主要国4中央銀行 金融政策の比較分析 歴史・制度・将来展望
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-88125-364-9 C3033
奥付の初版発行年月:2022年02月 / 発売日:2022年03月上旬
4中央銀行によるマネタリー政策とプルーデンス政策においてみられる相違点を、中央銀行の成り立ち、組織の仕組み、各国・地域が置かれた金融・経済環境の違いなどの面から考察する。新型コロナ危機対応を踏まえた政策についてもそれぞれに整理して将来の展望を行う。
朝倉 健男(アサクラ タケオ)
1980年 愛知県豊橋市に生まれる
2021年 専修大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了
博士(経済学)
2021年 専修大学経済学部助教
著作・論文
『最初の経済学 第四版』[共著](同文館出版、2016年)、「ゼロ金利制約下での金融政策と景気回復」(『専修総合科学研究第17号』、2009年)など。
目次
第1章 非伝統的金融政策の分類と4大中央銀行におけるその導入
1.1 伝統的金融政策と非伝統的金融政策
1.1.1 「短期金利の低下」を経由しない非伝統的金融政策のトランスミッション経路
1.2 既存の非伝統的金融政策の分類の整理
1.2.1 植田(2012)による非伝統的金融政策の分類
1.2.2 BIS(2016)による非伝統的金融政策の分類
1.2.3 田中(2018)による非伝統的金融政策の分類
1.2.4 中曽(2017)による非伝統的金融政策の分類
1.3 筆者による非伝統的金融政策の新分類
1.3.1 プルーデンス政策と非伝統的マネタリー政策
1.3.2 3類型ある政策金利のフォワード・ガイダンス
1.3.3 イールドカーブ・コントロール政策の追加
1.3.4 相対型貸出資金供給にも注目
1.4 筆者の分類からみる非伝統的金融政策の実際
1.4.1 FRBの非伝統的金融政策
1.4.2 ECBの非伝統的金融政策
1.4.3 BOEの非伝統的金融政策
1.4.4 最も長い歴史を持つ日銀の非伝統的金融政策
1.5 4大中央銀行による非伝統的金融政策の相違点
1.5.1 4大中央銀行は何を行って何を行わなかったのか
1.5.2 4大中央銀行の非伝統的金融政策の比較
第2章 中央銀行によるプルーデンス政策
2.1 プルーデンス政策の一翼担う中央銀行による金融システムの安定化策
2.1.1 プルーデンス政策における事前的措置と事後的措置
2.1.2 「最後の貸し手」機能とバジョット・ルール
2.1.3 「最後のマーケット・メイカー 」機能の創設
2.1.4 「最後の貸し手」機能と「最後のマーケット・メイカー」機能を巡るバーナンキの整理
2.2 「最後の貸し手」機能の歴史と世界金融危機における発動
2.2.1 FRBの連銀貸出の変遷と世界金融危機
2.2.2 ユーロ圏における「最後の貸し手」機能としてのELA
2.2.3 バジョットの母国BOEの最後の貸し手機能
2.2.4 日銀の日銀特融の特異性
2.2.5 4つの視点でみる4大中央銀行の「最後の貸し手」機能の比較
2.3 「最後のマーケット・メイカー」機能の発動
2.3.1 世界金融危機に対応したFRBによる最後のマーケット・メイカー機能
2.3.2 欧州債務危機に対応した ECBによる最後のマーケット・メイカー機能
2.3.3 BOEによる銀行との担保交換
2.3.4 日銀による「最後のマーケット・メイカー」機能
2.3.5 4大中央銀行の「最後のマーケット・メイカー」機能の比較
第3章 中央銀行の歴史と発展
3.1 4大中央銀行の設立
3.1.1 中央銀行設立の経緯と成り立ち
3.1.2 金融システムの安定化のために設立されたFRB
3.1.3 単一通貨ユーロを担うECB
3.1.4 4大中央銀行のなかでは最も古い歴史を持つBOE
3.1.5 政府として銀行券の一元的な管理が出発だった日銀
3.1.6 4大中央銀行の設置の目的の違い、成り立ちを比較する
3.2 マネタリー政策の登場と短期金利誘導型金融政策への収斂過程
3.2.1 マネタリー政策はいつ中央銀行に備わったのか
3.2.2 トリレンマ理論とマネタリー政策
3.2.3 トリレンマ理論から考える、金本位制、ブレトン=ウッズ体制、変動相場制
