T・S・エリオットの思索の断面 F・H・ブラッドリーとニコラウス・クザーヌス
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-907192-19-8 C3097
奥付の初版発行年月:2014年10月
本書は1948年ノーベル文学賞を受賞したT・S・エリオットの文学と哲学の関係を論じたものである。彼はハーヴァード大学院時代、19世紀後半の英国の哲学者F・H・ブラッドリーについて博士論文を書いている。本書の著者は既にブラッドリーの「懐疑的精神」とエリオットの「中道精神」(ヴィア・メディア)を関係づけた『T・S・エリオットのヴィア・メディア―改宗の詩学―』(弘前大学出版会、2005)を出版したことがある。本書ではこの著書を基軸にし、エリオットの「思索の断面」に流れている「全体」の概念を博士論文に立ち帰って、彼の文学、そして「感性の統合」が見られるデカルト以前の中世に見出だし、さらには「対立物の一致」で有名な15世紀のドイツの神秘主義者ニコラウス・クザーヌスまで遡った。エリオットのこの「思索の断面」を辿ることによって、彼が如何にしてダンテ的ヴィジョンの「薔薇園」へ帰還したかという彼の旅路の一端が垣間見られるであろう。
目次
序章
第一部
第一章 「視点」
一 「事実の感覚」
二 「直接経験」
三 「単子」と「有限的中心」
第二章 唯我論
一 プルーフロックの原初的意識
二 作品と電気の狭間で
三 自己の幽閉、そして脱自へ
第三章 形而上詩
一 機知と想像力
二 形而上詩の背景
三 「感性の統合」と「分裂」
第二部
第四章 神秘主義
一 忘我の一瞬
二 「知的な信仰者」
三 偽ディオニシウス・アレオパギタ
第五章 対立物の一致
一 相反するイメージと円環
二 「静止点」と「受肉」、そして「言葉」
三 ニコラウス・クザーヌス
第六章 薔薇園への帰還
一 幼少期の経験
二 グノーシス主義
三 薔薇園
あとがき
参照・引用文献目録
索引