専修大学社会科学研究所 社会科学研究叢書17
ワークフェアの日本的展開 雇用の不安定化と就労・自立支援の課題
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-88125-296-3 C3333
奥付の初版発行年月:2015年03月 / 発売日:2015年03月下旬
20世紀末以来、先進各国において総じて本格化してきた新自由主義的改革の下で、生存権原理に基づく社会保障を基軸に据えてきた社会政策の領域においても、その重心を「福祉」(ウェルフェア)から「就労」(ワーク)に移す流れ、すなわち「ワークフェア」の動向が加速しつつある。
本書は、この「ワークフェア」の分析を軸としながら、地方自治体による就労支援と生活支援プログラム、さらには就労機会創出の試みまで視野に収めた、日本における、「就労」を基本とした社会経済政策の、現状と展望をめぐる共同研究の成果である。
宮嵜 晃臣(ミヤザキ テルオミ)
専修大学経済学部教授
専門:日本経済論
著書・論文:
「IT/グローバル資本主義下の長野県経済再考――ITバブル崩壊後の長野県経済」『専修大学社会科学研究所月報』No.615 2014年
「飯田市経済の現状と地域経済活性化政策」『専修大学社会科学研究所月報』No.611・612 2014年
「日本経済の現状と雇用問題」町田俊彦編著『雇用と生活の転換――日本社会の構造変化を踏まえて』第2章 専修大学出版局 2014年
「開発の諸相」、「日本の産業構造と日本型経営・日本的生産システム」SGCIME編『増補新版 現代経済の解読――グローバル資本主義と日本経済』第4章、第6章 御茶の水書房 2013年
兵頭 淳史(ヒョウドウ アツシ)
専修大学経済学部教授
専門:社会政策、労働問題
著書・論文:
『雇用と生活の転換――日本社会の構造変化を踏まえて』共著 専修大学出版局 2014年
『日本経済 その構造変化をとらえる』 共著 専修大学出版局 2012年
『新自由主義批判の再構築』共著 法律文化社 2010年
「アベノミクス賃金政策と労使関係」『生活経済政策』209号 2014年
「産業別労働組合地域支部による外国人労働者の組織化」『専修大学社会科学研究所月報』No.597 2013年
「現代アメリカ労働運動の断面」『労働総研クォータリー』89号 2013年
高橋 祐吉(タカハシ ユウキチ)
専修大学経済学部教授
専門:労働経済論
著書・論文:
『企業社会と労働組合』1989年 労働科学研究所出版部
『企業社会と労働者』1990年 労働科学研究所出版部
『労働者のライフサイクルと企業社会』1994年 労働科学研究所出版部
『現代日本の労働問題』1999年 労働科学研究所出版部
『現代日本における労働世界の構図』旬報社 2013年 など
町田 俊彦(マチダ トシヒコ)
専修大学経済学部教授
専門:財政学、地方財政論
著書・論文:
「ドイツにおける財政赤字と財政再建」『世界の財政再建』敬文堂 1998年
『「平成大合併」の財政学』編著 公人社 2006年
「〈小さな〉政府は行き詰った」『世界』2008年4月号
『歳入からみる自治体の姿』イマジン出版 2010年
『歳出からみる自治体の姿』イマジン出版 2013年
『雇用と生活の転換』編著 専修大学出版局 2014年
鈴木 奈穂美(スズキ ナオミ)
専修大学経済学部准教授
専門:生活経済論、生活福祉論
著書・論文:
「第4章 日本のワーク・ライフ・バランスの実情――2007年以降の動向」町田俊彦編『雇用と生活の転換』共著 専修大学出版局 2014年
「介護者のライフスタイル」吉田あけみ編『ライフスタイルからみたキャリアデザイン』共著 ミネルヴァ書房 2014年
「社会的孤立への取組から,地域生活公共を考える」住沢博紀編著『組合 その力を地域社会の資源へ――生活公共の視点から労働組合・共済・労金・生協はなにができるのか』イマジン出版 2013年 など
福島 利夫(フクシマ トシオ)
専修大学経済学部教授
専門:経済統計学
著書・論文:
『労働統計の国際比較』共編著 梓出版社 1993年
『現代の労働・生活と統計』共編著 北海道大学図書刊行会 2000年
『現代の社会と統計』共編著 産業統計研究社 2006年
『スウェーデンの女性と男性』訳書 スウェーデン中央統計局著 ノルディック出版 2008年
『格差社会の統計分析』共編著 北海道大学出版会 2009年
『男女共同参画統計データブック2012』共著 ぎょうせい 2012年
目次
はじめに
第1章
雇用不安定化の諸要因とワークフェアのアポリア・アンチノミー
宮嵜 晃臣
1.はじめに
2.雇用不安定化の要因
3.雇用不安定化の歴史的位相
―福祉国家型資本主義からグローバル資本主義へ
4.ワークフェアとそのアポリア・アンチノミー
第2章
雇用労働という困難 ――社会政策史のなかの就労政策――
兵頭 淳史
1.はじめに
2.異様な人々,狂気の政策――近代資本主義の成立と労働政策
3.「全員就労」と「完全雇用」
――福祉国家の興亡と転変する雇用労働
4.「市場対国家」図式を超えて――ワークフェア克服への視座
5.むすびにかえて
第3章
若者の現在と就労支援の課題
――「働くこと」を再考するために――
高橋 祐吉
1.就労が困難な若者たちの現状
2.就労支援はどのように展開されているのか
3.就労支援から「もうひとつ」の「ほどよい」働き方へ
第4章
分権改革と自治体の就労支援策
――無料職業紹介事業と雇用創出基金事業――
町田 俊彦
1.はじめに
2.自治体就労支援策の積極化の背景
3.自治体の無料紹介事業
4.雇用創出基金事業
5.大阪府豊中市における無料職業紹介と雇用創出基金事業
第5章
補完性原理に基づく「四助論」と「自立」概念
鈴木奈穂美
1.はじめに
2.日本の社会保障制度にみる「補完性原理」に基づいた「四助論」
3.4つの「助」概念(自助・互助・共助・公助)の定義
4.補完性原理に基づく「四助論」の限界
5.「自立」「自立支援」とは何か
6.おわりに
第6章
貧困・不安定就業と生活保障システム
福島 利夫
1.はじめに
2.格差と貧困の象徴
3.人口と家族の変動
4.国民生活の格差と貧困
5.失業・不安定就業の全体像
6.これからの生活保障システムを展望して
あとがき