3.3 4大中央銀行のマネタリー政策の変遷
3.3.1 FRBのマネタリー政策の変遷
3.3.2 新しい中央銀行であるECBによるマネタリー政策
3.3.3 BOEの政策の変遷
3.3.4 日銀公定歩合操作からコール・レート操作まで
3.3.5 4大中央銀行における短期金利誘導型金融政策への収斂過程
第4章 4大中央銀行の現在における制度的側面
4.1 金融政策の決定方法
4.1.1 FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)
4.1.2 ECBの政策理事会
4.1.3 BOEの金融政策委員会(MPC)
4.1.4 日銀の金融政策決定会合
4.1.5 4大中央銀行の金融政策決定の比較
4.2 4大中央銀行における短期金利誘導型金融政策のしくみ
4.2.1 FRBのFFレート誘導型金融政策のしくみ
4.2.2 ECBによる短期金利誘導型金融政策のしくみ
4.2.3 BOEによる短期金利誘導型金融政策のしくみ
4.2.4 日銀によるコール・レート操作のしくみ
4.2.5 4大中央銀行における短期金利誘導型金融政策のしくみの比較
4.3 4大中央銀行が提供する決済システム
4.3.1 FRBのFed wire
4.3.2 ECBのTARGET
4.3.3 BOEのCHAPS
4.3.4 日銀の日銀ネット
4.3.5 4大中央銀行決済サービスの比較
第5章 4大中央銀行が置かれた各国、各地域固有の金融・経済環境、及びそれとの関わり方
5.1 分権主義と「二元主義」のなかに置かれたFRB
5.1.1 銀行制度の「二元主義」
5.1.2 分権的で複雑な監督・規制体制
5.1.3 分権主義に起因するウォール街アレルギー
5.1.4 最先端の金融技術を体現した金融市場と金融機関構造
5.2 19の政府の中央銀行としてのECB
5.2.1 財政政策とのすり合わせができないECBのマネタリー政策
5.2.2 景気循環の異なる19ヵ国に単一の金融政策で対応することの困難さ
5.2.3 曖昧なプルーデンス政策の権限
5.2.4 19ヵ国間でみられる経済基礎条件の格差と財政統合問題
5.3 大きく変遷する金融環境下のBOE
5.3.1 シティの紳士協定
5.3.2 揺れ動いたBOEのマンデート
5.3.3 貨幣的要因が重んじられてきたイギリスの金融政策論議
5.3.4 国債市場の創設に寄与したBOEと政府との蜜月関係
5.4 政府に従属的な日銀
5.4.1 新日銀法の下でも制限された独立性
5.4.2 低インフレ、デフレの経験と強力な金融緩和を求める世論の形成
5.4.3 現金社会が日銀にもたらす事務的コスト
5.5 4大中央銀行を取り巻く金融・経済環境の独自性
第6章 4大中央銀行の金融政策の相違点と、歴史、制度、金融・経済環境との関係
6.1 非伝統的金融政策を巡る4大中央銀行間の相違点とその要因
6.1.1 大量資産購入政策におけるバリエーション
6.1.2 マイナス金利政策
6.1.3 イールドカーブ・コントロール政策
6.1.4 相対型貸出資金供給
6.1.5 独立的インフレ期待の形成
6.2 「最後の貸し手」機能を巡る4大中央銀行間の相違点とその要因
6.2.1 「債務超過先への貸出禁止」の原則
6.2.2 ノンバンクへの「最後の貸し手」機能の発揮
6.2.3 政府の債務保証の有無
6.2.4 スティグマ問題
6.3 「最後のマーケット・メイカー」を巡る4大中央銀行間の相違点とその要因
6.3.1 信用市場における借り手と貸し手に対する資金供給
6.3.2 期間の長い債券の購入
第7章 金融政策の将来展望-新型コロナ危機への政策対応を踏まえて
7.1 新型コロナ危機に対応する中央銀行の政策
7.1.1 FRBの新型コロナ対策
7.1.2 ECBの新型コロナ対策
7.1.3 BOEの新型コロナ対策
7.1.4 日銀の新型コロナ対策
7.1.5 新型コロナ対策にみられた4大中央銀行の共通点と相違点
7.2 4大中央銀行の今後の政策展望 マネタリー政策とプルーデンス政策の両面から
7.2.1 FRBの今後の金融政策展望
7.2.2 ECBの今後の金融政策展望
7.2.3 BOEの今後の金融政策展望
7.2.4 日銀の今後の金融政策展望
7.2.5 今後の金融政策展望に関する整理
要約的総括
参考文献