行基論 大乗仏教自覚史の試み
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-88125-302-1 C3021
奥付の初版発行年月:2016年02月 / 発売日:2016年03月上旬
奈良時代の高僧行基には膨大な先行研究があるが、行基とその弟子の思想に焦点をあて、大乗仏教自覚史の萌芽期をあきらかにする。
角田 洋子(ツノダ ヨウコ)
1942年 東京都新宿区に生まれる。
1964年 お茶の水女子大学文教育学部国文科卒業。
2007年 専修大学大学院文学研究科歴史学専攻修士課程入学。
2014年 専修大学大学院文学研究科歴史学専攻博士後期課程修了。
学位取得 博士(歴史学)
目次
序 章 古代仏教史における本論考の課題
はじめに
僧尼等の主体的な教義の自覚/ 行基仏教の見直し/行基研究の新たな課題
第一章 研究史
はじめに
第一節 行基仏教の思想的背景
瑜伽唯識論と行基/三階教と行基/「『瑜伽師地論』と行基」の再検証
第二節 行基集団とその指導層
行基を支持した豪族や下級官人/行基と技術者集団/弟子僧尼の存在
おわりに
第二章 『瑜伽師地論』と行基集団
はじめに
第一節 玄奘のインド求法 ─『大乗瑜伽師地論』をもとめて―
玄奘と『瑜伽論』/玄奘と大乗思想
第二節 『瑜伽師地論』の日本伝来
道昭の玄奘仏教継承/道昭と『大乗瑜伽論』
第三節 行基と『瑜伽論』
行基の『瑜伽論』学修/行基弟子と『瑜伽論』/霊異神験と禅定
第四節 行基知識と『瑜伽論』
『瑜伽論』巻二十六の写経
おわりに
第三章 初期道場と行基集団
はじめに
第一節 伝承の中の「道場」
桜井道場への疑問/華厳為本体制と「伽藍縁起」/道慈と熊凝道場/
仏舎・精舎・道場
第二節 「大宝僧尼令」における「道場」
寺院に拘束される僧尼/衆生教化の場としての道場の登場/
道昭の禅院での活動/道場活動を禁ずる僧尼令の成立
第三節 『日本霊異記』の道場法師
道場法師説話/飛鳥川の開発と道場法師
第四節 道場・弥気山室堂
道場・慈氏禅定堂/天平期の慈氏信仰/大般若経と弥気寺知識
おわりに
第四章 行基集団と四十九院の運営
はじめに
第一節 養老元年詔再読
養老元年の行基弟子/小僧行基の効果/朋党の実態/養老期の僧尼政策/
官僧尼を仲間とした初期の活動
第二節 官僧尼の覚醒
古代僧尼の立場/日本の古代僧尼の特殊性/道昭の覚醒/
道昭の感化を受けた官僧達
第三節 大須恵院の建立
行基等の初期活動/須恵器生産と大須恵院/大須恵院を支えた氏族/
大須恵院建立と『瑜伽論』
第四節 土塔と大野寺
平城宮からの撤退/土塔発掘の意義/独創的舎利塔と「菩薩地」/
土塔建立に参加した人々/土塔の手本/大乗教義による氏族結集
第五節 菅原寺
四十九院を統轄した菅原寺/菅原寺から喜光寺へ
おわりに
第五章 「大僧正記」(「師徒各位注録」)について
はじめに
第一節 研究史と写本の検討
四写本の「大僧正記」/四写本の異同と校定
第二節 写本の伝来とその系譜
写本の伝来/竹林寺の創建と『竹林寺縁起』/
「大僧正舎利瓶記」に附属する「大僧正記」
第三節 「大僧正記」という史料
「大僧正記」実は「使徒各位注録」/「大僧正記」と大須恵院/
第四節 「師徒各位注録」のもつ意味
釈尊への帰依/僧位をもつ弟子等/組織的指導体制/豪族出身僧尼の役割
おわりに
第六章 天平十五年正月の法会と行基
はじめに
第一節 天平十五年正月の法会
未曽有の国家法会
第二節 大乗法会の登場
大乗仏教の興隆とその特徴/大乗金光明経の転読/四十九人の大徳たちと行基
第三節 大乗法会登場の仏教史的背景
国家法会の主旨/国家による大乗思想の受容/聖武天皇と大乗仏教/
行基容認の仏教史的背景
おわりに
終 章 まとめと課題
第一節 まとめ
第二節 今後の課題
あとがき
索 引