    馬/牛/「家畜調整Viehausgleich」
  2 トラクター
第三節 グーツ屋敷の解体と「新農民家屋建設プログラム」
第四節 新農民問題―新農民の行動と村落の統合問題―
  1 経営放棄
  2 乱伐と「サボタージュ」
  3 新農民村落の村政
おわりに

第二章 非農民の農村難民たち
    ―旧農民村落における難民問題 一九四五年~一九四九年―
はじめに
第一節 戦後ドイツ人難民の発生と流入の地域性
第二節 農村難民の就業状態―州レベルの統計分析による概観―
  1 農業就業について
  2 「非就業者」について
第三節 村に収容される難民たち―一九四七年シュヴェリン郡難民調査から―
  1 農村難民の就業実態―村落レベルのあり方―
    就業の実態/「非就業者」―下層に沈む女性難民たち―
  2 農村難民の「住」の実態
第四節 新農民村落における難民たち―住宅問題を中心に―
第五節 対立と統合のあいだ―旧農民村落の難民問題―
  1 土着農民と難民の対立のあり方
  2 国家と村落―国家の方向付け―
    住宅問題/農業労働者の「自給者規定」問題
おわりに―旧農民村落における難民問題の「解決」の行方―

第三章 新旧農民の「共和国逃亡」
    ―大農弾圧と経営放棄 一九五二年~一九五五年―
はじめに
  1 一九四九年。農業諸組織の「国家化」と「反大農政策」の開始
  2 一九五二年へ。「共和国逃亡」の複合性と本章の課題
第一節 「耕作放棄地」および「荒廃経営」の関連立法
第二節 旧農民の「荒廃経営」接収と「共和国逃亡」―一九五二・五三年―
  1 村落単位での旧農民「共和国逃亡」の実態
  2 「荒廃経営法」による接収の実態
    「経営接収理由」の分析/「荒廃経営」接収後の経営管理の実態/「住」をめぐる問題
第三節 新農民の「共和国逃亡」と「経営返上」―一九五五年―
  1 新農民の「共和国逃亡」の概観
  2 「逃亡理由」の分析
  3 「返上申請理由」の分析
  4 新農民経営放棄の処理の仕方―村落間のばらつきと「解決」の多様性―
おわりに

第四章 農業集団化のミクロヒストリー(1)
    ―新農民村落 一九四五年~一九六一年―
はじめに
  1 東ドイツ農業集団化の三つの局面
  2 本章の課題
第一節 バート・ドベラン郡集団化の全体動向
  1 郡全体の動向
  2 村落単位でみる集団化の「類型化」
第二節 ケーグスドルフ村の集団化
    ―有力難民主導LPGの同調化戦略と没落者たち―
  1 土地改革から農業集団化へ―経過の概略―
  2 LPGと村政の中核的な担い手たち
  3 難民層の「分解」過程―旧グーツ館に暮らした人々―
    没落する新農民の難民家族たち/単身婦人たち/難民の鍛冶親方
  4 「命令二〇九号」とLPG化―村の物的資源をめぐって―
    「畜舎」をめぐる問題/「命令二〇九号」の受益者とLPG化 
第三節 ディートリヒスハーゲン村の集団化―村内少数派LPGの挫折―
  1 集団化過程の概況
  2 LPG『進歩』とその挫折―搾乳夫の夢と村落の分裂―
  3 全面的集団化過程―「相互不信」の集団化受容―
おわりに

第五章 農業集団化のミクロヒストリー(2)
    ―旧農民村落 一九四五年~一九六一年―
はじめに
第一節 ホーエンフェルデ村の集団化―大農層崩壊と残存家族の同調化―
  1 村と集団化の概況
  2 土地改革から初期集団化まで
    敗戦と土地改革/難民の新農民とLPGの設立/ラングホーフとポゼールの問題/ホーエンフェルデ村の「六月事件」
  3 「村落農業経営ÖLB」の「農業生産協同組合LPG」への吸収
    大農層の崩壊/ÖLBの実態/LPGによるÖLB統合 
  4 村政と村議会の変化
    村評議会・村会議員の構成/村議会における党アクティブの登場/③村の個人農の組織化
  5 新組合長ヤーチュの登場とLPGによる村内物的資源の再編
  6 全面的集団化へ―同調する大農層と集落間対立―
    ホーエンフェルデ村残存大農層の同調/イヴェンドルフ村とノイ・ホーエンフェルデ地区の集団化
第二節 パーケンティン村の集団化―抵抗型大農村落と農業労働者問題―
  1 村と集団化の概況
  2 小規模LPGでありつづけたこと
  3 農業労働者問題とLPG化の関わり
    住宅問題/搾乳夫クローツの問題
  4 全面的集団化過程の特徴
    集団化工作と農民の反集団化/牧師ゲルラッハ/統合LPGへ
おわりに

第六章 全面的集団化と「勤労農民」たち
    ―個人農村落の集団化対応 一九五七/五八年~一九六一年―
はじめに―本章の課題と郡の空間構造―
第一節 一九五七年秋以降のバート・ドベラン郡の集団化の概況
第二節 優良新農民村落の集団化
  1 ラコー村の集団化―優良難民新農民主導による全村集団化―
  2 優良新農民の形成とÖLB問題
    新農民富裕化の実態/ÖLB問題との関わり
  3 優良新農民の政治的・社会的性格―党と難民と教会―
  4 反発から受容へ
第三節 劣悪な新農民村落の集団化―「特異型」を中心に―
  1 「解散・縮小型」の新農民村落の集団化
  2 ブッシュミューレン村
    ―難民ネットワークによるLPG化とその挫折―
  3 ローゼンハーゲン=ガーズハーゲン村―郡内困窮地域の「分裂的」集団化―
おわりに

第七章 機械・トラクター・ステーション
    ―農業機械化と農村カードル形成 一九四九年~一九六一年―
はじめに
第一節 MAS設立からMTS再編へ
    ―制度と組織の概略―
  1 MASの設立―農業諸組織の「国家化」の一環として―
  2 MTSの資本装備と組織構造
第二節 MTSの党カードルたち―新支配層の政治世界―
  1 カードルの党内権力闘争―MTS内の「党生活・党政治」―
  2 「処分」される人々―スターリニズムの実践と反発―
第三節 農業技師とトラクター運転手―大規模機械化農業の担い手たち―
  1 農業技師
  2 トラクター運転手など
第四節 MTSと村落・LPG―農業機械化の実態―
  1 村の農業機械化のありよう
    耕起作業/収穫・脱穀作業/根菜類―ジャガイモを中心に―
  2 MTSの労働組織問題―二交代制と「作業班支所」―
    二交代制をめぐって/「作業班支所」の設立と実態―MTSの分割化―
第五節 MTS政治課指導員と全面的集団化
  1 政治課指導員による村落監視と介入
    MTS政治課指導員から管区郡党指導部指導員(管区指導員)へ/活動実態
  2 MTS管区指導員たちと農業集団化工作活動
  3 MTSのLPGへの吸収過程
おわりに

終章―二〇世紀ドイツ農村史における土地改革と農業集団化―
一 「集団化の多様性」が語るもの―二項対立図式を超えて―
二 難民入植政策としての土地改革・集団化―「入植型社会主義」―
三 近代ドイツ農業労働者論―戦時から戦後へ―
四 農村の物的資源の社会的再編―大規模農業の「社会主義的」形成―

書評1 谷口信和著『二十世紀社会主義農業の教訓―二十一世紀日本農業へのメッセージ―』(農山漁村文化協会)一九九九年発行
(『農林業問題研究』第一三八号、二〇〇〇年六月、掲載) 
書評2 奥田央編『20世紀ロシア農民史』(社会評論社)二〇〇六年発行
(『ロシア・ユーラシア経済―研究と資料―』第九〇九号、二〇〇八年四月、掲載)

史料・参考文献一覧
初出一覧
あとがき
索  引
英文要約


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。